暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】

暗号資産(仮想通貨)の確定申告とは、1月1日から12月31日までの暗号資産取引で生じた所得を計算し、翌年3月15日までに税務署へ申告・納税する手続きである。暗号資産の売却、他の暗号資産との交換、商品の購入など、暗号資産を手放すすべての取引が課税対象となる(所得税法第36条第1項)。

目次

この記事でわかること

  • 暗号資産の課税が発生する3つのパターンと具体的な計算例
  • 損益計算の全体像(5ステップ)
  • 確定申告に必要な資料一覧
  • 所得区分の判定方法(雑所得・事業所得)
  • 令和8年度税制改正大綱による分離課税化の影響

暗号資産の課税が発生する3つのパターン

暗号資産の所得は、原則として雑所得に分類される(国税庁FAQ 2-2)。課税が発生するのは、暗号資産を「手放した」ときである。保有しているだけでは課税されない。

課税パターンは以下の3つに整理できる。

パターン内容所得の計算
① 売却暗号資産を日本円等に換金売却価額 − 譲渡原価
② 交換暗号資産Aで暗号資産Bを購入取得した暗号資産の時価 − 手放した暗号資産の譲渡原価
③ 決済暗号資産で商品・サービスを購入商品の価額 − 暗号資産の譲渡原価

3パターンすべてに共通するロジックは「手放した暗号資産の時価と取得原価の差額が所得」という点である。

パターン①:売却(国税庁FAQ 1-1)

4月2日に4,000,000円で4BTCを購入し、4月20日に0.2BTCを210,000円で売却した場合。

210,000円 −(4,000,000円 ÷ 4BTC)× 0.2BTC = 10,000円

210,000円(売却価額)から1BTCあたりの取得単価1,000,000円に売却数量0.2BTCを掛けた譲渡原価200,000円を差し引き、所得金額は10,000円となる。

パターン②:交換(国税庁FAQ 1-3)

4月2日に4,000,000円で4BTCを購入し、11月2日に1BTCで40XRPを購入した場合(1XRP=30,000円)。

(30,000円 × 40XRP)−(4,000,000円 ÷ 4BTC)× 1BTC = 200,000円

XRPの購入価額1,200,000円がBTCの譲渡価額となる。ここからBTCの譲渡原価1,000,000円を差し引き、所得金額は200,000円となる。暗号資産同士の交換は、手放した側の暗号資産で損益が発生する。

パターン③:決済(国税庁FAQ 1-2)

4月2日に4,000,000円で4BTCを購入し、10月5日に403,000円(税込)の商品を0.3BTCで決済した場合。

403,000円 −(4,000,000円 ÷ 4BTC)× 0.3BTC = 103,000円

商品の価額403,000円がBTCの譲渡価額となる。譲渡原価300,000円を差し引き、所得金額は103,000円となる。

関係法令:所得税法第36条、第37条、第48条の2 / 所得税法施行令第119条の2、第119条の5

損益計算の5ステップ

暗号資産の税額算定そのものは、総収入金額から経費を差し引いた所得に税率を掛けるだけである。所得額さえわかっていれば、申告書の作成は税務署でも十分に対応できる。

暗号資産の最大の難関は損益計算にある。これは日本に限らず、暗号資産の税金計算の95%はその所得を分類・計算することであり、残り5%が税率の適用だとされている(Kirk David Phillips, “The Crypto Tax Blueprint™”, 2023)。

損益計算は以下の5ステップで行う。

ステップ内容
1. 資料収集取引履歴、ウォレットアドレス、年末時点の暗号資産残高を収集する
2. ソフト取込損益計算ソフトに取引履歴・ウォレットアドレスを取り込む
3. 分類・エラー解消取引内容を分類し、数量不足(枚数不足)エラーを解消する
4. 残高調整年末の実際の保有数量と計算上の数量を一致させる
5. 確認・申告計算内容を確認し、損益額をもとに申告書を作成・提出・納税する

ステップ3の「分類」では、自分のウォレット間の送金(除外)、エアドロップ(時価で収益計上)、暗号資産同士の交換(売買処理)など、取引の性質ごとに処理方法を振り分ける。ステップ4の「残高調整」は、取引履歴の欠損や取り込み漏れによって計算上の数量と実際の数量がずれた場合に補正する工程である。

確定申告に必要な5つの資料

資料内容注意点
① 期末残高ウォレットごとの暗号資産保有数量のスクリーンショット+数量をまとめたExcel詐欺トークンは除外。LPトークン・債権トークンは記載する
② ウォレットアドレスMetaMask等のウォレットアプリのアドレス一覧ネットワーク名とアドレスのセット。ハードウェアウォレットのアドレスは原則不要
③ 取引履歴暗号資産取引所からダウンロードしたCSV/XLSX取引開始年度からすべて必要。年間取引報告書(PDF)は原則使用しない
④ 法定通貨残高法人・青色申告個人事業主の場合日本の取引所の円残高+海外取引所の外貨残高
⑤ その他ウォレットや取引履歴で把握できない取引情報ICO、他者への譲渡、詐欺・盗難など。日時・種類・数量・内容を別途用意

トークンの同定にはCoinGecko API IDの記録が推奨される。暗号資産は17,000種類以上(CoinGecko登録数)存在し、シンボル名だけでは特定できない。たとえば「MONA」というシンボルは、かつてはモナーコイン(Monacoin)を指したが、現在CoinGeckoに登録されている「MONA」はMona(正式名称)という別の暗号資産である。混同すると損益額が実態と異なる結果になる。

所得区分の判定

暗号資産取引の所得は、原則として雑所得(その他雑所得)に分類される。

ただし、収入金額が300万円を超え、かつ帳簿書類を保存している場合は、原則として事業所得に該当する(国税庁FAQ 2-2、令和7年12月更新)。

条件所得区分
収入金額300万円以下雑所得(その他雑所得)
収入金額300万円超+帳簿保存あり原則として事業所得
収入金額300万円超+帳簿保存なし雑所得(業務に係る雑所得)

事業所得に該当すると、青色申告特別控除や損益通算が適用できるため、税負担が軽くなる可能性がある。一方、雑所得の場合、損失は他の所得と損益通算できない(所得税法第69条第1項)。

関係法令:所得税法第27条、第35条 / 所得税基本通達35-1、35-2

譲渡原価の計算方法

1年間の取引をすべて集計した後、譲渡原価を算定する方法として総平均法移動平均法の2つがある。

方法計算ロジック届出
総平均法年間の取得価額合計 ÷ 年間の取得数量合計 = 1単位あたりの取得価額届出不要(個人の法定評価方法)
移動平均法取得の都度、加重平均で1単位あたりの取得価額を更新届出が必要(確定申告期限まで)

届出をしていない場合、個人は総平均法、法人は移動平均法が自動的に適用される(所得税法施行令第119条の2、法人税法施行令第118条の6)。

【令和8年度改正】分離課税化の見通し

注意:以下は令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日公表)の内容であり、大綱段階で法律は未成立である。金融商品取引法の改正が前提であり、施行時期は未定。

令和8年度税制改正大綱では、「国民の資産形成に資する暗号資産」に限り、株式や投資信託と同様の申告分離課税を導入することが示された。

項目現行制度改正後(予定)
税率総合課税(最大約55%)一律20%(所得税15%+住民税5%)
損失繰越不可翌年以後3年間繰越控除可能
対象すべての暗号資産「特定暗号資産」(国内取引所上場銘柄)に限定される見込み

分離課税の対象となる「特定暗号資産」は、金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産に限定される。海外取引所やDEX(分散型取引所)での取引は対象外となる可能性が高い。

改正が実現した場合でも、DeFiやNFTの取引で利用されるトークンの多くは「特定暗号資産」に該当しない可能性がある。そのため、現行の総合課税による申告方法を正確に理解しておくことが引き続き重要である。

FAQ

Q1. 暗号資産を保有しているだけで税金はかかりますか?

かからない。課税が発生するのは、売却・交換・決済など暗号資産を「手放した」ときのみである。ただし、法人の場合は期末時価評価により含み益に課税されるケースがある(法人税法第61条第2項)。

Q2. 暗号資産の損失を給与所得など他の所得から差し引くことはできますか?

暗号資産の所得が雑所得に該当する場合、他の所得との損益通算はできない(所得税法第69条第1項)。ただし、暗号資産の雑所得の損失と他の雑所得(FX、副業収入など)との相殺(雑所得内通算)は可能である。

Q3. DeFiやNFTの取引も確定申告が必要ですか?

必要である。税法にDeFiやNFT等の特別の定めがなくても、個人に所得(経済的利得)が生じたのであれば所得税の課税関係が発生する。流動性提供、ステーキング報酬、NFTの売買など、すべての取引で損益を計算し申告する必要がある。

Q4. 取得価額がわからない暗号資産を売却した場合はどうなりますか?

売却価額の5%を取得費とする概算法が認められている(所得税基本通達48の2-4)。ただし、この方法は取得時から20倍超の値上がりがあった場合にのみ有利であり、それ以下の場合は不利になる。

Q5. 確定申告をしなかった場合のペナルティは?

無申告の場合、無申告加算税(原則15%〜30%)と延滞税が課される。さらに、意図的な隠蔽・仮装があった場合は重加算税(40%)の対象となる。国税庁は暗号資産取引所からの情報取得体制を整備しており、取引の把握は年々強化されている。

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