暗号資産の取引履歴の取得方法|取引所・ウォレット・DeFi別|仮想通貨・暗号資産の税務

結論

暗号資産の損益計算には「期末残高スクリーンショット+数量一覧」「取引履歴CSV」「ウォレットアドレス」の3点が最低限必要。1つでも欠けると正確な計算ができない。

  • 理由① 年間取引報告書(PDF)は集計済みの数値しか載っておらず、個別取引の明細がない。損益計算ソフトや税理士が計算に使うのはCSV形式の取引履歴であり、PDFでは対応できない。取得する形式を間違えるだけで計算が進まなくなる。
  • 理由② 取引履歴は当年分だけでなく取引開始年度まで遡って全履歴を取得する必要がある。移動平均法・総平均法いずれも過去の取得価額が当年の損益に影響するため、途中年度からの履歴では正しい取得単価が算出できない。
  • 条件 DeFi取引はCSVが存在しないため、ウォレットアドレスからブロックチェーン上の履歴を直接読み取る必要がある。使用したチェーン・プロトコルごとにアドレスを漏れなく把握しておくことが前提となり、アドレスの紛失は履歴の復元不能を意味する。

所得税法第36条第1項・第48条の2

この記事でわかること

  • 損益計算に必要な5種類の資料とその用途
  • 取引所・ウォレット・DeFi別の取引履歴取得手順
  • CoinGecko API IDによるトークン特定の重要性と17,000超のシンボル混同リスク
  • NFT・LPトークン・債権トークンの記載ルール
目次

損益計算に必要な5種類の資料

【結論】暗号資産の損益計算には、①期末残高スクリーンショット+数量一覧Excel、②取引所の取引履歴CSV、③ウォレットアドレス一覧、④法定通貨残高(法人・青色個人事業主の場合)、⑤その他の取引情報(ICO・譲渡・詐欺被害等)の5種類を用意する。税務調査で提示を求められるため、計算後も必ず保管する(所得税法第36条第1項)。

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# 資料名 内容 備考
期末残高スクリーンショット+Excel ウォレットごとの暗号資産保有数量を表示した画面のスクショ。これを基にシンボル名・CoinGecko API ID・数量を記載したExcelを作成 詐欺トークンは除外。LPトークン・債権トークンは記載必要
取引所の取引履歴 取引所からダウンロードしたCSV/XLSXファイル 年間取引報告書(PDF)は原則使用しない
ウォレットアドレス MetaMask等のウォレットアプリのアドレス一覧 ネットワーク名とアドレスのセット。ハードウェアウォレットのアドレスは原則不要
法定通貨残高 法人・青色申告個人事業主の場合に必要 BS整合性のため。日本の取引所の円残高+海外取引所の外貨残高
その他の取引情報 ウォレット・取引履歴では把握できない取引 ICO参加、他者への譲渡、詐欺・盗難被害など。日時・種類・数量・内容を別途用意

暗号資産の税金計算は、利益が出た年だけではなく、取引そのものを開始した年まで遡って計算する必要がある。たとえば2020年に取引を開始し、2025年に初めて利確した場合でも、2020年からの全取引履歴が必要となる。

取引所の取引履歴の取得方法

【結論】取引所の取引履歴は、年間取引報告書(PDF)ではなくCSV/XLSX形式でダウンロードする。APIキーによる取得も推奨されるが、一部の取引所ではAPIで取得できない履歴が存在する点に注意が必要である(所得税法第48条の2、所得税法施行令第119条の2)。

CSV取得が基本である理由

年間取引報告書(PDF)は人間が読むための概要資料であり、損益計算ソフトに取り込むためのデータ形式ではない。損益計算ソフトが求めるのは取引ごとの日時・数量・金額が記載されたCSVファイルである。

取得時の注意点

  • 海外取引所のタイムゾーン:海外取引所の取引履歴はUTC(協定世界時)で出力されることが多い。日本標準時(JST=UTC+9)との乖離を確認し、必要に応じて修正する。
  • ファイルの文字コード:ダウンロードしたCSVをExcel等で開くと文字コードが変更され、損益計算ソフトに取り込めなくなることがある。ダウンロード後はファイルを開かずにそのまま損益計算ソフトに取り込むことを推奨する。
  • APIキーでの取得:取引所によってはAPIキーを発行して取引履歴を自動取得できる。ただしAPIで取得できない種類の履歴が別途ある取引所も存在する(例:一部取引所の販売所取引はAPI非対応)。
  • 取引所の閉鎖:取引所が閉鎖した場合は取引履歴の取得が不可能となる。この場合は調整計算で対応する。

ウォレットアドレスの準備とDeFi取引の履歴取得

【結論】MetaMask等のウォレットアプリのアドレスを把握・用意することで、損益計算ソフトがブロックチェーン上のオンチェーン取引を自動取得する。ハードウェアウォレットのアドレスは原則不要である。ウォレットはホットウォレット(秘密鍵がオンライン常時接続)とコールドウォレット(オフライン保管)に大別される。

ウォレットアドレスの取得

ウォレットアドレスは銀行の口座番号に相当するもので、ブロックチェーン上の取引はすべてこのアドレスに紐づく。損益計算ソフトにウォレットアドレスを入力することで、オンチェーンの取引履歴を自動で取得・取り込むことができる。用意するのはネットワーク名とアドレスのセットである。取引所の入出金アドレスは取引履歴CSVで代替できるため、別途用意する必要はない。

ホットウォレットとコールドウォレット

種類 秘密鍵の状態 具体例 損益計算での扱い
ホットウォレット オンライン環境に常時接続 MetaMask、Trust Wallet等のアプリ アドレスを損益計算ソフトに入力して履歴取得
コールドウォレット オフライン保管 Ledger、Trezor等のハードウェアウォレット アドレスは原則不要(取引頻度が低いため)

秘密鍵の注意

ウォレットアドレスは公開情報であり、損益計算の過程で税理士に提出しても問題ない。一方、秘密鍵(シークレットリカバリーフレーズ)は絶対に提出してはならない。秘密鍵があれば暗号資産を自由に移動できるため、いかなる理由があっても第三者に渡してはならない。

CoinGecko API IDによるトークン特定の重要性

【結論】暗号資産の種類は現在17,000以上存在し、シンボル名だけでは正確にトークンを特定できない。同一シンボルで異なるトークンが存在するため、CoinGecko API IDの記録が実務上必須級である。体感的に9割のトークンはAPI IDの取得が可能である。

シンボル名の混同リスク

例えば「MONA」というシンボルの場合、多くのユーザーが想起するのはモナーコイン(正式名称:monacoin)である。しかし、CoinGeckoに現在登録されている「MONA」はMona(正式名称)という全く別の暗号資産である。時価が異なるため、混同すると損益額が実態と乖離する。

CoinGecko API IDとは

CoinGecko API IDは、各トークンに固有に割り当てられた識別子であり、シンボル名と異なり一意にトークンを特定できる。後日そのトークンが何であったかを正確に特定し、記載ブレを防止するために、期末残高の数量一覧Excelにはシンボル名とあわせてCoinGecko API IDを記載する。

CoinGeckoに登録がないトークンの場合

CoinGeckoに登録がないトークン(全体の約1割)は、以下の形式でコントラクトアドレスを記載する。

evm_[チェーン番号]_[コントラクトアドレス]

例:evm_8453_0x07d15798a67253d76cea61f0ea6f57aedc59dffb

この記載は一般の納税者には困難なケースも多く、税理士側で確認して記載することも多い。記載が難しい場合は、トークンアイコン画像や取引履歴など、トークンを特定できる情報を別途保存しておく。

NFT・LPトークン・債権トークンの記載ルール

【結論】LPトークンや債権トークンは期末残高のExcelに必ず記載する。NFTについては記載フォーマットが複雑であり(コントラクトアドレス+トークンID等)、数千件保有するケースもあるため、高額・特殊なものを除き記載を求めないのが実務上の標準である。

LPトークン・債権トークン

流動性供給やステーキングで受け取ったLPトークン・債権トークンは、期末残高のExcelに記載する必要がある。記載しない場合は、調整計算のタイミングで対象か否かを判断することになる。

NFTの記載

NFTの適切な記載方法は以下のような形式となる。

evm_721_1_0x235f25e2615b682b79d3b619fd7a4e0b3ed7e0c4_77
要素 意味
evm EVMチェーンかの判定 evm
721 トークン規格(ERC-721) 721
1 チェーン番号(Ethereumメインネット) 1
0x235f…0c4 コントラクトアドレス(作品シリーズ) コレクション単位
77 トークンID(シリーズ内の作品番号) 個別作品

1文字のミスも許されず、NFTを数千件保有するケースもあるため、よほど高額・特殊なトークンでなければ記載を求めていない。NFTは取引履歴に出てこない限り存在把握・時価取得が不可能であるが、損益計算ソフト側が対応していれば数量・損益額の把握に支障はない。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 年間取引報告書(PDF)を使って損益計算できますか?

原則できない。年間取引報告書は概要資料であり、損益計算ソフトに取り込むためのデータ形式ではない。取引所からCSV/XLSX形式の取引履歴をダウンロードして使用する。

Q2. 利益が出た年の取引履歴だけあれば計算できますか?

できない。平均法による取得単価の計算には、取引を開始した年まで遡った全取引履歴が必要となる(所得税法第48条の2、所得税法施行令第119条の2)。

Q3. 取引所が閉鎖して取引履歴が取得できない場合はどうなりますか?

調整計算で対応する。取引履歴が取得できない分は、ボーナス処理と0SELL処理を用いた調整計算で補完し、蓋然性の高い損益額を算定する。詳細は「暗号資産の調整計算とは」を参照。

Q4. ウォレットの秘密鍵を税理士に渡す必要はありますか?

絶対に渡してはならない。損益計算に必要なのはウォレットアドレス(公開情報)のみである。秘密鍵があれば暗号資産を自由に移動できるため、いかなる理由があっても第三者に渡してはならない。

Q5. CoinGecko API IDはどこで確認できますか?

CoinGecko(coingecko.com)で該当トークンのページを開くと、URLの末尾がAPI IDとなっている。例:ethereumのページURLが /en/coins/ethereum の場合、API IDは ethereum。体感的に約9割のトークンはCoinGeckoに登録されており、API IDの取得が可能である。

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専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 所得税法第48条の2(暗号資産の評価の方法)
  • 所得税法施行令第119条の2(移動平均法)
  • 所得税法施行令第119条の5(総平均法)
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