レンディング利息は取得時の時価が全額所得となり、利子所得ではなく事業所得または雑所得に区分される。銀行預金の利子とは税務上の取扱いがまったく異なる。
- 理由① レンディング利息には購入原価が存在しないため、受取時の時価がそのまま所得金額となる。ステーキング報酬・マイニング報酬と同じ「原価なし受取=受取時価が全額所得」の計算構造であり、総合課税(最大55%)が適用される。銀行預金の利子所得(源泉分離20%)とは税率が大きく異なる。
- 理由② 貸付けの利用料(利息)は消費税の課税対象であり、暗号資産の譲渡(非課税)とは取扱いが異なる。課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税の課税事業者となるため、レンディング利息が大きい場合は消費税の申告義務にも注意が必要。
- 条件 法人が貸し付けた暗号資産は「自己の計算において有する」に該当し、期末時価評価の対象となる。貸付中で手元にない暗号資産にも含み益課税が発生するため、レンディングの利回りと期末時価評価の税負担を合わせた総合判断が必要。
所得税法第36条第1項 / 国税庁FAQ 3-1-7・6-2
この記事でわかること
- レンディング利息の課税タイミングと所得計算の仕組み
- 利子所得にならない理由と正しい所得区分
- 法人の貸付時処理(時価主義と取得原価主義の2パターン)
- 貸し付けた暗号資産の期末時価評価
- レンディング利用料の消費税と令和8年度改正の影響
レンディング利息の課税関係
【結論】レンディングにより暗号資産の利息を受け取った場合、取得した暗号資産の取得時点の時価が収入金額(益金)となる。対価として何かを譲渡しているわけではないため、譲渡原価は0円である(国税庁FAQ 1-7、所得税法第36条第1項)。
レンディング利息の課税構造は、ステーキング報酬やマイニング報酬と同じである。利息として暗号資産を受け取った時点で、その時価が収入金額に算入される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収入金額 | 取得した暗号資産の取得時点の時価 |
| 譲渡原価 | 0円(対価の支払いがないため) |
| 所得金額 | 収入金額 − 0円 = 収入金額と同額 |
| 必要経費 | レンディングに要した費用(手数料・ガス代等)を控除可能 |
レンディング利息は「利子所得」ではない
暗号資産のレンディング利息は、名称に「利息」を含むが、所得税法上の利子所得には該当しない。利子所得は公社債・預貯金の利子、合同運用信託・公社債投資信託等の収益の分配に限定されており(所得税法第23条、所得税法施行令第2条)、暗号資産の貸付けによる利用料はこれに含まれない。
したがって、個人のレンディング利息は事業所得または雑所得に区分される(所得税法第27条、第35条)。
関係法令:所得税法第23条、第27条、第35条、第36条第1項、第37条 / 所得税法施行令第2条 / 国税庁FAQ 1-7
レンディング利息の計算例
【結論】レンディング利息の所得金額は「受取数量 × 取得時の時価」で計算する。譲渡原価は0円であるため、利息の時価全額が所得となる(所得税法第36条第1項)。
【例】2022年4月1日に0.01ETHのレンディング利息を受け取った(時価:1ETH=40万円)
収入金額:40万円 × 0.01ETH = 4,000円
譲渡原価:0円
所得金額:4,000円 − 0円 = 4,000円
レンディングに要した必要経費(ガス代、プラットフォーム手数料等)がある場合は、この所得金額から控除できる(所得税法第37条)。
受け取った0.01ETHの取得価額は4,000円(受取時の時価)となる。この0.01ETHを後日売却した場合は、売却価額から取得価額4,000円を差し引いた金額が新たな所得となる。
関係法令:所得税法第36条第1項、第37条
法人の貸付時処理:2つのパターン
【結論】法人が暗号資産を貸し付ける場合、貸付時の帳簿処理には時価主義(パターンA)と取得原価主義(パターンB)の2つの方法がある。いずれの方法でも、期末時価評価を経れば最終的な損益額は一致する。
なお、レンディングもステーキングと同様に「預入・引出」として処理する方向性がある。この場合、貸付時・返済時に譲渡損益を認識せず、利息のみを収益計上する。ステーキングにおける預入処理の考え方と期末時価評価の詳細は「暗号資産のステーキングの税務処理|預入・報酬・リキッドステーキングの課税」を参照。
パターンA:時価主義
貸付時に暗号資産の時価と取得原価の差額を損益に計上する方法である。貸付時点で損益が発生するため、期中の損益に影響を及ぼしやすい。
| タイミング | 処理内容 |
|---|---|
| 貸付時 | 貸付暗号資産を時価で計上。時価と取得原価の差額を損益計上 |
| 期末 | 時価評価を実施。評価損益を計上 |
| 返済時 | 返済を受けた暗号資産の時価と帳簿価額の差額を損益計上 |
パターンB:取得原価主義
貸付暗号資産の取得原価をそのまま計上する方法である。貸付時点では損益が発生しない。
| タイミング | 処理内容 |
|---|---|
| 貸付時 | 貸付暗号資産を取得原価で計上。損益は発生しない |
| 期末 | 時価評価を実施。評価損益を計上 |
| 返済時 | 返済を受けた暗号資産の時価と帳簿価額の差額を損益計上 |
パターンA(時価主義)・パターンB(取得原価主義)の具体的な仕訳例と選択基準の詳細は「暗号資産の貸付の税務処理(前編)|A/B方式比較と基本仕訳」を参照。
時価が取れない暗号資産の貸付に注意
時価が把握できない暗号資産を貸し付けた場合、いずれのパターンでも問題が生じる。パターンAでは貸付時に取得原価がそのまま損失として計上され、返済時に損益が発生しない。パターンBでは返済時に時価が取れない場合、取得原価の全額が損失として計上される。時価が不明な暗号資産の貸付は、処理方針の事前検討が必要である。
関係法令:法人税法第61条第2項
貸し付けた暗号資産の期末時価評価と債権トークン
【結論】法人が貸し付けた暗号資産は、期末時価評価の対象となり評価損益の計上が必要である(個人は不要)。貸付期間中に使用料を得ており、価格変動リスクを法人が負うため、自己の計算において有するものと判断される(国税庁FAQ 3-1-7、法人税法第61条第2項)。
国税庁FAQ 3-1-7は、法人が貸付けをした暗号資産について以下の理由で期末時価評価の対象となるとしている。
- 貸付期間中に使用料(利息)を得ることが可能である
- 将来的な価格変動リスクを法人が負う
- 自己の計算において暗号資産を有するものと判断される
- 特定自己発行暗号資産・特定譲渡制限付暗号資産に該当しない
なお、貸し付けた債権をさらに他者に貸し付ける「二重債権」のケースでは、実質的に貸し付けているのは最初の1件のみであるため、最新の貸付分のみを期末時価評価の対象とする考え方がある。なお、個人の場合は期末時価評価を行う必要がない。
債権トークン(cToken・stETH等)の論点
DeFiプロトコル(Compound等)で暗号資産を貸し付けた際に発行されるcToken、流動性ステーキングで発行されるstETH等の債権トークンについては、実務上LPトークンと同様の考え方で処理されている。しかし、債権トークン自体に独自の時価が存在するケースがあり、「預け入れた暗号資産の時価」と「取得した債権トークンの時価」のどちらで処理すべきかという問題がある。
債権トークンを伴うレンディングの税務処理には、預け入れた暗号資産と債権トークンを「交換」したとみなして預入時に譲渡損益を認識する方法(売買型)と、預入・引出として処理し譲渡損益を認識しない方法(預入型)の2つがある。税務調査リスクを完全に排除する観点では、LPトークンと同様に交換処理(売買型)を採用し、預入時に暗号資産の譲渡損益を認識する処理が最も安全である(国税庁FAQ 1-3準用)。ただし、預入型にも合理的な根拠があり、いずれの方法にもメリット・デメリットがある。
売買型と預入型の理論的整理・具体的な仕訳・選択基準の詳細は「債権トークン(自己発行)の税務処理(前編)|3軸整理と売買型・預入型の理論比較」を参照。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
レンディング利用料の消費税と改正予定
【結論】暗号資産の貸付けにおける利用料は、現行法では消費税の課税対象である(国税庁FAQ 6-2)。ただし、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)において非課税化が予定されている。
現行法の取扱い
暗号資産の貸付けは「資産の貸付け」に該当する(消費税法第2条第1項第8号、第4条第1項)。支払手段の譲渡や金銭の貸付け等の非課税取引のいずれにも該当しないため、利用料を対価とする暗号資産の貸付けは消費税の課税取引となる。
課税事業者がレンディングサービスを提供する場合、受け取る利用料は課税売上に含まれる。
注意:個人事業主やフリーランスが、投資の一環として大規模なレンディングを行い、利息(利用料)の課税売上が年間1,000万円を超えた場合、翌々年から本業の事業も含めて消費税の課税事業者となる。「暗号資産のレンディングをしていただけで、気づいたら消費税の申告義務を負っていた」という意図せぬ課税事業者化は実際に起こりうるリスクである。ただし、金融商品取引法改正後は暗号資産の貸付利用料が消費税の非課税取引に変更される予定であるため、改正施行後はこのリスクは解消される見込みである。
令和8年度改正による変更予定
令和8年度税制改正大綱では、暗号資産の貸付けについて消費税を非課税とすることが盛り込まれている。この改正により、暗号資産の貸付利用料は消費税の課税対象から外れる。
施行時期は金融商品取引法改正の施行日の属する年の翌年1月1日以降であり、具体的な年は法改正の国会審議次第である。令和8年度税制改正大綱の全体像は「暗号資産の分離課税化はいつから?」で解説している。
関係法令:消費税法第2条第1項第8号、第4条第1項、第6条第1項、別表第2 / 消費税法施行令第9条第4項 / 国税庁FAQ 6-2 / 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
レンディングの預入・引出の実務処理
【結論】レンディングの預入・引出そのものでは課税関係は発生しない。預入と引出は送金と入金の2つのトランザクションがセットとなるため、実務上はメモ欄等で紐付け管理を行う。
レンディングの実務処理で注意すべきポイントは以下のとおりである。
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 預入時 | 課税関係なし。メモ欄に「2025レンディング001」等と記載して紐付け管理 |
| 利息受取時 | 受取時の時価で収益計上 |
| 引出時 | 課税関係なし(利息分のみ収益を反映) |
| 年度をまたぐ場合 | 片側のみの場合は「2025レンディング001未完了」と記載 |
| 手数料控除で減額返却 | 差額を手数料として損失計上(カスタムファイルで対応) |
債権トークン(cToken等)の受領・返却がある場合も同様に紐付け管理を行う。損益計算ソフトが債権トークンに対応しているかどうかで具体的な処理が異なるため、使用しているソフトの仕様を確認する必要がある。
関係法令:所得税法第36条第1項
よくある質問(FAQ)
Q1. レンディングの利息を受け取っただけで税金がかかりますか?
かかる。暗号資産の利息を取得した時点で、取得時の時価が所得金額となる(所得税法第36条第1項、国税庁FAQ 1-7)。利息を売却していなくても、受け取った時点で課税される。
Q2. レンディング利息は利子所得(源泉分離課税20.315%)になりますか?
ならない。利子所得は公社債・預貯金の利子等に限定されている(所得税法第23条)。暗号資産のレンディング利息は事業所得または雑所得に区分される。
Q3. CEXのレンディングとDeFiのレンディングで課税関係は違いますか?
課税関係は同じである。いずれも利息を受け取った時点で取得時の時価が収入金額となる(国税庁FAQ 1-7)。ただし、DeFiの場合は債権トークンの発行や複雑なトランザクション構成が伴うため、損益計算の実務が異なる。
Q4. レンディングの利用料に消費税はかかりますか?
現行法ではかかる。暗号資産の貸付利用料は消費税の課税対象である(国税庁FAQ 6-2)。ただし、令和8年度税制改正大綱で非課税化が予定されており、金商法改正の施行後に適用される。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
関連記事・サービスページ
関連記事
- DeFiの税金ガイド|課税タイミングと計算方法
- 暗号資産のステーキングの税務処理|預入・報酬・リキッドステーキングの課税
- 暗号資産の貸付の税務処理(前編)|A/B方式比較と基本仕訳
- 暗号資産の貸付の税務処理(中編)|法的根拠と最終確定仕訳
- 暗号資産の貸付の税務処理(後編)|時価取得不能な暗号資産の貸付
- 債権トークン(自己発行)の税務処理(前編)|3軸整理と売買型・預入型の理論比較
- 債権トークン(自己発行)の税務処理(中編)|暗号資産担保型の完全仕訳フロー
- 債権トークン(自己発行)の税務処理(後編)|NFT担保型の仕訳フローと方式選択基準
専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第23条、第27条、第35条、第36条第1項、第37条
- 所得税法施行令第2条
- 法人税法第61条第2項
- 法人税法施行令第118条の7
- 消費税法第2条第1項第8号、第4条第1項、第6条第1項、別表第2
- 消費税法施行令第9条第4項
- 国税庁FAQ 1-7、3-1-7、6-2
- 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
