NFTの転売益は原則として譲渡所得(総合課税)に区分され、最大50万円の特別控除と長期保有の2分の1軽減が適用される。暗号資産の雑所得より税制上有利になるケースが多い。
- 理由① NFTの転売は「デジタルアートの閲覧に関する権利」の譲渡として譲渡所得に区分される。譲渡所得には年間50万円の特別控除があり、さらに5年超保有の長期譲渡所得は課税対象が2分の1に軽減される。暗号資産(雑所得)にはない優遇措置である。
- 理由② 一次流通(クリエイターが自ら組成・販売)と二次流通(転売)では所得区分が異なる。一次流通は事業所得または雑所得だが、二次流通は譲渡所得となるため、同じNFTの売却でも立場(クリエイター vs 転売者)で税務処理がまったく変わる。
- 条件 営利目的で継続的にNFTの転売を行っている場合は、譲渡所得ではなく事業所得または雑所得に区分される。特別控除・2分の1軽減の適用を受けられなくなるため、取引頻度と営利目的の有無が所得区分の分かれ目となる。
所得税法第33条 / 国税庁NFT FAQ 問4
この記事でわかること
- NFT二次流通の所得区分(譲渡所得・事業所得・雑所得)の判定基準
- 譲渡所得の計算方法と特別控除50万円の適用ルール
- 短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いと税負担の差
- NFTを暗号資産(仮想通貨)で購入した場合の取得価額の算定
- NFT同士を交換した場合の課税関係
NFT二次流通の所得区分
【結論】NFTの二次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利」の譲渡に該当し、原則として譲渡所得に区分される(国税庁NFT FAQ問4)。棚卸資産もしくは準棚卸資産の譲渡、または営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡に該当する場合は、事業所得または雑所得に区分される。
NFTの課税における最重要ポイントは、一次流通と二次流通で所得区分が異なることです。
| 取引類型 | 法的性質 | 原則的な所得区分 |
|---|---|---|
| 一次流通(クリエイターが組成→販売) | 権利の設定 | 雑所得(又は事業所得) |
| 二次流通(購入→転売) | 権利の譲渡 | 譲渡所得 |
一次流通は権利を新たに「設定」する行為であるのに対し、二次流通は既存の権利を「譲渡」する行為です。この違いにより、二次流通では譲渡所得の特別控除(最大50万円)や長期保有の2分の1課税といった優遇措置が適用される可能性があります。
ただし、次のいずれかに該当する場合は譲渡所得ではなく、事業所得または雑所得に区分されます。
- 棚卸資産もしくは準棚卸資産の譲渡に該当する場合
- 営利を目的として継続的にNFTの転売を行っている場合(NFTトレーダー等)
関係法令:所得税法第27条、第33条、第35条、第36条、第37条、第38条、第69条
譲渡所得の計算方法と特別控除
【結論】NFTの譲渡所得は「転売収入-取得費-譲渡費用-特別控除額(最大50万円)」で計算する(所得税法第33条第3項・第4項)。転売収入を暗号資産で受け取った場合は受取時点のトークンの時価が収入金額となる。
基本算式
譲渡所得の金額 = NFTの転売収入 − NFTの取得費 − NFTの譲渡費用 − 特別控除額
各項目の定義は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 転売収入 | 売却価額。暗号資産で受け取った場合はそのトークンの時価 |
| 取得費 | NFTの購入代価+購入時の手数料(ガス代等)の合計額 |
| 譲渡費用 | 売却時の手数料(ガス代等) |
| 特別控除額 | 最大50万円。譲渡益が50万円未満の場合はその金額まで |
計算例①:基本的なNFT転売
2022年2月1日にNFTを0.05ETH(時価:1ETH=30万円)で購入し、2022年4月1日にそのNFTを0.1ETH(時価:1ETH=40万円)で売却した場合(手数料省略)。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 40万円 × 0.1ETH | 4万円 |
| 取得価額 | 30万円 × 0.05ETH | 1.5万円 |
| 所得金額 | 4万円 − 1.5万円 | 2.5万円 |
この場合、譲渡益2.5万円は特別控除額50万円の範囲内であるため、他に総合課税の譲渡所得がなければ課税所得はゼロとなります。
なお、法人が同じ取引を行った場合、利益の額は同じ2.5万円ですが、個人のような特別控除や長期保有の2分の1課税といった優遇措置はなく、利益の全額が法人税の課税対象となります。
転売収入を暗号資産で受け取った場合の注意点
NFTの転売収入をマーケットプレイス内の通貨として流通するトークンで受け取った場合、そのトークンの時価が転売収入となります。ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由で時価の算定が困難な場合は、転売したNFTの市場価額(市場価額がない場合は取得費等)をそのトークンの時価として取り扱って差し支えありません。
損失が生じた場合の取扱い
譲渡所得の金額が赤字となった場合(損失が生じた場合)、原則として他の所得との損益通算が可能です。ただし、そのNFTが主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有していたもの(生活に通常必要でない資産)である場合は、他の所得との損益通算はできません(所得税法第69条、所得税法施行令第178条)。総合譲渡所得内での通算は可能です。
関係法令:所得税法第33条第3項・第4項・第5項、第38条、第69条、所得税法施行令第178条
短期譲渡所得と長期譲渡所得
【結論】NFTの所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年超の場合は長期譲渡所得となり、長期譲渡所得は特別控除後の残額の2分の1のみが課税対象となる(所得税法第33条第3項・第5項)。短期と長期の両方がある場合、特別控除はまず短期から控除する。
| 区分 | 所有期間 | 課税対象金額 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 譲渡益 − 特別控除額(全額が課税対象) |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | (譲渡益 − 特別控除額)× 1/2 |
短期と長期の両方がある年は、特別控除額(最大50万円)をまず短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残額があれば長期譲渡所得の譲渡益から控除します(所得税法第33条第5項)。
計算例②:短期譲渡所得のみの場合
2022年10月1日に2つのNFTをそれぞれ1,000MATIC(時価:1MATIC=110円)で購入。2023年2月1日に1つ目を1ETH(時価:1ETH=210,000円)で売却、2023年3月1日に2つ目を2ETH(時価:1ETH=220,000円)で売却。売却時手数料は各1万円。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 210,000円×1ETH + 220,000円×2ETH | 65万円 |
| 取得価額 | 110円×1,000MATIC × 2個 | 22万円 |
| 譲渡費用 | 1万円 × 2回 | 2万円 |
| 譲渡益 | 65万円 − 22万円 − 2万円 | 41万円 |
| 特別控除額 | 41万円(譲渡益が50万円未満のためその金額まで) | 41万円 |
| 所得金額 | 0円 |
いずれのNFTも所有期間が5年以下のため短期譲渡所得ですが、譲渡益41万円が特別控除の範囲内に収まるため、課税所得はゼロです。
計算例③:短期と長期が混在する場合
2028年2月1日にNFTを1ETH(時価:1ETH=210,000円)で売却。このNFTは2027年2月1日に1,000MATIC(時価:1MATIC=110円)で購入(所有期間1年→短期)。2028年2月2日にNFTを3ETH(時価:1ETH=210,000円)で売却。このNFTは2022年2月1日に1,000MATIC(時価:1MATIC=110円)で購入(所有期間6年→長期)。売却時手数料は各1万円。
短期譲渡所得の計算:
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 210,000円 × 1ETH | 21万円 |
| 取得価額 | 110円 × 1,000MATIC | 11万円 |
| 譲渡費用 | 1万円 | |
| 譲渡益 | 21万円 − 11万円 − 1万円 | 9万円 |
| 特別控除額 | 9万円(譲渡益の全額を控除) | 9万円 |
| 短期の所得金額 | 0円 |
長期譲渡所得の計算:
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 210,000円 × 3ETH | 63万円 |
| 取得価額 | 110円 × 1,000MATIC | 11万円 |
| 譲渡費用 | 1万円 | |
| 譲渡益 | 63万円 − 11万円 − 1万円 | 51万円 |
| 特別控除額 | 50万円 − 9万円(短期で使用済み分を差引) | 41万円 |
| 控除後金額 | 51万円 − 41万円 | 10万円 |
| 長期の所得金額(課税対象) | 10万円 × 1/2 | 5万円 |
総合課税の対象金額: 短期0円 + 長期5万円 = 5万円
このように、長期保有(5年超)の場合は課税対象が半額になるため、税負担が大幅に軽減されます。
関係法令:所得税法第33条第3項・第5項
NFTの取得価額の算定
【結論】NFTを暗号資産で購入した場合の取得価額は「支払った暗号資産の時価+購入時の手数料(ガス代等)」の合計額であり、NFTの代替性のない特性上、個別法で管理する(国税庁NFT FAQ問4、共著書籍事例43)。
NFTは暗号資産と異なり代替性がなく唯一無二の存在であるため、取得価額の算定に総平均法や移動平均法ではなく個別法を用いるのが合理的です。仮に棚卸資産に該当するNFTとして総平均法を選択しても、種類等を同じくするものがないため、結果的に個別に取得価額を算定することになります。
計算例④:NFTを暗号資産で購入した場合の取得価額
2022年2月1日にNFTを0.05ETH(時価:1ETH=30万円)で購入した場合(手数料省略)。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 取得時点の時価 | 30万円 × 0.05ETH | 1.5万円 |
| NFTの取得価額 | 1.5万円 |
NFTを購入するために暗号資産を支払うこと自体が課税イベントとなる点に注意が必要です。暗号資産を手放す時点で、その暗号資産に含み損益がある場合は譲渡損益が発生します。
また、NFTの購入代金は即時に必要経費に算入できるケースは少なく、NFTを売却した際の譲渡原価(取得費)として必要経費に算入することになるケースが多いです。購入代金や手数料など取得に要した支出金額は取得価額に算入されます。
関係法令:所得税法第36条、第38条
NFT同士の交換
【結論】NFT同士を交換した場合、実務上は双方の時価が等価であることを前提として処理し、どちらかの時価が判明していればその時価を双方の収入金額とする。時価がゼロ円の場合は収入金額もゼロとなる。
計算例⑤:NFT同士を交換した場合
甲は2021年12月1日にエアドロップで無償取得したNFTアートAを保有。乙は2022年2月1日に0.05ETH(時価:1ETH=30万円)で取得したNFTアートBを保有。2022年5月1日に甲のAと乙のBを交換(手数料省略)。
甲の所得金額(NFTアートAを手放した側):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | NFTアートBの時価 |
| 取得価額 | 0円(エアドロップによる無償取得) |
| 所得金額 | NFTアートBの時価 − 0円 |
乙の所得金額(NFTアートBを手放した側):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | NFTアートAの時価 |
| 取得価額 | 30万円 × 0.05ETH = 1.5万円 |
| 所得金額 | NFTアートAの時価 − 1.5万円 |
実務上、NFTアートAとNFTアートBの時価は等価である前提で処理されることが多く、どちらかの時価が判明していればその時価を双方の収入金額とします。便宜上、どちらかのNFTの取得価額を用いる場合もあります。時価がゼロ円の場合、甲の所得はゼロ、乙は1.5万円の損失が生じます。
関係法令:所得税法第33条、第36条
実務上の注意点
【結論】NFTの二次流通で最も注意すべきは①暗号資産での購入時にも課税イベントが発生すること、②事業所得として処理する場合は未売却NFTの取得価額を必要経費に算入できないこと、③消費税の課税事業者は仕入税額控除にインボイスが必要なことの3点である。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税金を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
① 暗号資産でNFTを購入した時点の課税
NFTを暗号資産で購入した場合、暗号資産を「手放す」行為に該当するため、保有していた暗号資産の含み損益が実現します。NFTの売却時だけでなく、購入時にも課税関係が発生する点を見落としがちです。
② NFTトレーダーの未売却在庫
営利目的で継続的にNFTの転売を行い、事業所得として処理する場合、未売却のNFTに係る取得価額は、原則として売却するまで売上原価等として必要経費に算入できません。年末に在庫として残っているNFTの購入費用はその年の経費にはなりません。
③ 消費税のインボイス
消費税の課税事業者がNFTを転売する場合、NFTの購入先から適格請求書(インボイス)を受け取って保存していなければ、NFTの取得原価を仕入税額控除に含めることはできません。NFTマーケットプレイスでの取引ではインボイスの保存が困難なケースが多く、仕入税額控除が制限される実務上の課題があります。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税金を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. NFTを転売して利益が出ても、50万円以下なら確定申告は不要ですか?
不要となる場合がある。譲渡所得(総合課税)に該当する場合、特別控除50万円を控除した結果、所得金額がゼロになれば、そのNFT転売に係る所得について確定申告は不要です(所得税法第33条第3項・第4項)。ただし、他の所得(給与所得等)の状況により確定申告義務が生じる場合は、NFT転売の所得もあわせて申告する必要があります。
Q2. NFTを5年以上保有して売れば税金が半分になるのですか?
課税対象が半分になる。所有期間が5年を超えて売却したNFTの譲渡所得は長期譲渡所得に該当し、特別控除後の金額の2分の1のみが総合課税の対象となります(所得税法第33条第3項・第5項)。税率自体が半分になるわけではなく、課税される所得金額が半分になる仕組みです。
Q3. NFTの転売は「譲渡所得」と「雑所得」のどちらになりますか?
原則は譲渡所得。NFTの二次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利」の譲渡に該当し、譲渡所得に区分されます(国税庁NFT FAQ問4)。ただし、棚卸資産の譲渡に該当する場合や、営利を目的として継続的に転売を行っている場合は事業所得または雑所得となります。
Q4. NFTを暗号資産で購入したとき、購入時点で税金はかかりますか?
かかる。NFTを暗号資産で購入した場合、暗号資産を譲渡してNFTを取得したことになるため、手放した暗号資産の含み損益が実現し課税対象となります(所得税法第36条第1項)。NFTの購入と暗号資産の譲渡という2つの取引が同時に発生している点に注意が必要です。
Q5. NFT同士を交換した場合も税金がかかりますか?
かかる。NFT同士の交換も資産の譲渡に該当し、交換により取得したNFTの時価が収入金額となります(所得税法第33条、第36条)。実務上は双方の時価が等価である前提で処理されることが多く、いずれかの時価が判明していればその金額を双方の収入金額とします。時価が不明でゼロ円と判断される場合は所得もゼロとなります。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税金を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
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専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第27条(事業所得)
- 所得税法第33条第3項・第4項・第5項(譲渡所得・特別控除・長期2分の1)
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第36条第1項(収入金額)
- 所得税法第37条第1項(必要経費)
- 所得税法第38条(譲渡所得の取得費)
- 所得税法第69条(損益通算)
- 所得税法施行令第178条(生活に通常必要でない資産)
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問4(令和5年1月)
