NFTクリエイターの一次流通による所得は原則として雑所得(又は事業所得)に区分される。転売者の譲渡所得とは異なり、特別控除・2分の1軽減は適用されない。
- 理由① 一次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」に該当し、資産の譲渡ではなく権利の新規設定として扱われる。そのため譲渡所得ではなく雑所得(又は事業所得)に区分され、所得区分による税務処理が二次流通とまったく異なる。
- 理由② NFTの売上原価にデジタルアートの制作費(イラスト制作時間・ソフト利用料等)は含まれない。制作費は必要経費として別途計上するが、売上原価に含めると所得計算が誤る。収入金額は受け取った暗号資産の受取時の時価で計上する。
- 条件 課税売上高が1,000万円を超えると消費税の課税事業者となる。NFTの一次流通は「役務の提供」として消費税の課税対象であり、海外マーケットプレイスでの販売は国内外の判定が追加論点となる。暗号資産の譲渡(非課税)とは消費税の取扱いが根本的に異なる。
国税庁NFT FAQ 問1 / 所得税法第35条・第36条
この記事でわかること
- NFTの一次流通(クリエイターによる販売)の所得区分と計算方法
- 売上原価と必要経費の範囲(デジタルアート制作費の取扱い)
- ロイヤリティ収入(二次流通の分配金)の課税タイミング
- 消費税の課税事業者となるタイミングと販売時期による差
- NFTクリエイターにおけるインボイス登録の要否
NFT一次流通の所得区分と課税関係
【結論】NFTクリエイターが自らの作品をNFT化して第三者に譲渡した場合、その取引は「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」に該当し、所得は原則として雑所得(又は事業所得)に区分される。二次流通(転売)が「権利の譲渡」で譲渡所得に区分されるのとは異なる(NFT FAQ問1、所得税法第27条、第35条、第36条)。
NFTの一次流通と二次流通では、課税上の取扱いが根本的に異なる。
| 区分 | 取引内容 | 法的性質 | 所得区分 |
|---|---|---|---|
| 一次流通 | クリエイターがNFTを組成・販売 | 権利の設定 | 雑所得(又は事業所得) |
| 二次流通 | 購入者がNFTを転売 | 権利の譲渡 | 譲渡所得(原則) |
一次流通が「権利の設定」とされるのは、クリエイターがデジタルアートの閲覧に関する権利を新たに生み出して付与する行為だからである。これに対し、二次流通は既存の権利を他者に移転する「権利の譲渡」に該当する。
なお、雑所得の損失が生じた場合、他の所得との損益通算はできない(所得税法第69条第1項)。雑所得内での通算は可能である。
関係法令:所得税法第27条、第35条、第36条、第69条第1項 / NFT FAQ問1
NFT一次流通の所得計算
【結論】一次流通の所得金額は「NFTの譲渡収入+ロイヤリティ収入-NFTに係る必要経費」で計算する。NFTの売上原価はNFTを組成するために要した費用であり、デジタルアートの制作費は含まれない(NFT FAQ問1)。
売上原価と必要経費の区別
NFTに係る必要経費は、以下の2つに区分される。
| 区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 売上原価 | NFTを組成するために要した費用 | NFTのミント費用、コントラクトデプロイ費用 |
| 販売費及び一般管理費 | NFTの譲渡収入を得るための経費 | 広告宣伝費、通信費、旅費交通費、送金手数料等 |
NFT FAQ問1は、NFTの売上原価にデジタルアートの制作費は含まれないとしている。デジタルアートの制作費は、NFTの組成とは別の活動に係る費用であるという整理である。この点は実務上議論のあるところではあるが、NFT FAQ問1の取扱いに従う場合、制作費は売上原価ではなく、事業所得の必要経費として別途計上する必要がある。
計算例
個人事業主の甲が以下の取引を行った場合の所得金額を計算する。
前提条件:
- 2023年3月1日にデジタルアートに係るNFTコレクション1,000個をミント
- 1個あたり0.5ETH(1ETH=22万円)で700個を販売
- 100個は財産的価値を有する資産と交換できないトークンと交換(0.5ETHの価値で収入計上)
- 50個は知人に贈与、150個は年末時点で保有
- ロイヤリティ報酬:550万円(二次流通発生時の時価で日本円換算済み)
- NFTに係る必要経費(外注費を除く):1,520万円
- デジタルアート制作の外注費:2,980万円(NFTの売上原価には含めない)
- NFT組成費用:0円(この事例では存在しないものとする)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| NFT譲渡収入 | 22万円 × 0.5ETH ×(700個+100個) | 8,800万円 |
| ロイヤリティ収入 | — | 550万円 |
| 収入金額 合計 | 8,800万円+550万円 | 9,350万円 |
| NFTに係る必要経費 | 販売費及び一般管理費 | 1,520万円 |
| 所得金額 | 9,350万円-1,520万円 | 7,830万円 |
計算上の注意点
贈与した50個について:知人への無償贈与は、贈与者側に経済的価値の取得がないため、所得税の課税関係は原則として生じない(NFT FAQ問2、所得税法第36条)。ただし、贈与税が課される場合があるため、税理士に確認が必要である。
未販売の150個について:NFT組成費用が0円の場合、販売しなかった150個は資産計上しない。組成費用が発生している場合(例:1,000円)には、以下のとおり資産計上する。
1,000円 ÷ 1,000個 × 150個 = 150円
トークンの時価算定困難な場合:マーケットプレイス内で通貨として流通するトークンで売上を受け取ったが、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できない場合、譲渡したNFTの市場価額(市場価額がない場合は売上原価等)をトークンの時価として差し支えない(NFT FAQ問1)。
付き合いで購入した他のクリエイターのNFT:資産計上が必要であり、売却等するまで経費には計上できない。
関係法令:所得税法第35条、第36条、第37条 / NFT FAQ問1、問2
ロイヤリティ収入の課税
【結論】二次流通が発生した際にNFTクリエイターが受け取るロイヤリティは、受取時点の時価が全額利益として計上される。譲渡原価は0円であるため、受取時の時価がそのまま所得金額の基礎となる(所得税法第36条)。
ロイヤリティ報酬は、二次流通が発生するたびにスマートコントラクトにより自動的にクリエイターのウォレットに分配される。暗号資産で受け取るため、受取時点のトークンの時価で日本円に換算して収入金額に算入する。
ロイヤリティ報酬は消費税の課税対象取引としても取り扱われるため、消費税の課税事業者に該当する場合は、消費税の計算にも含める必要がある。
関係法令:所得税法第36条
NFTクリエイターと消費税
【結論】NFTクリエイターが国内の消費者に対してNFTを有償で譲渡した場合、電気通信利用役務の提供として消費税の課税対象となる。前々年の課税売上高が1,000万円を超えるか、前年1月〜6月の課税売上高が1,000万円を超えると翌年から課税事業者となる(消費税法第9条、第9条の2、NFT FAQ問11)。
課税事業者の判定基準
NFTクリエイターが消費税の課税事業者となるかは、以下の3つの基準で判定する。
| 基準 | 条件 | 結果 |
|---|---|---|
| A | 前々年の課税売上高が1,000万円超 | 課税事業者 |
| B | 前年1月〜6月の課税売上高が1,000万円超 | 課税事業者 |
| C | 消費税課税事業者選択届出書を提出済み | 課税事業者 |
販売タイミングによる免税期間の差
基準Bの判定が重要である。前年の上半期(1月〜6月)に大きな売上があるかどうかで、翌年の課税事業者判定が分かれる。
具体例:2021年開業、2021年の売上500万円の甲と乙の場合
| 甲 | 乙 | |
|---|---|---|
| 2022年の大型販売 | 6月30日に4,400万円 | 7月1日に4,400万円 |
| 2023年の課税判定 | 基準B:1〜6月の課税売上高1,000万円超→課税事業者 | 基準B:1〜6月の課税売上高0円→免税事業者 |
甲は2023年に課税事業者となるが、乙はたった1日の差で免税事業者のままである。2023年にNFT売上880万円があり簡易課税を適用した場合、甲は乙より約40万円多く納税することになる。
毎年安定的に1,000万円超の売上があるわけではないNFTクリエイターは、NFTの販売を下半期に行うことで免税期間を延ばせる場合がある。
消費税の計算例
前述の事例のケースで、甲が課税事業者の場合の消費税額を計算する。
前提:課税売上割合100%、中間納付なし、NFT購入者は全員日本の居住者
(8,800万円+550万円)×100÷110
8,500万円×10%
4,400万円×10÷110
850万円-400万円
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 課税標準額 | (8,800万円+550万円)×100÷110 | 8,500万円 |
| 消費税額 | 8,500万円×10% | 850万円 |
| 仕入れに係る消費税額 | 4,400万円×10÷110 | 400万円 |
| 納税額 | 850万円-400万円 | 450万円 |
インボイス登録の要否
NFTクリエイターのインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)としての登録については、以下の点を考慮する。
- 暗号資産の売買のみを行う事業者はインボイスの有無が基本的に関係ないため、登録の必要性は低い
- NFTトレーダーはBtoC取引が多く、かつ相手方の氏名・住所等が不明であることが多いため、インボイスを発行する機会が事実上少なく、登録の必要性は低い
- NFTクリエイターはNFT以外の取引(イラスト受注等)も含めて、BtoB取引の有無を考慮して登録の要否を判断する
関係法令:消費税法第2条第1項第8号の3、第4条第3項第3号、第9条、第9条の2 / NFT FAQ問11
実務上の注意点
【結論】NFTクリエイターの確定申告で最も注意すべきは、①ガス代の経費処理、②年末の保有資産の記録、③同人グッズ等の棚卸資産の管理の3点である。税務調査では特に期末の保有状況と棚卸資産が重点的に確認される。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの損益計算・確定申告を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
ガス代(トランザクション手数料)の処理
NFTのミントや販売時に支払うガス代は経費計上が可能である。支払時のトークンの時価を経費として計上する。ただし、ガス代を支払ったトークン(ETH等)の時価と取得原価の差額は、別途損益として計上する必要がある。
年末時点のウォレットのスクリーンショット
暗号資産の税務調査では、期末(12月31日時点)の暗号資産保有状況が必ず確認される。年末時点のウォレットのスクリーンショットを取得・保存しておくことが重要である。
同人グッズの棚卸管理
NFTクリエイターで同人活動を行っている場合、年末時点の同人誌やアクリルキーホルダー等の自作グッズの数量・購入数量・1個あたりの購入単価を記録しておく必要がある。棚卸資産の管理は税務調査で必ず確認されるポイントであり、調査官も経験が豊富な分野であるため、記録が不十分だと確実に指摘される。
よくある質問(FAQ)
Q1. NFTクリエイターの所得は事業所得にできますか?
雑所得又は事業所得に区分される。NFT FAQ問1は一次流通の所得を「雑所得(又は事業所得)」としている。収入金額300万円超かつ帳簿書類を保存している場合は事業所得に該当する可能性がある(国税庁FAQ2-2)。事業所得なら青色申告特別控除の適用が可能である。
Q2. デジタルアートの制作費はNFTの売上原価に含まれますか?
含まれない。NFT FAQ問1は、NFTの売上原価をNFTを組成するために要した費用と定義しており、デジタルアートの制作費は含まないとしている。制作費は事業所得の必要経費として別途計上する。
Q3. 二次流通のロイヤリティにも消費税はかかりますか?
課税対象である。NFT FAQ問1の取引がNFTの一次流通として消費税の課税対象となるのと同様に、二次流通で発生するロイヤリティも原則として消費税の課税対象取引として取り扱われる(消費税法第2条第1項第8号の3)。
Q4. NFTクリエイターは法人化したほうがよいですか?
慎重な判断が必要である。所得税の累進税率が法人税率を超えるなら法人化のメリットはあるが、暗号資産・NFTは時価の変動が激しく将来の利益予測が困難である。法人設立のコストや維持費を考慮すると、安定的に高い利益が見込めない場合は時期尚早となる。
Q5. NFTを知人に無償であげた場合、所得税はかかりますか?
かからない。NFTを無償で贈与した場合、贈与者には経済的価値の取得がないため、所得税の課税関係は生じない(NFT FAQ問2、所得税法第36条)。ただし、受贈者に贈与税が課される場合がある。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの損益計算・確定申告を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
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関係法令
- 所得税法第27条
- 所得税法第35条
- 所得税法第36条
- 所得税法第37条
- 所得税法第69条第1項
- 消費税法第2条第1項第8号の3
- 消費税法第4条第3項第3号
- 消費税法第9条
- 消費税法第9条の2
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問1、問2、問3、問11
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-2
