暗号資産の経費にできるもの一覧|必要経費の範囲と具体例

結論

暗号資産の必要経費に算入できる範囲は、所得区分(事業所得・業務に係る雑所得・その他雑所得)によって大きく異なる。同じ支出でも区分次第で経費にできるかどうかの結論が変わる。

  • 理由① 全区分共通で認められるのは譲渡原価と売却時の手数料のみ。回線利用料・PC購入費・計算ソフト利用料等は事業所得・業務に係る雑所得であれば算入可能だが、その他雑所得では「収入を得るために直接要した費用」に限定され、大幅に範囲が狭まる。
  • 理由② その他雑所得では税理士報酬・セミナー費用・情報収集のためのサブスク費用なども経費算入が否認されるリスクがある。経費の幅を広げるには、収入金額300万円超かつ帳簿保存による「業務に係る雑所得」以上への区分が前提となる。
  • 条件 経費算入が認められる場合でも、暗号資産取引に「直接必要な部分」に限る家事按分が必要。自宅兼用のPC・回線費用は使用割合に応じた按分が求められ、100%算入は原則として認められない。

所得税法第37条第1項 / 国税庁FAQ 2-3

この記事でわかること

  • 暗号資産の必要経費として認められる支出の具体例
  • 所得区分(事業所得・業務雑所得・その他雑所得)による経費範囲の違い
  • 回線利用料やパソコン等の按分計算の考え方
  • NFTクリエイターの必要経費の特殊論点
  • 令和4年FAQ改訂で追加された「直接」要件の意味
目次

必要経費の法的根拠と2つの区分

【結論】所得税法第37条第1項は、必要経費に算入すべき金額を①売上原価その他直接要した費用の額(直接費用)と②販売費・一般管理費その他業務について生じた費用の額(間接費用)の2つに区分している。「その他雑所得」の場合は②が認められず、経費の範囲が大幅に狭くなる(所得税法第37条第1項)。

所得税法第37条第1項は、雑所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき金額を次の2つであるとしている。なお、「雑所得(その他)」「雑所得(業務)」という区分は法律上の用語ではない。第37条第1項が「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」と規定していることから、この「業務」の有無によって経費計上できる範囲が異なることを示すために用いられている表現である。

区分 内容 具体例
①直接費用 総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額 暗号資産の譲渡原価、売却手数料、送金手数料
取引用パソコン代、ネット代
②間接費用 その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額 書籍代、セミナー参加費、税理士報酬、損益計算ソフト利用料

所得区分による経費範囲の違い

この2つの区分が重要になるのは、暗号資産の所得が「その他雑所得」に該当する場合である(所基通達35-1、35-2)。

所得区分 ①直接費用 ②間接費用 判定基準(国税庁FAQ 2-2)
事業所得 事業として行っている(帳簿保存+営利性等)
業務に係る雑所得 収入金額300万円超かつ帳簿保存なし等
その他雑所得 × 上記以外(多くの個人投資家が該当)

「その他雑所得」の場合、②の間接費用が経費として認められない。つまり、暗号資産の売上原価や売却時の手数料は控除できるが、税理士報酬や暗号資産の計算ソフト利用料などを経費算入できない可能性がある。

多くの個人投資家の暗号資産所得は「その他雑所得」に該当するため、この制限は実務上大きな影響を持つ。「業務に係る雑所得」と「その他雑所得」の区分基準の詳細は「業務に係る雑所得とその他雑所得|令和4年通達改正の経緯と判定基準」で解説している。

経費にできるもの・できないもの一覧

【結論】国税庁FAQ2-3は、「その他雑所得」の場合は「これがないと暗号資産の売買そのものができない経費」のみを経費計上可能とし、「業務雑所得」の場合は、暗号資産取引に関連する経費」についても経費計上可能としている(所得税法第37条第1項、国税庁FAQ 2-3)。

全所得区分で経費算入可能なもの(①直接費用)

経費項目 内容 備考
暗号資産の譲渡原価 総平均法または移動平均法で算定した原価 所得計算の根幹
売却時の手数料 取引所の取引手数料 売却に際し直接要した費用
送金手数料 取引所間・ウォレット間の送金手数料 売却のために直接必要な場合
回線利用料(取引に係る部分) インターネット・スマートフォンの利用料 暗号資産取引に係る部分を明確に区分できる場合に限る
パソコン等の購入費用(取引に係る部分) 取引専用の機器 減価償却が必要な場合あり。直接必要な部分に限る
トランザクションフィー(ガス代) DeFi取引やウォレット送金時のネットワーク手数料 取引に際し直接要した費用

事業所得・業務に係る雑所得の場合に追加で認められるもの(②間接費用)

経費項目 内容
書籍代・セミナー参加費 暗号資産やNFT取引のための学習費用
税理士報酬 確定申告の依頼費用
損益計算ソフトの利用料 クリプタクト等の損益計算ツール
筆記用具・ファイル類 取引記録の整理に使用するもの

その他雑所得の場合に経費算入が困難なもの

上記②の間接費用に該当する支出は、「その他雑所得」の場合、原則として経費算入が認められない。具体的には以下が該当する。

  • 税理士報酬
  • 損益計算ソフトの利用料
  • 書籍代・セミナー参加費
  • 取引に直接関係しない通信費

ただし、国税庁が必要経費に関して実際にどのような運営を行っていくのかは必ずしも明らかではないため、実務の動向を注視する必要がある。

按分計算と減価償却の実務

【結論】回線利用料やパソコン等を私用と兼用している場合は、使用時間や日数で合理的に按分して事業用割合のみを経費計上する。パソコン等の使用可能期間が1年以上で一定金額を超える資産は、減価償却費として耐用年数にわたり分割計上する(国税庁FAQ 2-3)。

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按分計算の考え方

暗号資産の取引専用のパソコンやネット回線であれば、その全額を必要経費として計上できる。しかし、個人的用途にも使用している場合は、使用時間や使用日数等で合理的に按分して必要経費となる部分を計上する必要がある。

例えば、月額5,000円のインターネット回線を暗号資産取引と私用で半々に使用している場合、経費算入できるのは月2,500円(年間30,000円)となる。

減価償却

パソコンなど使用可能期間が1年以上の資産は、取得価額に応じて処理方法が異なる。

取得価額 処理方法 根拠法令
10万円未満 全額を取得年の必要経費に算入 所得税法施行令第138条
10万円以上20万円未満 一括償却資産として3年間で均等償却(年1/3ずつ)が選択可 所得税法施行令第139条
30万円未満(青色申告者のみ) 少額減価償却資産の特例により全額を取得年の必要経費に算入(年間合計300万円が上限) 租税特別措置法第28条の2
上記以外 法定耐用年数に基づき減価償却(パソコンは4年) 所得税法第49条

例えば、暗号資産の取引用に18万円のパソコンを購入した場合、通常の減価償却(4年)のほか、一括償却資産として3年間で年6万円ずつ経費計上する方法を選択できる。青色申告者であれば全額を取得年に経費算入することも可能である。

注意:仮に年末にさしかかり利益を圧縮しようとして30万円以上(この場合は48万円と仮定)のパソコンを買ったとしても1ヶ月/48ヶ月分の1万円しか経費計上できないので、現実的に利益を減らしたいなら9.9万円のPCを買うのがもっとも経費計上可能という計算になる。

なお、暗号資産の所得がその他雑所得に該当する場合は青色申告ができないため、少額減価償却資産の特例は使えない。事業所得として申告している場合に限り選択可能である。一方、一括償却資産(3年均等償却)は青色申告の要件がないため、その他雑所得でも選択できる。

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NFTクリエイターの必要経費

【結論】NFTクリエイターの一次流通による所得は事業所得または業務に係る雑所得に該当する可能性が高く、会議費・家賃・グラフィックツール代等の間接費用も経費算入できる。ただしNFTの売上原価は「NFTを組成するために要した費用」であり、デジタルアートの制作費(外注費等)は含まれない(NFT FAQ)。

NFTクリエイターが一次流通でNFTを販売する場合、その所得は業務に係る雑所得や事業所得に該当する可能性が高い。この場合、前述の①直接費用に加えて②間接費用も経費算入の対象となる。

NFTクリエイター固有の経費例

経費項目 経費算入の可否 備考
液晶ペンタブレット 減価償却が必要な場合あり。按分も要検討
Adobe Illustrator等のグラフィックツール サブスクリプション費用
作品制作の参考資料 書籍・素材購入費
会議費・交際費 業務に係るもの。按分が必要な場合あり
事務所として使用している家賃 自宅兼用の場合は按分が必要
デジタルアートの制作外注費 NFTの売上原価には含まれない(NFT FAQ)。販管費としての算入も通常は困難
他のNFTクリエイターの作品購入 ×(即時経費化不可) 資産計上し、売却時に取得価額として控除

デジタルアート制作費に関する注意点

NFT FAQは、NFTクリエイターが計上できる売上原価は「そのNFTを組成するために要した費用の額」であるとし、「デジタルアートの制作費は含まれない」としている。NFTプロジェクト等でNFTに紐付けるデジタルアートの制作を外注した場合の外注費等は、課税実務上、NFTの売上原価ではない。また、デジタルアートの制作費を販管費等の費用として経費算入することも通常は認められない。

付き合いでのNFT購入は即時経費にならない

「知り合いのNFTクリエイターの作品を付き合いで購入した場合、すぐに経費にできるか」という質問は実務上多い。これについては、支出時にただちに経費計上することは認められず、まず資産計上する。その後、そのNFTを売却した際に初めて取得価額相当額を必要経費として計上するのが原則である。

よくある質問(FAQ)

Q1. 暗号資産を保有しているだけで経費は発生しますか?

保有しているだけでは経費は発生しない。必要経費は「総収入金額を得るため直接に要した費用」または「業務について生じた費用」であり(所得税法第37条第1項)、保有のみでは収入が発生しないため経費計上の対象にならない。

Q2. DeFiのトランザクションフィー(ガス代)は経費になりますか?

なる。トランザクションフィーは取引に際し直接要した費用に該当するため、必要経費に算入できる(所得税法第37条第1項)。スワップ・ステーキング・LP預入等のオンチェーン取引で発生したガス代が対象となる。NFTのガス代の計上方法は「NFTのガス代は経費になる?」で詳しく解説している。

Q3. 暗号資産の利益が20万円以下なら経費計算は不要ですか?

不要ではない。給与所得者の20万円以下の確定申告不要制度は所得税に限った規定であり、住民税の申告は必要である。また、経費を計上することで所得が20万円以下になるケースもあるため、経費計算は常に行うべきである。

Q4. 1日の半分以上をNFT作成に費やしているのですが家事按分割合を50%にすることは可能ですか?

可能である。 按分割合は実態に基づいて合理的に算定すればよく、50%という上限は法令上存在しない。ただし、事業所得または業務に係る雑所得に該当する場合に限る。その他雑所得の場合は家賃等の按分経費は認められない可能性がある(所得税法第37条第1項、国税庁FAQ 2-3)。50%以上の按分割合を主張する場合は、作業時間の記録(日報・タイムログ等)を残しておくことが重要である。

Q5. 税理士への報酬は必ず経費にできますか?

所得区分による。事業所得または業務に係る雑所得であれば、税理士報酬は業務について生じた費用(②間接費用)として経費算入できる可能性がある。しかし「その他雑所得」の場合は、直接費用に該当しないため経費算入が困難である(所得税法第37条第1項)。

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専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第37条第1項(必要経費)、第35条(雑所得)、第27条(事業所得)、第120条第6項(収支内訳書の添付義務)、第232条第2項(現金預金取引等関係書類の保存義務)
  • 所得税法施行令第96条
  • 所基通達35-1、35-2
  • 国税庁FAQ 2-3
  • NFT FAQ
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