NFTの売却は一次流通・二次流通ともに消費税の課税対象となる。ただし、取引の性質により内外判定の基準が異なる。
- 理由① 一次流通(クリエイターが初めて販売)は「電気通信利用役務の提供」に該当し、購入者の住所地で内外判定される。国内の購入者に販売すれば国内取引として消費税が課される。
- 理由② 二次流通(転売)は「利用権の譲渡」に該当し、譲渡者の事務所等の所在地で内外判定される。一次流通とは判定基準が逆転するため、同じNFTでも流通段階で課税関係が変わる。
- 条件 NFTは紐づけられる権利が何かによって性質が変わる。本記事での結論はデジタルアートを紐づけたものを前提としているので、すべてのNFTが必ずしも消費税の課税対象となるわけではない。
消費税法第4条第3項第1号・第3号 / 国税庁NFT FAQ 問11・問12
この記事でわかること
- NFTの一次流通と二次流通で消費税の内外判定基準がどう異なるか
- 一次流通(NFTクリエイター)の消費税納税額の計算例
- 二次流通(NFTトレーダー)でインボイスがない場合の納税額への影響
- NFT販売タイミングによる課税事業者判定の違い
- NFT取引者がインボイス登録すべきかの判断基準
一次流通の消費税|電気通信利用役務の提供
【結論】NFTクリエイターがデジタルアートを紐付けたNFTをマーケットプレイスで譲渡する一次流通は、著作物の利用の許諾に係る取引であり、「電気通信利用役務の提供」に該当する。内外判定は役務の提供を受ける者(購入者)の住所で行う(消費税法第2条第1項第8号の3、第4条第3項第3号、国税庁NFT FAQ 問11)。
なお、NFTには、デジタルアートを紐付けたもの(NFTアート)のほか、ゲームアイテム、会員権、ユーティリティトークンなど多様な種類がある。本記事ではまず、実務上もっとも相談の多いNFTアート(デジタルアートの閲覧に関する権利をNFT化したもの)を前提に、一次流通・二次流通それぞれの消費税の取扱いを解説する。ゲームアイテムやユーティリティトークンなど他の類型については、該当箇所で補足する。
一次流通の取引の法的性質
NFTの一次流通は、クリエイター(著作権者)が、デジタルアートの閲覧に関する権利を「設定」する取引である。所得税法上は雑所得(または事業所得)となるが、消費税法上は「電気通信利用役務の提供」として扱われる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引の性質 | 著作物の利用の許諾(権利の設定) |
| 消費税上の区分 | 電気通信利用役務の提供 |
| 内外判定基準 | 役務の提供を受ける者(購入者)の住所 |
| 購入者が日本居住者 | 国内取引 → 課税 |
| 購入者が非居住者 | 国外取引 → 不課税 |
国外事業者が一次流通を行う場合
国外事業者が日本の消費者にNFTを販売する場合、購入者の住所が日本であるため国内取引に該当する。取引相手が消費者である場合は「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは扱われず、原則として国外事業者側が申告納税を行う整理になる。
また、購入者住所の判定は、客観的かつ合理的な基準に基づいている場合には認められる旨が示されている(消費税法基本通達5-7-15の2)。
計算例:一次流通の消費税納税額
(前提)課税売上割合100%、インボイス保存要件を満たす
| 項目 | 金額(税込) |
|---|---|
| NFTの譲渡収入 | 8,800万円 |
| 二次流通のロイヤリティ報酬 | 550万円 |
| 課税仕入れに該当する必要経費 | 4,000万円 |
ステップ1:課税標準額
(8,800万円+550万円)×100/110=8,500万円
ステップ2:消費税額(売上税額)
8,500万円×10%=850万円
ステップ3:仕入税額(控除対象)
4,000万円×10/110=約363万円(3,636,364円)
ステップ4:納税額
850万円-約363万円=約487万円(4,863,636円)
二次流通の消費税|利用権の譲渡
【結論】NFTの二次流通(購入したNFTの転売)は、「利用の許諾に係る権利(利用権)」を他者に譲渡する取引であり、消費税の課税取引に該当する。内外判定は、資産の所在場所が明らかでないため、譲渡を行う者の事務所等の所在地で行う(消費税法第4条第3項第1号、消費税法施行令第6条第1項第10号、国税庁NFT FAQ 問12)。
二次流通の取引の法的性質
二次流通では、購入者がクリエイターから利用の許諾を受けた「利用権」を第三者に譲渡する。著作権そのものの譲渡ではなく、著作権法第63条第3項の利用権の譲渡という位置付けである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引の性質 | 利用の許諾に係る権利(利用権)の譲渡 |
| 消費税上の区分 | 資産の譲渡 |
| 内外判定基準 | 譲渡を行う者の事務所等の所在地 |
| 譲渡者が国内事業者 | 国内取引 → 課税 |
| 譲渡者が国外事業者 | 国外取引 → 不課税 |
一次流通と二次流通の内外判定の比較
| 比較軸 | 一次流通 | 二次流通 |
|---|---|---|
| 取引の性質 | 著作物の利用許諾(権利の設定) | 利用権の譲渡 |
| 消費税区分 | 電気通信利用役務の提供 | 資産の譲渡 |
| 内外判定基準 | 購入者の住所 | 譲渡者の事務所等 |
| 条文 | 消法4③三 | 消法4③一、消令6①十 |
この違いは実務上重要である。例えば、日本のクリエイターが海外の購入者に一次流通で販売する場合は国外取引(不課税)になり得る一方、日本のトレーダーが海外の購入者に二次流通で転売する場合は国内取引(課税)になり得る。
計算例:二次流通の消費税納税額(インボイスなしの場合)
(前提)NFT購入について適格請求書(インボイス)を保存していない
| 項目 | 金額(税込) |
|---|---|
| NFTの譲渡収入 | 8,800万円 |
| NFTの取得原価 | 3,520万円 |
| 暗号資産の譲渡収入 | 7,700万円 |
| 暗号資産の取得原価 | 4,950万円 |
| その他の課税仕入れに該当する必要経費 | 220万円 |
ステップ1:課税標準額
8,800万円×100/110=8,000万円
※暗号資産の譲渡は消費税法上「非課税」であり、課税標準に含めない。
ステップ2:消費税額(売上税額)
8,000万円×10%=800万円
ステップ3:仕入税額(控除対象)
220万円×10/110=20万円(200,000円)
※NFT取得原価3,520万円は、インボイス保存がない前提では仕入税額控除の対象外(消費税法第30条)。
ステップ4:納税額
800万円-20万円=780万円
実務上の注意点
【結論】NFT取引の消費税で最も注意すべきは、①課税事業者に該当するかの判定、②NFT販売タイミングによる課税事業者判定の違い、③暗号資産の譲渡は課税売上割合に含めないこと、の3点である(消費税法第9条、第9条の2)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
個人トレーダーは「事業者」に該当するか
消費税法上の「事業」とは、対価を得て行う資産の譲渡等を反復・継続・独立して行うことをいう。所得税法上の所得区分(事業所得か雑所得か)とは判定基準が異なる点に注意が必要である。
| 取引の態様 | 所得税の所得区分 | 消費税の「事業」該当性 |
|---|---|---|
| 単発的な転売 | 譲渡所得 | 該当しにくい |
| 営利目的で反復継続 | 雑所得(or 事業所得) | 該当しやすい |
たとえば、所得税では雑所得に分類されるNFTトレーダーであっても、継続的にNFTの売買を行っていれば、消費税法上は「事業として」行っていると判定される可能性がある。逆に、保有していたNFTを単発で転売しただけであれば「事業」に該当せず、消費税の課税対象にはならない。
なお、消費税法上の「事業」の判定は、所得税法上の所得区分とは法的に独立した判定である。NFTの二次流通は原則として譲渡所得に区分されるが、営利目的で反復継続して売買を行っている場合は雑所得または事業所得に区分される(国税庁NFT FAQ 問4)。所得税で雑所得・事業所得に該当するほどの反復継続性がある場合は、消費税法上も「事業として」行っていると判定される可能性が高い。
課税事業者の判定基準
消費税の納税義務が生じるのは課税事業者に該当する場合のみである。判定基準は以下の3つである。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 基準A | 前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円超 |
| 基準B | 特定期間(個人は前年1月〜6月)の課税売上高が1,000万円超 |
| 基準C | 消費税課税事業者選択届出書を提出している |
前々事業年度・前事業年度の課税売上高は、課税事業者は税抜、免税事業者は税込で判定する点に留意する。
販売タイミングによる課税事業者判定の違い
毎年1,000万円超の売上を維持していない場合、NFT販売が上半期(1〜6月)か下半期(7〜12月)かで、翌年の課税事業者該当が変わることがある(特定期間判定)。
暗号資産の譲渡と課税売上割合
NFT取引とインボイス登録の要否
【結論】暗号資産の売買のみを行う事業者はインボイス登録の必要性は低い。NFTトレーダーもBtoC取引が多く相手方の特定が困難でインボイス発行機会が限定されるため、登録の必要性は低い傾向にある。一方、NFTクリエイターはBtoB取引の有無、課税売上1,000万円超の見込み、NFT以外の事業との兼ね合いを総合的に検討する必要がある(消費税法第30条、第57条の2〜第57条の4)。
インボイス制度の概要(国税庁タックスアンサー No.6498)も参照。
よくある質問(FAQ)
Q1. NFTの売買に消費税はかかりますか?
NFTの譲渡は一次流通・二次流通ともに消費税の課税取引に該当する。(国税庁NFT FAQ 問11・問12)。
Q2. 一次流通と二次流通で消費税の内外判定基準はどう違いますか?
一次流通は購入者の住所、二次流通は譲渡者の事務所等の所在地で判定する。一次流通は「電気通信利用役務の提供」(消費税法第4条第3項第3号)、二次流通は「利用権の譲渡」(消費税法第4条第3項第1号、消費税法施行令第6条第1項第10号)という整理である。
Q3. NFTの仕入れにインボイスがない場合、仕入税額控除は受けられますか?
原則として受けられない。仕入税額控除は一定事項の記載された帳簿と適格請求書等の保存が要件(消費税法第30条)である。
Q4. NFTトレーダーはインボイス登録すべきですか?
必要性は低い傾向にある。ただし、BtoB取引が一定割合ある場合や、課税売上が継続して大きい場合は、仕入税額控除・取引先要請・事務負担を比較して判断する。
Q5. NFTの販売を上半期と下半期で変えると消費税に影響しますか?
影響する。特定期間(個人は前年1月〜6月)の課税売上高が1,000万円超だと翌年は課税事業者となる(消費税法第9条の2)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
関連記事・サービスページ
関連記事
- NFTの税金ガイド|一次流通・二次流通の課税の違い
- NFTクリエイターの確定申告|一次流通の所得計算と消費税
- NFTの二次流通(転売)の税金|譲渡所得と特別控除
- 暗号資産取引の消費税|非課税の範囲と課税売上割合
- 暗号資産のインボイス制度|適格請求書と仕入税額控除
専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 消費税法第2条第1項第8号の3(電気通信利用役務の提供)
- 消費税法第4条第3項第1号(内外判定:資産の譲渡等)
- 消費税法第4条第3項第3号(内外判定:電気通信利用役務の提供)
- 消費税法第9条(小規模事業者の納税義務の免除)
- 消費税法第30条(仕入税額控除)
- 消費税法第57条の2〜第57条の4(適格請求書発行事業者)
- 消費税法施行令第6条第1項第10号(所在場所不明資産の内外判定)
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問11、問12
