暗号資産の税金が高いと言われる最大の理由は、給与所得等と合算される「総合課税」かつ最大45%の「累進課税」が適用されるためである。住民税10%を加えると最大約55%となり、株式の一律20.315%と比較して2倍以上の税負担となる。
- 理由① 暗号資産の利益は原則として雑所得に区分され、給与所得・事業所得等と合算したうえで累進税率(5%〜45%)が適用される。本業の収入が高い人ほど暗号資産の利益にも高い税率がかかる構造であり、「暗号資産だけの利益で税率が決まるわけではない」点が見落とされやすい。
- 理由② 株式・投資信託は分離課税(20.315%固定)であり、どれだけ利益が出ても税率が変わらない。暗号資産にはこの仕組みがないため、同じ投資利益でも暗号資産のほうが税負担が重くなる。さらに暗号資産の損失は他の所得と損益通算できず、翌年への繰越控除もできない。
- 条件 令和8年度税制改正大綱で「特定暗号資産」の取引を分離課税(20%)とする方針が示された。金融商品取引法の改正が前提であり、2026年4月10日に改正案が閣議決定されている。施行後は税率が大幅に軽減される見込みである。
所得税法第89条 / 所得税法第35条 / 租税特別措置法第37条の11 / 令和8年度税制改正大綱
この記事でわかること
- 暗号資産の税金が高いと言われる構造的な理由
- 所得税+住民税の税率早見表
- 総合課税の仕組み|なぜ給与と合算されるのか
- 株式・FXとの税率比較
- 分離課税化の見通し|令和8年度税制改正大綱のポイント
暗号資産の税金が高いと言われる3つの理由
【結論】暗号資産の税金が高い理由は、①総合課税で給与所得等と合算される、②累進税率で最大約55%になる、③損失の繰越控除ができないの3点に集約される。これらはすべて暗号資産が「雑所得」に区分されることに起因する(所得税法第35条、第69条、第89条)。
理由①:総合課税で給与所得等と合算される
暗号資産の利益は、給与所得・事業所得等と合算された金額に対して税率が適用される。たとえば給与所得が600万円の人が暗号資産で200万円の利益を得た場合、合計800万円に対して累進税率が適用される。暗号資産の200万円だけに税率がかかるのではなく、給与所得と合わせた総額で税率が決まるため、本業の収入が高いほど暗号資産の利益にも高い税率が適用される。
理由②:累進税率で最大約55%になる
所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税(5%〜45%の7段階)を採用しており、住民税10%を加えると最大約55%の税負担となる。暗号資産の利益が大きいほど税率が高くなるため、「儲かるほど税金も高くなる」構造である。
理由③:損失の繰越控除ができない
株式の譲渡損失は翌年以後3年間の繰越控除が認められるが、暗号資産(雑所得)にはこの制度がない。2025年に500万円の損失、2026年に500万円の利益が出た場合、株式であれば相殺して税負担はゼロだが、暗号資産では2026年の500万円に丸々課税される。損失の繰越ができないことが、体感的な税負担をさらに重くしている。詳細は「暗号資産の損失はなぜ損益通算できない?|雑所得内通算と繰越控除の可否」で解説している。
所得税+住民税の税率早見表
【結論】暗号資産の利益に適用される税率は、所得税(5%〜45%)+住民税(10%)で合計15%〜55%の範囲で変動する。課税所得330万円以下であれば株式の分離課税(20.315%)より低い税率だが、695万円を超えると株式より税負担が重くなる(所得税法第89条)。
| 課税所得 | 所得税率 | 控除額 | 住民税 | 合計税率(概算) |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 | 10% | 約15% |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 | 10% | 約20% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 | 10% | 約30% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 | 10% | 約33% |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | 10% | 約43% |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | 10% | 約50% |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | 10% | 約55% |
※上記に加え、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が課される。
この税率は「課税所得」に対して適用される点に注意が必要である。課税所得とは、収入金額から必要経費・所得控除(基礎控除48万円、社会保険料控除等)を差し引いた後の金額であり、収入金額そのものではない。暗号資産の必要経費の範囲は「暗号資産の経費にできるもの一覧|必要経費の範囲と具体例」で解説している。
総合課税の仕組み|なぜ給与と合算されるのか
【結論】日本の所得税は「総合課税」が原則であり、すべての所得を合算して1つの税額を計算する仕組みである。暗号資産の利益(雑所得)は分離課税の対象ではないため、この原則どおりに給与所得等と合算される(所得税法第22条)。
所得税法は所得を10種類(利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得)に区分しているが、原則としてすべての所得を合算し、そこに累進税率を適用して税額を計算する。これが「総合課税」である。
株式や国内FXは、租税特別措置法により例外的に「分離課税」(他の所得と合算しない)が認められている。暗号資産にはこの例外規定がないため、総合課税の原則がそのまま適用される。
補足:「暗号資産だけ税率が高い」という表現は正確ではない。暗号資産に特別に高い税率が課されているのではなく、分離課税という例外措置が設けられていないだけである。給与所得も事業所得も同じ累進税率が適用されており、暗号資産の雑所得だけが不利な税率で課されているわけではない。「株式が優遇されている」という表現のほうが実態に近い。
株式・FXとの税率比較
【結論】株式・国内FXは分離課税で一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)であり、どれだけ利益が出ても税率が変わらない。暗号資産は課税所得330万円以下であれば株式より税率が低いが、695万円を超えると株式の約1.6倍、4,000万円超では約2.7倍の税負担となる。
| 項目 | 暗号資産(現行) | 上場株式 | 国内FX(くりっく365等) |
|---|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税 | 分離課税 | 分離課税 |
| 税率 | 15%〜55%(累進) | 20.315%(固定) | 20.315%(固定) |
| 他の所得との損益通算 | 不可 | 不可(株式等内のみ) | 不可(先物等内のみ) |
| 損失の繰越控除 | 不可 | 3年間可能 | 3年間可能 |
| 年間取引報告書 | 任意(取引所が発行) | 証券会社が発行 | 業者が発行 |
| 源泉徴収(特定口座) | なし | あり(選択可) | なし |
暗号資産FX(暗号資産を原資産とするデリバティブ取引)も、国内FXとは異なり総合課税の雑所得として課税される。暗号資産FXの税務処理は「暗号資産FX・PerpDEXの税金|個人は総合課税に注意」で解説している。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
分離課税化の見通し|令和8年度税制改正大綱
【結論】令和8年度税制改正大綱で「特定暗号資産」の取引を分離課税(20%:所得税15%+住民税5%)の対象とする方針が示された。金融商品取引法の改正案は2026年4月10日に閣議決定されており、今国会で成立すれば2027年度にも施行、分離課税の適用は最短で2028年1月からの取引となる見込みである。
| 項目 | 現行 | 分離課税化後(予定) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税(累進) | 分離課税(20%固定) |
| 税率 | 15%〜55% | 20% |
| 損失の繰越控除 | 不可 | 3年間可能 |
| 対象 | すべての暗号資産 | 「特定暗号資産」に限定 |
「特定暗号資産」とは、金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限定される見込みである。DEXやDeFiプロトコルで直接取引する暗号資産が対象に含まれるかは現時点で不明であり、海外取引所の取引も対象外となる可能性がある。分離課税化の詳細は「暗号資産の分離課税化はいつから?|令和8年度税制改正大綱のポイント」で解説している。
補足(分離課税の適用開始タイミング):税制改正大綱では「金商法改正の施行日の属する年の翌年1月1日以降」に適用開始とされている。金商法が2027年中に施行されれば2028年1月から、2028年中に施行されれば2029年1月からの取引に分離課税が適用される。現時点で適用開始日は確定していない。
よくある質問(FAQ)
Q1. 暗号資産の利益が少額でも税率55%がかかりますか?
かからない。55%は課税所得4,000万円超の場合の最高税率である。暗号資産の利益単体ではなく、給与所得等と合算した課税所得の合計額に対して累進税率が適用される(所得税法第89条)。課税所得330万円以下であれば合計税率は約20%であり、株式の分離課税(20.315%)とほぼ同等である。
Q2. 暗号資産の損失は翌年に繰り越せますか?
現行法では繰り越せない。暗号資産の利益が雑所得に該当する場合、損失の繰越控除は認められない(所得税法第69条)。ただし分離課税化後は「特定暗号資産」について3年間の繰越控除が可能となる予定である(令和8年度税制改正大綱)。
Q3. 暗号資産FX(レバレッジ取引)も総合課税ですか?
総合課税である。国内FX(外国為替証拠金取引)は分離課税20.315%だが、暗号資産を原資産とするデリバティブ取引は分離課税の対象外であり、総合課税の雑所得として課税される(所得税法第35条)。
Q4. 分離課税になったらすべての暗号資産取引が20%になりますか?
すべてではない。分離課税の対象は「特定暗号資産」(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等)に限定される見込みである。対象外の暗号資産の取引は引き続き総合課税となり、さらに譲渡所得の特別控除(50万円)や長期譲渡所得の1/2措置も適用されない方向で調整されている。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
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専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第22条(課税標準)
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第69条(損益通算)
- 所得税法第89条(税率)
- 租税特別措置法第37条の11(上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)
- 租税特別措置法第41条の14(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)
- 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
