暗号資産FX・PerpDEXの利益は申告分離課税の対象外であり、総合課税の雑所得として最大約55%の累進税率が適用される。CEX・DEXを問わず、国内FXの申告分離課税(20.315%)とは税制上の扱いがまったく異なる。
- 理由① 国内業者の外国為替FXは租税特別措置法により申告分離課税(一律20.315%)が適用されるが、暗号資産のレバレッジ取引はこの特例の対象に含まれていない。CEXの暗号資産FXもDEXのPerpetual取引も同様に総合課税であり、プラットフォームの違いで税率は変わらない。
- 理由② 総合課税のため、暗号資産FX・PerpDEXの利益は給与所得等と合算された上で累進税率が適用される。本業の収入が高い兼業トレーダーほど高い税率がかかる構造であり、国内FXのような定率課税の恩恵を受けられない。
- 条件 PerpDEXは取引履歴がオンチェーンのみで年間取引報告書が発行されないため、損益計算の難易度がCEXより高い。またファンディングレート(資金調達率)の受取・支払いも損益計算に含める必要があり、レンディング利息と同様に見落としやすい計上項目である。
所得税法第35条 / 国税庁FAQ 2-12 / 令和8年度税制改正大綱
この記事でわかること
- 暗号資産FX・PerpDEXが総合課税となる理由と根拠条文
- 国内FXとの税率の違い(比較表つき)
- 暗号資産の信用取引の所得計算方法と計算例
- PerpDEX(永久先物)の課税とファンディングレートの処理
- レバレッジトークンの税務上の取扱い
- 両建てを行った場合の実務上の注意点
- 分離課税化の今後の見通し
暗号資産FX・PerpDEXが総合課税となる理由
【結論】暗号資産の証拠金取引は、CEX(暗号資産FX)・DEX(PerpDEX)を問わず、租税特別措置法により申告分離課税の対象から明確に除外されているため、総合課税(雑所得)となる(国税庁FAQ 2-12、所得税法第35条、租税特別措置法第41条の14)。
国内業者の外国為替FX(外国為替証拠金取引)は「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」により、申告分離課税(税率20.315%)が適用される(租税特別措置法第41条の14)。暗号資産の証拠金取引も仕組みとしては外国為替FXと類似しているが、同法の規定により暗号資産の証拠金取引は申告分離課税の対象から除外されている。
この除外規定はプラットフォームの形態を問わない。国内CEXの暗号資産FXも、Hyperliquid・dYdX・GMX等のPerpDEXも、暗号資産を原資産とするレバレッジ取引である以上、同様に総合課税の雑所得として扱われる。
国内FXと暗号資産FX・PerpDEXの税制比較
| 項目 | 為替FX(国内) | 為替FX(国外) | 暗号資産FX・PerpDEX |
|---|---|---|---|
| 課税方式 | 申告分離課税 | 総合課税 | 総合課税 |
| 税率 | 一律20.315% | 累進課税(最大約55%) | 累進課税(最大約55%) |
| 他の所得との損益通算 | 先物取引等の雑所得内で可 | 雑所得内でのみ可 | 雑所得内でのみ可 |
| 損失の繰越控除 | 3年間繰越可 | 不可 | 不可(現行法) |
| 年間取引報告書 | 業者が発行 | 業者による | CEXのみ発行(PerpDEXは発行なし) |
| 根拠法令 | 租税特別措置法第41条の14 | 所得税法第35条 | 所得税法第35条 |
注意:外国為替FXであっても、海外の無登録業者を通じた取引は申告分離課税の対象外であり、暗号資産FXと同様に総合課税(雑所得)となる。申告分離課税が適用されるのは、金融商品取引業者(国内の登録業者)を通じた取引に限られる。
国内FXとの税率差が暗号資産FX・PerpDEXの最も重要な論点である。例えば、課税所得が900万円を超える場合、所得税率は33%(住民税を加えると約43%)となり、国内FXの20.315%の約2倍の税負担となる。課税所得4,000万円超では最大約55%に達する。
関係法令:所得税法第35条 / 租税特別措置法第41条の14
暗号資産の信用取引の所得計算
【結論】暗号資産の信用取引(他の者から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買)の所得は、売付け価額と買付け価額の差額で計算し、その取引の「決済の日の属する年分」の所得として計上する(国税庁FAQ 2-13、所得税基本通達36・37共-22)。
暗号資産の信用取引とは、個人または法人が他の者から信用の供与を受けて行う暗号資産の現物売買を指す。令和5年(2023年)度税制改正により、暗号資産交換業者だけでなく、それ以外の者から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買も「暗号資産信用取引」に含まれることとなった(令和6年分以後の所得税に適用)。
計算例1:空売りで利益が出た場合
前提条件:
- 2025年9月1日:1BTCを1,000,000円で売り付け(空売り)
- 2025年9月24日:1BTCを800,000円で買い付けて決済
計算式:
1,000,000円 − 800,000円 = 200,000円
[売付け価額] [買付け価額] [所得金額]
計算例2:レバレッジ買いで利益が出た場合
前提条件:
- 2025年1月1日:200万円を証拠金として預入。400万円を借り入れ、2BTC(1BTC=200万円)を400万円で買い付け
- 2025年2月1日:2BTC(1BTC=300万円)を600万円で売り付け、借入400万円を返済
計算式:
(300万円 × 2BTC)−(200万円 × 2BTC)= 200万円
[売付け価額] [買付け価額] [所得金額]
計算例3:空売りで損失が出た場合(強制決済)
前提条件:
- 2025年1月1日:200万円を証拠金として預入。2BTCを借り入れ、2BTC(1BTC=200万円)を400万円で売り付け
- 2025年2月1日:強制決済。2BTC(1BTC=300万円)を600万円で買い付け、借入2BTCを返済
計算式:
(200万円 × 2BTC)−(300万円 × 2BTC)= △200万円
[売付け価額] [買付け価額] [損失]
この損失200万円は、同年の暗号資産の現物取引や他の雑所得との通算が可能である。ただし、給与所得や事業所得など他の所得区分との損益通算はできない(所得税法第69条第1項)。
売付け価額・買付け価額の調整
| 調整項目 | 売り付けの場合 | 買い付けの場合 |
|---|---|---|
| 受取金利 | 売付け価額に加算 | — |
| 支払金利 | — | 買付け価額に加算 |
| 品貸料(支払) | 売付け価額から控除 | — |
| 品貸料(受取) | — | 買付け価額から控除 |
関係法令:所得税法施行令第119条の7 / 所得税基本通達36・37共-22
PerpDEX(永久先物)の課税とファンディングレート
【結論】PerpDEX(Perpetual DEX)の取引で生じた損益は、CEXの暗号資産FXと同様に総合課税の雑所得として課税される。加えて、ファンディングレート(資金調達率)の受取・支払いも損益計算に含める必要がある。
PerpDEXとは、Hyperliquid・dYdX・GMX等に代表される、ブロックチェーン上で永久先物(Perpetual Futures)取引を提供する分散型取引所である。CEXの暗号資産FXと経済的実質は同じだが、取引がスマートコントラクトで執行される点が異なる。
ファンディングレートの税務処理
ファンディングレート(Funding Rate)とは、PerpDEXにおいてロングとショートのポジション間で定期的に(通常8時間ごとに)受け渡される資金調達率である。ポジションを保有しているだけで自動的に発生するため、損益計算で見落としやすい。
ファンディングレートの受取額は雑所得の収入金額に、支払額は必要経費に算入する。CEXの信用取引における受取金利・支払金利と同様の調整項目として処理される。
PerpDEXの損益計算が困難な理由
PerpDEXの損益計算には、CEXにはない以下の実務上の困難が伴う。
- 取引履歴が取得できないケースがある:PerpDEXは日本の暗号資産交換業者ではないため、年間取引報告書が発行されない。取引履歴はオンチェーンデータまたはプロトコル独自のUIから取得する必要があるが、取引履歴取得のためのUIが用意されていないこともあり、その場合は取引履歴が取得できない。
- ファンディングレートの集計が必要:8時間ごとに発生するファンディングレートを年間分集計する必要がある。プロトコルによってはエクスポート機能がなく、手動での集計が必要となる
- 証拠金がステーブルコインの場合:USDCやUSDT等のステーブルコインで証拠金を拠出する場合、ステーブルコインの円換算レートの変動も損益計算に影響する
- ガス代の記録:ポジションのオープン・クローズ等のオンチェーン取引にはガス代が発生し、これも必要経費に算入する必要がある
レバレッジトークンの取扱い
【結論】レバレッジトークンが暗号資産に該当するかには議論があるが、いずれにせよ雑所得に該当する可能性が高く、暗号資産の現物取引の損益と損益通算が可能である。
レバレッジトークンとは、特定の暗号資産の価格変動に対してレバレッジをかけたパフォーマンスを提供するトークンである。証拠金取引のようにポジションを管理する必要がなく、現物トークンとして購入・売却できる。
レバレッジトークンが税法上「暗号資産」に該当するか否かについては議論の余地があるが、いずれの場合でも雑所得に該当する可能性が高い。また、レバレッジトークンの取引履歴は暗号資産の取引履歴と混在して出力されるため、実務上は暗号資産の損益計算に含めて処理されることが多い。
実務上の注意点|両建ての損益計算
【結論】暗号資産FXやPerpDEXで両建て(ロング・ショートの同時保有)を行い、年末に片方のポジションのみ決済した場合、決済方式(円建てかUSDT建てか)によっては損益計算ソフトの数量台帳が崩壊し、本来の損益以上の利益が計上されるリスクがある。
国内CEXの円建て決済であればこの問題は発生しないが、海外CEXやPerpDEXのようにUSDT建てで損益が発生する場合、計算上のUSDT残高がマイナスに転落する。対処法は2つあり、FX損益をソフト外で別途計上する方法(簡便法)と、ソフト内部で借入処理により数量台帳を補正する方法がある。
両建ての損益計算の詳細な取引例・2つの対処法の比較・ソフトの実装差異については「暗号資産FXの両建てと損益計算|数量台帳の調整処理」を参照されたい。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
今後の見通し|分離課税化の動向
【結論】令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)において、「特定暗号資産」のデリバティブ取引を分離課税(20%)の対象に追加する方針が示された。ただし、対象は金融商品取引業者登録簿に登録された暗号資産に限定される見込みであり、PerpDEXや海外取引所の取引は対象外となる可能性が高い。
令和8年度税制改正大綱では、金融商品取引法の改正を前提に、「特定暗号資産」の現物取引・デリバティブ取引・ETFから生ずる所得を分離課税(税率20%:所得税15%+住民税5%)の対象とする方針が盛り込まれた。
「特定暗号資産」のデリバティブ取引が分離課税の対象となれば、国内CEXの暗号資産FXの税率は現行の総合課税(最大約55%)から一律20%へ大幅に軽減される見込みである。また、損失の3年間繰越控除も可能となる。
- 金商法改正が前提であり、施行時期は金商法改正の国会審議次第で未確定
- 「特定暗号資産」は金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産に限定される見込み
- PerpDEX(海外DEX)での取引は「特定暗号資産」の要件を満たさない可能性が高く、分離課税の恩恵を受けられない見込み
- 現行法に基づく確定申告では、引き続き総合課税として計算する必要がある
関係法令:令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
よくある質問(FAQ)
Q1. 暗号資産FXやPerpDEXの利益は申告分離課税20%で計算できますか?
できない(現行法)。暗号資産の証拠金取引は租税特別措置法により申告分離課税の対象から除外されており、CEX・DEXを問わず総合課税(雑所得)として他の所得と合算して累進税率が適用される(国税庁FAQ 2-12、所得税法第35条)。
Q2. 暗号資産FX・PerpDEXの損失を給与所得や事業所得と損益通算できますか?
できない。雑所得の損失は他の所得区分との損益通算が認められていない(所得税法第69条第1項)。暗号資産の現物取引や他の雑所得との通算は可能である。
Q3. 暗号資産の信用取引の所得はいつの年分で申告しますか?
決済の日の属する年分である。ポジションを保有しているだけでは課税されず、決済(反対売買)を行った年分の所得として計上する(所得税基本通達23〜35共-10、国税庁FAQ 2-13)。
Q4. PerpDEXのファンディングレートは課税対象ですか?
課税対象である。ファンディングレートの受取額は雑所得の収入金額に算入し、支払額は必要経費として控除する。ポジション保有中に自動的に発生するため見落としやすいが、損益計算に含めなければ申告漏れとなる(所得税法第36条第1項)。
Q5. 海外業者の外国為替FXも総合課税ですか?
総合課税である。申告分離課税(20.315%)が適用されるのは、金融商品取引業者(国内の登録業者)を通じた外国為替FXに限られる。海外の無登録業者を通じた外国為替FXは暗号資産FXと同様に総合課税(雑所得)となり、損失の繰越控除も認められない。
Q6. 暗号資産FX・PerpDEXの損失を翌年以降に繰り越せますか?
現行法では繰り越せない。雑所得の損失には繰越控除の制度がない。ただし、令和8年度税制改正大綱において「特定暗号資産」のデリバティブ取引について3年間の損失繰越控除を導入する方針が示されている(施行時期未確定。国外CEX、PerpDEXは対象外となる可能性が高い)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
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関係法令
- 所得税法第35条
- 所得税法第36条第1項
- 所得税法第69条第1項
- 所得税法施行令第119条の7
- 租税特別措置法第41条の14
- 所得税基本通達23〜35共-10、36・37共-22
- 法人税法第61条の5
- 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
