ステーブルコインの税金|JPYC・USDCの課税関係と電子決済手段の税務

結論

電子決済手段(ステーブルコイン)は暗号資産とは法的に区分され、法人の期末時価評価の対象外。含み益課税が発生しない点が暗号資産との最大の違いである。

  • 理由① 電子決済手段は発行価格と同額で償還が約されており、要求払預金に類似する金銭債権として取り扱われる。暗号資産のように市場価格が変動する資産ではないため、法人税法上の期末時価評価(法人税法第61条第2項)の対象から除外されている。
  • 理由② 消費税上は暗号資産と同様に譲渡が非課税であり、課税売上割合の計算にも含めない。さらに令和8年度改正後は、暗号資産が「有価証券に類するもの」に変更され譲渡対価の5%が課税売上割合の分母に算入されるのに対し、電子決済手段は引き続き「支払手段等」のため5%算入の対象外となる見込みであり、法人の消費税上の優位性が拡大する。
  • 条件 ここでいう電子決済手段は資金決済法上の定義を満たすもの(法定通貨連動・同額償還・日本のライセンス取得済み)に限られる。USDTは「暗号資産」「電子決済手段」「外国電子決済手段」のいずれにも法的分類が確定していない。DAI等の暗号資産担保型は暗号資産に該当する可能性が高い。名称だけで判断できない。

法人税法第61条第2項 / 法人税法第61条の8 / 消費税法第6条第1項 / 資金決済法第2条第5項

この記事でわかること

  • 電子決済手段(ステーブルコイン)と暗号資産の法的区分の違い
  • 海外発行ステーブルコインの法的分類問題(USDTのグレーゾーン・DAI等の暗号資産該当性)
  • 法人が電子決済手段を取得・譲渡・保有した場合の法人税の取扱い
  • 外貨建電子決済手段(USDC等)の利用・譲渡時に生じる為替差損益
  • JPYC等の電子決済手段を「利用」した場合の税務上の利点と価額乖離の罠
  • 消費税改正後の電子決済手段の優位性(5%算入ルールの回避)
  • JPYCによる給与支払の可能性と労働協約の壁
  • JPYCレンディング(担保借入型)の税務処理と活用戦略
目次

電子決済手段と暗号資産の法的区分

【結論】ステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動し発行価格と同額で償還を約するものは「電子決済手段」として暗号資産とは法的に区分される(資金決済法第2条第5項)。令和4年6月の資金決済法改正により定義が法令に位置づけられ、令和5年6月1日から施行されている。

電子決済手段とは、資金決済法において以下のいずれかに該当するものと定義されている。

類型定義
代価の弁済のために不特定の者に対して使用でき、不特定の者を相手方として購入・売却できる財産的価値(通貨建資産に限る)であって、電子情報処理組織を用いて移転できるもの
①と相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転できるもの
特定信託受益権
①~③に準ずるものとして内閣府令で定めるもの

有価証券、電子記録債権、前払式支払手段は電子決済手段の定義から除外される。電子決済手段を取り扱う業者(電子決済手段等取引業者)には登録制が導入されている。

暗号資産との税務上の主な違い

項目暗号資産電子決済手段
法人の期末評価活発な市場ありの場合は時価評価・含み益課税(法人税法第61条第2項時価評価なし・原価法(法人税法第61条の8)
取得価額購入対価+手数料等券面額に基づく価額
法的性格財産的価値金銭債権に類似
日本円建の利用時の課税利用時に売却差額の損益が発生原則損益なし(ただし券面額との価格乖離がある場合は差額計上)
外貨建の利用時の課税売却差額+為替差損益が発生為替差損益が発生
消費税(現行)譲渡は非課税(割合に不算入)譲渡は非課税(割合に不算入)
消費税(改正後)譲渡対価の5%が課税売上割合の分母に算入引き続き不算入(5%算入の対象外)
貸付利用料課税対象課税対象
外貨建の期末換算規定なし期末時換算法 or 発生時換算法

この区分の最大のポイントは、法人が保有する電子決済手段には期末時価評価課税が適用されない点にある。暗号資産を保有する法人にとって大きな負担となる含み益課税が、電子決済手段では発生しない。

海外発行ステーブルコインの法的分類問題

多くの法人が「ステーブルコイン=電子決済手段(期末評価なし)」と誤解しているが、日本の資金決済法上のライセンスを持たない海外発行のステーブルコインは、法的分類が確定していない、または暗号資産に該当する可能性が高いまま流通している。

銘柄発行者日本法上の分類法人の期末時価評価
JPYCJPYC株式会社(日本)電子決済手段(確定)不要
USDCCircle(米国)/ SBI VCトレードが国内初の電子決済手段等取引業者として取扱い電子決済手段(確定)不要
USDTTether Limited(海外)法的分類が未確定(下記注意参照)安全策として必要と考えるのが妥当
DAIMakerDAO(分散型)暗号資産の可能性が高い(暗号資産担保型)必要(活発な市場あり)
FRAXFrax Finance(アルゴリズム型)暗号資産必要(活発な市場あり)

注意(USDTの法的分類):USDTは法定通貨(米ドル)にペッグされたステーブルコインだが、2026年3月現在、日本の法令上「暗号資産」「電子決済手段」「外国電子決済手段」のいずれにも明確に分類されていない。暗号資産バックではないため暗号資産のステーブルコインには該当しないが、性質的には電子決済手段と同じであるにもかかわらず、電子決済手段や外国電子決済手段としても明確に位置づけられていない。暗号資産交換業者としてのUSDT取扱い申請はこれまですべて不認可となっている。税務上の取扱いは法的分類に依存するため、USDTの分類が確定するまでは処理方針に不確実性が残る。安全策として「暗号資産」と同様の処理(期末時価評価の対象)とするのが実務上は妥当である。

注意:「名前がステーブルコインだから電子決済手段だろう」という自己判断は致命的である。法人が期末にUSDTやDAIを大量に保有していた場合、法的分類次第では期末時価評価が適用され、含み益に法人税が課される。保有するステーブルコインが資金決済法上の電子決済手段に該当するかどうかは、取扱業者の登録状況を確認した上で判断する必要がある。

注意(マルチチェーン展開の論点):USDCのようなステーブルコインは、Ethereum・Polygon・Arbitrum・Solana等の複数チェーンにそれぞれ固有のコントラクトアドレスで展開されている。同じ「USDC」でもチェーンごとに技術的には別のトークンであり、ブリッジによるチェーン間移動の際には旧チェーンのUSDCが消滅し新チェーンのUSDCが発行される構造となっている。これらを税務上「同一の電子決済手段」として扱うか「チェーンごとに別の資産」として扱うかについて、現時点で法令上の明確な回答はない。チェーンごとに別の資産と整理された場合、ブリッジのたびに譲渡損益(為替差損益を含む)が発生する可能性がある。今後の制度整備による明確化が待たれる論点である。コントラクトアドレスによる暗号資産の「種類」の判定基準については「コントラクトアドレスとは?|暗号資産の「種類」の判定基準」を参照。

法人税の取扱い(取得・譲渡・期末)

【結論】法人が電子決済手段を取得した場合は券面額に基づく価額で計上し、譲渡時は対価と帳簿価額の差額を益金または損金に算入する。期末時点では時価評価を行わない(国税庁FAQ 3-2-1~3-2-3、法人税法第61条の8)。

取得時の処理

電子決済手段の取得価額は、券面額に基づく価額である。払込額と券面額に差額がある場合、その差額は取得した事業年度の益金または損金に算入する(国税庁FAQ 3-2-1)。

電子決済手段は要求払預金に類似し、金銭債権に該当する。この点が、「財産的価値」として取り扱われる暗号資産との根本的な違いである。

譲渡時の処理

電子決済手段を譲渡した場合、対価の額と帳簿価額の差額を益金または損金に算入する(国税庁FAQ 3-2-2)。

帳簿価額未満で譲渡した場合は、寄附金に該当する可能性があるため、損金算入に制限がかかることがある。

期末時の処理

電子決済手段は期末時価評価の対象外である(国税庁FAQ 3-2-3)。金銭債権として取り扱われるため、暗号資産のような期末時価評価課税(法人税法第61条第2項)は適用されない。電子決済手段の期末評価に関する規定は法人税法第61条の8に定められている。

貸倒引当金については、一括評価金銭債権には該当しないため、個別評価金銭債権に該当する場合を除き損金不算入となる。

電子決済手段の「利用時」の税務上の利点と注意点

【結論】JPYC等の日本円連動型の電子決済手段を商品・サービスの購入に利用した場合、法定通貨と等価であるため原則として利用時に損益が発生しない。暗号資産(BTC・ETH等)で直接決済した場合に生じる「使うたびに利確」の問題が電子決済手段では起きないことが実務上の大きな利点である。ただし、①価格乖離(0.99円や1.01円での取引)の差額と、②外貨建(USDC等)の為替差損益の2点には注意が必要である。

決済手段商品購入時の課税理由
BTC・ETH等で直接決済課税される(暗号資産の譲渡として取得価額との差額が所得)暗号資産の「使用」は譲渡に該当(国税庁FAQ 1-2)
JPYC(日本円建)で決済原則課税されない(法定通貨と等価のため差額が生じない)金銭債権の弁済に過ぎず、譲渡損益が発生しない
USDC(外貨建)で決済為替差損益が発生取得時と利用時の為替レートの差で損益が生じる

注意(暗号資産→JPYC交換時の課税):電子決済手段の利用時に課税されないとしても、暗号資産を電子決済手段に交換する時点で暗号資産の譲渡損益が発生する。たとえばBTCをJPYCに交換した場合、交換時のBTCの時価と取得原価の差額が課税対象となる。交換タイミングは暗号資産の価格が有利な時点を選ぶ必要がある。「JPYC利用時に課税されない」と「JPYCに換えるときに課税されない」は別の話である。

注意(外貨建ステーブルコインの為替差損益):USDCのような外貨(米ドル)建の電子決済手段は、取得時と利用・譲渡時の為替レートの変動により為替差損益が発生する。個人の場合は雑所得、法人の場合は益金または損金に算入される。「ステーブルだから無税」と誤解して申告から漏らすケースが多いが、為替変動がある以上、外貨建ステーブルコインの利用・譲渡は必ず為替差損益の計算が必要である。

注意(券面額との価格乖離による差額):JPYCのような日本円連動型の電子決済手段であっても、実際の市場では0.99円や1.01円で取引されることがある。0.99円で取得したJPYCを1円分として決済に利用した場合、0.01円の差額(譲渡益)が発生し、益金(雑所得)として計上する義務がある(国税庁FAQ 3-2-2)。「1JPYC=1円だから計算不要」と放置すると、取引量が多い場合は差額が積み上がり、税務調査での申告漏れ指摘に繋がる。

外貨建電子決済手段の期末換算

【結論】外貨建の電子決済手段(USDC等)については、期末時換算法または発生時換算法のいずれかで円換算を行う。届出がない場合の法定換算方法は発生時換算法である(法人税法第61条の9、法人税法施行令第122条の4~第122条の7)。

換算方法内容届出
発生時換算法(法定)取得時の為替レートで換算し、期末に為替差損益を認識しない不要
期末時換算法期末の為替レートで換算し、為替差損益を認識する必要

外貨建の電子決済手段を多く保有する法人は、為替変動の影響を期末に反映させたい場合は期末時換算法を届け出ることで対応可能である。届出がなければ発生時換算法が適用されるため、為替差損益は認識されない。

消費税の取扱い|改正後の電子決済手段の優位性

【結論】電子決済手段の譲渡は暗号資産と同様に消費税の非課税取引であり、課税売上割合の計算上も非課税売上高に含める必要はない。令和8年度税制改正後は、暗号資産の譲渡対価の5%が課税売上割合の分母に算入されるのに対し、電子決済手段は引き続き対象外であり、法人の消費税上の優位性が大幅に拡大する見込みである(国税庁FAQ 6-1、6-2)。

取引消費税の取扱い(現行)改正後
暗号資産の譲渡非課税(割合に不算入)非課税だが譲渡対価の5%を課税売上割合の分母に算入
電子決済手段の譲渡非課税(割合に不算入)引き続き不算入(5%算入の対象外)
電子決済手段の貸付利用料課税対象変更なしの見込み
取引手数料課税対象(仲介役務の提供対価)変更なしの見込み

令和8年度税制改正大綱では、暗号資産の消費税上の位置づけが「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」に変更される予定であり、暗号資産の譲渡対価の5%が課税売上割合の分母に算入される。暗号資産を大量に売買する法人は課税売上割合が低下し、仕入税額控除が制限されて消費税負担が増加する。

一方、電子決済手段は引き続き「支払手段等」に該当するため、この5%算入ルールの対象外となる。暗号資産取引の中間決済をJPYC等の電子決済手段で行うことで、課税売上割合を下げずに済むという法人の財務上の大きなメリットが生じる見込みである。

電子決済手段の貸付利用料が課税対象となる点は引き続き注意が必要である。「資産の貸付け」に該当し、支払手段の譲渡や金銭の貸付けなどの非課税取引のいずれにも該当しないためである。

JPYCによる給与支払の可能性と労働協約の壁

【結論】JPYCによる給与支払は現行法上ハードルが極めて高い。労働基準法第24条の「通貨払いの原則」により、電子決済手段による支払を適法に行うには労働組合との間の労働協約が必要である。ただし、JPYC社は厚生労働省との協議を進めており、制度整備が従来の想定より早まる可能性がある。

項目現状今後の見通し
法的根拠労働基準法第24条「通貨払いの原則」により電子決済手段での支払は原則不可。適法に行うには労働組合との間の労働協約が必要JPYC社は厚生労働省との協議中であり、電子決済手段による給与支払の制度整備が従来の想定より早まる見込み
税務上の取扱いJPYCでの支払は現物給与として処理。券面額(時価)を給与に加算制度整備により通常の給与と同様の扱いとなる可能性がある
源泉徴収JPYCの券面額に対して所得税・住民税の源泉徴収義務あり変更なしの見込み
法人側の損金算入JPYCの券面額で給与として損金算入制度整備の内容次第

暗号資産で給与を支払った場合の課税関係と源泉徴収の実務は「暗号資産で給与支払|給与の現物支給と課税関係」で解説している。

注意:「デジタル給与払い(資金移動業者口座への支払い)」と「電子決済手段による給与支払」は法的に別の枠組みである。デジタル給与払いの解禁を根拠にJPYCで給与を支払うと、労働基準法第24条違反となる。労働協約なしにJPYCで給与を支払った場合、罰則(30万円以下の罰金)の対象となり得る。本件についてJPYC社代表取締役の岡部典孝氏は厚生労働省と協議中であることを公表し、実現時期が従来の想定より早まる見込みであると述べている。ただし、現時点では法令改正前であり、制度面の正式な解消を待って実施すべきである。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産税務のセカンドオピニオンを依頼する」をご覧ください。

JPYCレンディング(担保借入型)の税務処理

【結論】BTC・ETH・USDT・USDC等を担保に預け、JPYCを借り入れるモデル(JPYCレンディング)では、担保の預入時にも借入時にも課税イベントは発生しない。暗号資産を「売却」せずに日本円相当のJPYCを手にできるため、「売ると課税される」問題を回避しつつ生活費や投資資金を確保できる可能性がある(所得税法第36条第1項、法人税法第22条第2項)。

JPYCレンディングの仕組み

ステップ内容
①担保預入BTC・ETH・USDT・USDC等を担保として預ける
②金利収入の発生担保資産からステーキング等の金利収入が発生
③JPYCの借入担保資産の評価額に応じてJPYCを借り入れる
④日本円への換金借りたJPYCをJPYC EX等で手数料無料で日本円に換金
⑤利息の相殺担保資産の金利収入でJPYC借入の利息を相殺→実質ほぼ無利子の可能性

各ステップの課税関係

ステップ課税の有無理由
①担保預入非課税担保設定は譲渡に該当しない。取得原価を据え置く
②金利収入課税受領時の時価で雑所得(個人)又は益金(法人)に算入
③JPYC借入非課税借入は「収入」ではなく返済義務を伴う債務。所得に該当しない
④JPYC→日本円換金非課税JPYCは日本円と等価の電子決済手段であり、換金時に損益が発生しない
⑤返済(担保解除)非課税同種同量返還であれば課税イベントに該当しない
⑥担保実行(債務不履行時)課税担保資産が処分される→譲渡として取得原価との差額に課税
⑦法人の期末時価評価暗号資産が担保の場合は課税。電子決済手段が担保の場合は不要暗号資産は担保預入中でも「自己の計算において有する」として時価評価対象(FAQ 3-1-6)。電子決済手段は期末時価評価の対象外(FAQ 3-2-3)

担保預入が非課税となる法的根拠(担保設定と質権型の構造)は「暗号資産のステーキングの税務処理」で詳しく解説している。

JPYCレンディングが注目される理由

JPYCレンディングが暗号資産投資家に注目される理由は、「暗号資産を売却せずに日本円の流動性を確保できる」点に尽きる。現行税制では暗号資産の売却時に譲渡益課税(最大55%)が発生するが、借入は「利確」ではないため課税対象外である。具体的には以下の活用が想定される。

活用場面メリット
ドル資産を保持したまま日本円を使いたいUSDT・USDCを担保にJPYCを借りれば、円安局面でもドル建て資産を崩さずに国内支払いに対応可能
BTC・ETHのポジションを維持したい売却による利確を避けつつ生活費・投資資金を確保できる
円安トレンドを活かしたい担保資産の円建て評価額が上昇すれば、同じ担保量で借入可能額が増加する

注意:JPYCレンディングは本稿執筆時点では正式リリース前のサービスであり、最終的な仕組みやサービス内容は変更される可能性がある。また、「借入は課税されない」のは現行税制に基づく整理であり、将来的に担保付借入に対する課税ルールが変更される可能性は否定できない。さらに、担保資産の価格が急落した場合はロスカット(強制清算)により担保が処分され、その時点で譲渡課税が発生する。借入による課税繰延べはリスクフリーではない点を理解しておく必要がある。

損益計算実務での注意点

【結論】損益計算実務においてステーブルコインが直接損益額に大きく影響することは少ないが、JPYCの券面額との価格乖離による差額(0.99円等での取得)による差額の計上と、DeFi利用時の残高ズレには注意が必要である。

損益計算上、最も頻繁に登場するのはUSDTとUSDCである。ドルペッグ型であるため値動きは小さく、損益額への直接的な影響は限定的であるが、DeFiでの利用頻度が高いため、取引履歴の調整計算においては残高のズレが生じやすいトークンである。

JPYCのような日本円連動型の電子決済手段は、本来1円と等価であるが、実際の取引では0.99円や1.01円で取引されることがある。この場合、FAQ 3-2-1の取扱いに基づき、券面額との差額を損益に計上する必要がある。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 電子決済手段を保有する法人は期末に時価評価が必要ですか?

不要である。法定通貨と連動する電子決済手段は金銭債権に該当し、暗号資産の期末時価評価(法人税法第61条第2項)の対象外となる。電子決済手段の評価は法人税法第61条の8に基づき、原価法で処理する(国税庁FAQ 3-2-3)。

Q2. USDTやDAIを保有する法人は期末時価評価の対象ですか?

安全策として対象とするのが妥当である。USDTは「暗号資産」「電子決済手段」「外国電子決済手段」のいずれにも法的分類が確定しておらず、暗号資産交換業者としてのUSDT取扱い申請もすべて不認可となっている。法的分類が確定するまでは「暗号資産」と同様に期末時価評価の対象として処理するのが安全である。DAIは暗号資産担保型であり暗号資産に該当する可能性が高いため、活発な市場が存在する限り期末時価評価の対象となる。名称が「ステーブルコイン」であることをもって電子決済手段と判断してはならない。

Q3. 個人が電子決済手段を売買した場合の課税関係は?

暗号資産と同様に、譲渡価額と取得価額の差額が所得となる。電子決済手段の個人所得税に関する特別な規定はなく、通常の暗号資産取引と同じ枠組みで所得を計算する(所得税法第36条第1項)。

Q4. USDC等の外貨建ステーブルコインを使って商品を買った場合、為替差損益は発生しますか?

発生する。外貨建の電子決済手段は、取得時と利用・譲渡時の為替レートの差で為替差損益が生じる。個人の場合は雑所得、法人の場合は益金または損金に算入される。「ステーブルだから無税」と誤解して申告から漏らさないよう注意が必要である。

Q5. すべてのステーブルコインが「電子決済手段」に該当しますか?

該当しない。電子決済手段に該当するのは、法定通貨と連動し発行価格と同額で償還を約するもの(資金決済法第2条第5項)のうち、日本のライセンスを取得済みの発行者のものに限られる。アルゴリズム型(FRAX等)や暗号資産担保型(DAI等)は暗号資産として取り扱われる。USDTは法定通貨ペッグ型だが暗号資産・電子決済手段・外国電子決済手段のいずれにも法的分類が確定しておらず、グレーゾーンのまま流通している。

Q6. JPYCで商品を購入した場合、暗号資産のように利確になりますか?

原則ならない。JPYCは日本円と等価の電子決済手段であり、利用時に取得価額との差額が生じないため譲渡損益は発生しない。ただし、市場の需給により0.99円等で取得していた場合は利用時に0.01円の差額が譲渡益として発生する。また、暗号資産(BTC等)をJPYCに交換した時点で暗号資産側の譲渡損益が発生する点にも注意が必要である。

Q7. 暗号資産を担保にJPYCを借りた場合、課税されますか?

借入時には個人・法人ともに課税されない。担保の預入は譲渡に該当せず、借入は返済義務を伴う債務であり所得に該当しない。ただし、法人が暗号資産(BTC・ETH等)を担保に預けている場合、担保預入中でも期末時価評価の対象となり含み益に法人税が課される(国税庁FAQ 3-1-6)。担保資産の価格急落によりロスカット(強制清算)が発生した場合は、担保資産の譲渡として取得原価との差額に課税される。

Q8. 令和8年度改正後、電子決済手段の消費税上のメリットは何ですか?

課税売上割合を下げずに済む。改正後は暗号資産が「有価証券に類するもの」に変更され、譲渡対価の5%が課税売上割合の分母に算入される。暗号資産を大量に売買する法人は課税売上割合が低下し消費税負担が増加する。一方、電子決済手段は引き続き「支払手段等」のため5%算入の対象外であり、課税売上割合に影響しない。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産税務のセカンドオピニオンを依頼する」をご覧ください。

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関係法令

  • 資金決済法第2条第5項(電子決済手段の定義)
  • 労働基準法第24条(賃金の通貨払いの原則)
  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 法人税法第22条第2項(益金の額)
  • 法人税法第37条(寄附金)
  • 法人税法第52条第1項・第2項(貸倒引当金)
  • 法人税法第61条第2項(暗号資産の期末時価評価)
  • 法人税法第61条の8(電子決済手段の評価)
  • 法人税法第61条の9(外貨建資産等の期末換算)
  • 法人税法施行令第118条の7(暗号資産の期末時価評価の対象・除外)
  • 法人税法施行令第122条の4~第122条の7(外貨建電子決済手段の換算方法)
  • 法人税基本通達11-2-18(貸倒引当金の取扱い)
  • 消費税法第6条第1項(非課税取引)
  • 消費税法施行令第9条第4項(課税売上割合の計算)
  • 国税庁FAQ 1-2(暗号資産で商品を購入した場合)
  • 国税庁FAQ 3-1-6(ステーキングのためロックアップした暗号資産の期末時価評価)
  • 国税庁FAQ 3-2-1~3-2-4(電子決済手段の法人税)
  • 国税庁FAQ 6-1、6-2(電子決済手段の消費税)
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