暗号資産の譲渡は消費税非課税であり、現行法では課税売上割合の計算にも含めない。ただし貸付けによる利用料は現行法では課税対象であり、取引の種類で取扱いが分かれる。
- 理由① 暗号資産は消費税法上「支払手段に類するもの」に位置づけられ、譲渡は非課税取引に該当する。さらに現行法では課税売上割合の計算からも除外されるため、暗号資産の大量売買が他の事業の仕入税額控除に影響を与えない設計となっている。
- 理由② 暗号資産の貸付け(レンディング)で受け取る利用料は、現行法では「役務の提供の対価」として課税対象となる。同じ暗号資産から生じる収入でも、譲渡益は非課税・貸付利用料は課税と取扱いが異なるため、消費税の申告では取引ごとの区分が必要。
- 条件 令和8年度税制改正大綱により、暗号資産の消費税法上の位置づけが「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」に変更される予定。非課税の結論は変わらないが、課税売上割合の計算上、譲渡対価の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入する扱いとなる(有価証券と同じ扱い)。また暗号資産の貸付けも非課税化される予定。施行時期は金融商品取引法改正の施行日の翌年1月1日以降。
消費税法第6条第1項・別表第一第二号 / 消費税法施行令第48条第2項 / 国税庁FAQ 6-1・6-2 / 令和8年度税制改正大綱
この記事でわかること
- 暗号資産の譲渡がなぜ消費税非課税なのか(法的根拠と経緯)
- 課税売上割合への影響と会計ソフトでの仕訳方法
- 暗号資産の貸付け(レンディング)の消費税上の取扱い
- マイニング報酬・期末時価評価と消費税の関係
- 令和8年度税制改正大綱による消費税の見直し内容
暗号資産の譲渡と消費税の非課税
【結論】暗号資産の譲渡は「支払手段に類するものの譲渡」として消費税が非課税である(消費税法第6条第1項、消費税法別表第一第二号、消費税法施行令第9条第4項)。ただし、平成29年6月以前の暗号資産譲渡は課税対象であった。
暗号資産は資金決済法において「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と定義されている。消費税法上は、この暗号資産を「支払手段に類するもの」として取り扱い、その譲渡を非課税としている。
これは外国通貨や小切手などの支払手段の譲渡と同じ扱いである。支払手段そのものを譲渡する行為は、商品・サービスの対価ではなく、決済手段の移転にすぎないという考え方に基づく。
なお、暗号資産の売買に係る仲介手数料(取引手数料)は、仲介役務の提供に対する対価であるため、消費税の課税対象となる。個別対応方式で仕入税額控除を計算する場合、この手数料は「非課税売上げに対応する課税仕入れ」に区分される(国税庁FAQ 6-1)。
| 取引の種類 | 消費税の取扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 暗号資産の譲渡(売却・交換) | 非課税 | 消法6①、別表第一第二号、消令9④ |
| 取引手数料(仲介手数料) | 課税 | 仲介役務の提供対価 |
| 暗号資産の貸付け利用料 | 課税(※改正で非課税化予定) | 消法2①八、4①ほか |
| マイニング報酬の取得 | 不課税(課税対象外) | 対価性なし |
| 法人の期末時価評価による含み益 | 消費税の課税関係なし | 課税資産の譲渡等に該当しない |
関係法令:消費税法第6条第1項、消費税法別表第一第二号、消費税法施行令第9条第4項
課税売上割合への影響と実務処理
【結論】暗号資産の譲渡額は、課税売上割合の計算における分母(非課税売上高)に含めない(消費税法第30条第6項、消費税法施行令第48条第2項第1号)。会計ソフトでは「対象外」または「非課税売上(課税売上割合反映なし)」で計上するのが実務上適切である。
課税仕入れに係る消費税額を計算する際に用いる課税売上割合は、以下の算式で求める。
課税売上割合 =(課税売上高〔税抜〕+ 輸出免税売上高)÷(課税売上高〔税抜〕+ 輸出免税売上高 + 非課税売上高)
この算式の分母にある「非課税売上高」に暗号資産の譲渡額は含まれない。暗号資産の譲渡は非課税取引であるにもかかわらず、課税売上割合の計算からは除外されるという特殊な扱いである。
会計ソフトでの消費税区分
会計ソフトに仕訳を入力する際、暗号資産の譲渡額を「非課税売上」で計上すると、課税売上割合の計算に含まれてしまう場合がある。そのため、以下のいずれかで処理するのが望ましい。
- 「対象外」(不課税取引)として計上する
- 「非課税売上(課税売上割合反映なし)」の区分がある会計ソフトであれば、その区分を使う
この点は見落としやすく、誤って通常の「非課税売上」で計上すると課税売上割合が不当に低下し、仕入税額控除の金額に影響するため注意が必要である。
暗号資産の譲渡のみを行っている場合
暗号資産の譲渡以外に取引を行っていない場合、課税売上割合の分母・分子がともにゼロとなる。国税庁は、このような場合の課税売上割合を「ゼロ%(95%未満)」として取り扱うという見解を示している(国税庁質疑応答事例「課税売上割合が0の場合の仕入控除税額の計算方法」)。
この結果、一括比例配分方式では仕入税額控除がゼロとなり、個別対応方式でも「課税売上げにのみ対応するもの」以外の仕入税額控除が制限される。
関係法令:消費税法第30条第6項、消費税法施行令第48条第2項第1号
暗号資産の貸付け(レンディング)の消費税
【結論】暗号資産の貸付けによる利用料は、消費税の課税対象である(消費税法第2条第1項第8号、第4条第1項、国税庁FAQ 6-2)。ただし、令和8年度税制改正大綱により非課税化される予定である。
暗号資産の貸付け(レンディング)で得る利用料は、「資産の貸付け」の対価に該当する。支払手段の譲渡・金銭の貸付け・有価証券の貸付け等の非課税取引のいずれにも該当しないため、消費税の課税対象となる。
電子決済手段(ステーブルコイン)の貸付けについても同様に課税対象である。
なお、後述する令和8年度税制改正大綱により、暗号資産の貸付けは消費税が非課税とされる予定である。
関係法令:消費税法第2条第1項第8号、第4条第1項、第6条第1項、消費税法別表第一
マイニング・期末時価評価と消費税
【結論】マイニング報酬の取得は消費税の「不課税取引(課税対象外取引)」であり、法人の期末時価評価課税が適用されても消費税の課税関係は生じない。
マイニング報酬として新たに暗号資産を取得した場合、実務上は消費税の「課税対象外取引(不課税取引)」として扱われている。ただし、ユーザーが支払う手数料部分の取扱い、個別対応方式における用途区分、取引の内外判定など、議論の余地がある論点も存在する。
法人税における期末時価評価課税が適用され、帳簿上で含み益が計上されたとしても、実際に「課税資産の譲渡等」があったわけではない。そのため、消費税の課税関係を考える必要はない。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の法人税務を専門の税理士に相談する」をご覧ください。
令和8年度税制改正大綱による消費税の見直し
【結論】令和8年度税制改正大綱により、暗号資産の消費税上の位置づけが「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」に変更され、課税売上割合の計算に対価の5%相当額が算入される予定である(令和7年12月19日・令和8年度税制改正大綱)。
令和8年度税制改正大綱では、暗号資産の消費税に関して以下の3点の見直しが示されている。
| 項目 | 現行制度 | 改正後(予定) |
|---|---|---|
| 非課税の根拠 | 「支払手段に類するもの」の譲渡 | 「有価証券に類するもの」の譲渡 |
| 課税売上割合 | 暗号資産の譲渡額は全額不算入 | 対価の額の5%相当額を分母に算入 |
| 暗号資産の貸付け | 課税対象 | 非課税 |
位置づけの変更
暗号資産の譲渡は引き続き消費税非課税だが、その法的根拠が「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」に変わる。これは金融商品取引法改正により暗号資産が金融商品として位置づけられることに伴う整理である。
課税売上割合への5%算入
有価証券の譲渡と同様の扱いとなり、暗号資産の譲渡対価の5%相当額が課税売上割合の分母に算入されることになる。現行制度では全額不算入であるため、改正後は暗号資産を大量に売買する事業者の課税売上割合が低下する可能性がある。
貸付けの非課税化
現行制度では課税対象とされている暗号資産の貸付け利用料が、非課税となる。レンディング事業を行う法人にとっては、消費税の課税関係が変わる重要な改正である。
施行時期は金融商品取引法改正の施行日の属する年の翌年1月1日以降であり、具体的な施行年は現時点では未定である。改正の詳細は「暗号資産の消費税改正|有価証券に類するものへの変更」(公開予定)で解説する。
よくある質問(FAQ)
Q1. 暗号資産を売買したら消費税はかかるか?
かからない。暗号資産の譲渡は「支払手段に類するものの譲渡」として消費税が非課税である(消費税法第6条第1項、消費税法別表第一第二号)。ただし、取引手数料は仲介役務の対価として課税対象となる。
Q2. 暗号資産の譲渡額は課税売上割合に影響するか?
影響しない。暗号資産の譲渡に係る対価は、課税売上割合の計算上の分母(非課税売上高)に含めない(消費税法施行令第48条第2項第1号)。ただし、令和8年度税制改正により対価の5%相当額が算入される予定である。
Q3. 暗号資産のレンディングで得た利用料に消費税はかかるか?
かかる。暗号資産の貸付けによる利用料は「資産の貸付け」の対価であり、非課税取引に該当しないため消費税の課税対象である(国税庁FAQ 6-2)。令和8年度税制改正大綱により非課税化される予定である。
Q4. 会計ソフトで暗号資産の売却を仕訳する際、消費税区分は何にすべきか?
「対象外」とするのが実務上望ましい。暗号資産の譲渡額は課税売上割合に含めないため、通常の「非課税売上」で計上すると割合に影響する可能性がある。「非課税売上(課税売上割合反映なし)」の区分がある場合はそれを使う。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の法人税務を専門の税理士に相談する」をご覧ください。
関連記事・サービスページ
関連記事
- NFTの消費税|一次・二次流通の内外判定とインボイス
- 暗号資産のインボイス制度|適格請求書と仕入税額控除
- レンディングの税金|貸暗号資産の課税と利息の所得区分
- 暗号資産の消費税改正|有価証券に類するものへの変更
専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 消費税法第2条第1項第8号(資産の譲渡等の定義)
- 消費税法第4条第1項(課税の対象)
- 消費税法第6条第1項(非課税)
- 消費税法第30条第6項(課税売上割合の計算)
- 消費税法別表第一第二号(非課税取引の範囲)
- 消費税法施行令第9条第4項(支払手段に類するものの範囲)
- 消費税法施行令第48条第2項第1号(課税売上割合の計算から除外する非課税売上)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」6-1、6-2
