DeFiの税金ガイド|課税タイミングと計算方法

DeFi(分散型金融)の税金とは、DEX(分散型取引所)やレンディングプロトコル等を利用した暗号資産(仮想通貨)取引から生じる所得に対して課される所得税・法人税です。DeFi取引は、従来の暗号資産の売買と異なり、流動性提供・ステーキング・レンディングなど多様な課税イベントが発生します。

この記事でわかること

  • DeFi取引の主な類型と、それぞれの課税タイミング
  • 流動性提供(LP)が「課税イベントか否か」に関する2つの考え方
  • ステーキング報酬・レンディング利息の所得計算の基本
  • DEXスワップ(暗号資産同士の交換)の損益計算
  • 法人がDeFi取引を行う場合の期末時価評価の論点
目次

DeFi取引の課税関係の全体像

DeFi取引で所得が発生する法的根拠は、所得税法第36条第1項(収入金額)および第37条第1項(必要経費)です。暗号資産の取得時点の時価が総収入金額となり、取得に要した費用が必要経費となります(国税庁FAQ 1-7)。

DeFiの主な取引類型と課税タイミングは次のとおりです。

取引類型課税タイミング所得の計算
DEXスワップ(交換)交換時取得した暗号資産の時価 − 手放した暗号資産の取得原価
流動性提供(LP)考え方により異なる(後述)提供開始時 or 解除時に損益を認識
ステーキング報酬報酬の受取時(Claim時)受取時の時価 − 0円(対価なし)
レンディング利息利息の受取時受取時の時価 − 0円(対価なし)
ファーミング報酬報酬の受取時(Claim時)受取時の時価 − 0円(対価なし)
エアドロップ受取時受取時の時価(時価不明→0円)

個人の場合、DeFiから生じる所得は原則として雑所得に区分されます(所得税法第35条)。年間の総収入金額が300万円を超え、かつ帳簿を保存している場合は事業所得として認められる可能性があります(国税庁FAQ 2-2)。

DEXスワップ(暗号資産同士の交換)の計算

DEXでの暗号資産同士の交換は、手放した暗号資産の「譲渡」として損益が発生します。これは国税庁FAQ 1-3と同じロジックです。

計算例

4,000,000円で4BTC購入済みの状態で、DEXにて1BTCを40XRP(1XRP=30,000円)に交換した場合:

(30,000円 × 40XRP)−(4,000,000円 ÷ 4BTC)× 1BTC = 200,000円

手放したBTCの取得原価(1,000,000円)と、受け取ったXRPの時価(1,200,000円)の差額200,000円が所得です。

CEX(中央集権型取引所)での交換と税務上の計算方法は同じですが、DEXの場合はガス代(ネットワーク手数料)が別途発生し、これは必要経費に算入できます(国税庁FAQ 2-3)。

流動性提供(LP)の課税上の2つの考え方

流動性提供は、DeFi税務で最も論点が多い取引です。DEXに2種類(またはそれ以上)の暗号資産を預け入れ、代わりにLPトークンを受け取る仕組みですが、この「預入時点」が課税イベントに該当するか否かについて、実務上2つの考え方が存在します。

考え方①:流動性提供は課税イベントではない

この考え方では、流動性供給の開始時点では損益計算を行いません。

根拠は、DEXにおいてはトークンの処分権に係る権利の帰属主体となり得る者が存在しないため、処分権の移転が起こらないという点にあります。いわば一種の単独取引(自己取引)にすぎないとする見解です。国内の損益計算ソフトの多くはこの考え方を採用しており、流動性供給の解除時に一括して損益を認識します。

考え方②:流動性提供は課税イベントである

この考え方では、預け入れた暗号資産をLPトークンと「交換」したものとみなし、預入時点で各暗号資産の時価と取得原価の差額を損益計上します。

計算例(考え方②を採用した場合)

1BNB(取得原価2万円、時価4万円)と20CAKE(取得原価2万円、時価4万円)をDEXに流動性供給し、4 Cake-LPを取得した場合:

BNBの損益:4万円 × 1BNB − 2万円 ÷ 1BNB × 1BNB = 2万円
CAKEの損益:2,000円 × 20CAKE − 2万円 ÷ 20CAKE × 20CAKE = 2万円
合計所得:4万円

LPトークンの取得価額は、預け入れた2種の暗号資産の時価の合計額(4万円+4万円=8万円)となります。

どちらを採用すべきか

いずれの考え方を採用しても、流動性供給の開始から解除までの一連の取引を通じた最終的な損益額は一致します。異なるのは損益の認識タイミングです。

比較項目①非課税イベント②課税イベント
預入時の損益なしあり
解除時の損益一括認識取得原価との差額
最終損益額同一同一
帳簿の複雑さシンプル複雑
採用例国内損益計算ソフトの多く海外損益計算ソフトの一部

LPトークンは、単なる預かり証ではなく、割合的持分を表章するトークンであり、他者への譲渡が可能で、さらにステーキングによって報酬を稼得できるものです。資金決済法上の暗号資産や金融商品取引法上の集団投資スキーム持分に該当する可能性もあるため、「預かり証だから課税イベントではない」という単純な整理には慎重な検討が必要です。

流動性供給解除時にはインパーマネントロスにより、当初の預入数量から増減した暗号資産が戻ります。解除時の税務処理は複雑になるため、損益計算ソフトの利用または税理士への相談を推奨します。

→ 流動性提供の詳細な計算例・4つの処理パターンについては「流動性提供(LP)の税金|預入・引出の課税と計算例」をご覧ください。

ステーキング報酬・レンディング利息・ファーミング報酬

ステーキング報酬

ステーキング報酬は、受取時(Claim時)の時価で所得を計上します(所得税法第36条、国税庁FAQ 1-7)。

実務上、ステーキング報酬はClaim(要求)よりも前にブロックチェーン上で入金されていることがありますが、Claim前の報酬をすべて把握するにはブロックチェーンのロールバックが必要であり、現実的にはコストが過大です。そのため、損益計算ソフトではClaim時に利益計上するのが一般的です。

なお、ステーキングの預入・引出自体は課税イベントではなく、損益計算の対象は報酬部分のみです。

→ ステーキングの詳細な課税タイミング・ロックアップとの関係については「ステーキング報酬の税金|課税タイミングと計算例」をご覧ください。

レンディング(暗号資産の貸付)

レンディングで受け取る利息も、取得時の時価で所得を計上します(国税庁FAQ 1-7)。計算構造はステーキング報酬と同じです。

→ レンディングの詳細な課税関係・消費税の取扱いについては「レンディング(暗号資産の貸付)の税金」をご覧ください。

ファーミング報酬

LPトークンをさらにステーキングして得られるファーミング報酬も、受取時の時価で所得計上します。LPトークンのステーキング開始・終了は課税イベントではありません。

計算例

5CAKE(時価1CAKE=800円)をステーキング報酬として取得した場合:

5CAKE × 800円 − 0円 = 4,000円(所得金額)

何かを譲渡して対価を得ているわけではないため、譲渡原価は0円です。収入金額がそのまま所得金額となります。

法人がDeFi取引を行う場合の留意点

法人がDeFiで暗号資産を運用する場合、個人とは異なる2つの論点があります。

DEXで取引される暗号資産の期末時価評価

DEXは自動マーケットメイカー(AMM)により交換比率が公表され、随時交換取引が可能であるため、「市場」の範囲に含まれます(国税庁FAQ 3-1-5、法人税法第61条)。

DEXで取引される暗号資産が活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産)の3要件を満たす場合、法人の期末時価評価の対象となります。時価評価金額は、DEXが公表した事業年度終了日の最終交換比率に、他の市場暗号資産の最終売買価格を乗じて計算します。

ロックアップ中の暗号資産

ステーキングのためにロックアップした暗号資産も、期末時価評価の対象です(国税庁FAQ 3-1-6)。ロックアップ期間中でもステーキング報酬を得られ、価格変動リスクを法人が負うため、「自己の計算において有する」暗号資産に該当します。

ステーキングのロックアップは、JVCEA規則に基づく「移転制限」とは異なるため、特定譲渡制限付暗号資産には該当しません。

FAQ

Q1. DeFiの利益は確定申告が必要ですか?

必要です。DeFiで得た利益は、日本国内に住所がある個人(居住者)であれば所得税の課税対象です。給与所得者でDeFiを含む雑所得の合計が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。

Q2. DEXの取引履歴はどうやって集めればよいですか?

DEXの取引履歴は、各ブロックチェーンのエクスプローラーから取得するか、DeFi対応の損益計算ソフトを利用します。CEXのように年間取引報告書が発行されないため、ウォレットアドレスごとに取引履歴を網羅的に収集する必要があります。

Q3. 複数のDeFiプロトコルを使っている場合、損益計算はどうなりますか?

すべてのプロトコルの取引を合算して損益計算を行います。暗号資産の種類ごとに総平均法または移動平均法で取得原価を計算するため、CEXとDEXをまたいだ取引も含めて一元管理が必要です。

Q4. LPトークンの時価はどう評価しますか?

LPトークンの時価は取得が困難です。流動性供給ごとに預けられている暗号資産の価値が異なるため、一律の時価を算定できません。実務上は、預け入れた暗号資産の時価の合計額をLPトークンの取得価額とするか、あるいはLPトークンの時価を0円として処理し、流動性供給解除時に損益を認識する方法がとられています。

Q5. DeFiの損益計算を自分で行うのは現実的ですか?

取引件数が少なければ可能ですが、流動性提供・ファーミング・複数チェーンでの運用が絡む場合は、損益計算ソフトなしでの計算は極めて困難です。特に流動性提供の処理は、預入・貸付・借入が入り交じり複雑になるため、DeFi対応の損益計算ソフトの利用を推奨します。

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