マイニング報酬は取得時点の時価が全額収入となり、マイニングに要した費用を必要経費として控除できる。個人の所得区分は原則として雑所得。
- 理由① マイニングで取得した暗号資産には購入原価が存在しないため、取得時の時価がそのまま収入金額となる。エアドロップやステーキング報酬と同じく「受取時の時価=全額が所得の基礎」となる計算構造である。
- 理由② 必要経費に算入できるのは電気代・マイニング機器の減価償却費・通信費・クラウドマイニングの委託費等。ただし自宅でマイニングする場合は家事按分が必要であり、電気代・回線費用の全額算入は認められない。
- 条件 雑所得と判定された場合、30万円未満の少額減価償却資産の特例は使えず、マイニングマシンの一括経費化が否認される。さらに損益通算も不可のため、マイニングから撤退してマシンを処分した場合の損失が他の所得から一切救済されない。
所得税法第35条・第36条 / 国税庁FAQ 1-7
この記事でわかること
- マイニング報酬の課税タイミングと収入金額の計算方法
- マイニング所得の所得区分(雑所得・事業所得)の判断基準
- 必要経費として認められる費用の範囲(減価償却費・電気代等)
- 雑所得と判定された場合に使えなくなる節税手段(少額減価償却資産の特例・損益通算)
- マイニング所得が雑所得とされた裁決事例(令和4年1月7日裁決)と確定申告上の注意点
マイニング報酬の課税タイミングと収入金額
【結論】マイニングにより暗号資産を取得した時点で課税関係が発生する。収入金額は取得した暗号資産の取得時点の時価であり、譲渡原価は0円となるため、時価がそのまま所得金額の基礎となる(所得税法第36条、国税庁FAQ1-7)。
マイニングは、何かを譲渡して対価を得る取引ではない。ブロック生成の対価として新たに暗号資産を取得する行為である。そのため、収入金額は取得した暗号資産の取得時点の時価で計算し、譲渡原価は0円として処理する。
この点について、藤井健志国税庁次長(当時)は国会答弁において、マイニングにより取得した暗号資産は支払手段としての財産的価値を持つため、取得時点の時価が所得税法上の収入金額(法人税法上の益金)になると説明している。
計算例
2022年2月1日に0.0002BTCのマイニング報酬を受け取った場合(1BTC=400万円)。
400万円 × 0.0002BTC = 800円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 800円 |
| 譲渡原価 | 0円 |
| 所得金額(必要経費控除前) | 800円 |
収入金額からマイニングに要した必要経費を控除した金額が、最終的な所得金額となる。
法人の場合
法人がマイニングにより暗号資産を取得した場合も、取得時点の時価を益金に算入する(法人税法第22条、第22条の2)。必要経費に代えて損金として費用を控除する。
関係法令:所得税法第36条、第37条 / 法人税法第22条、第22条の2
マイニング所得の所得区分
【結論】個人のマイニング所得は、原則として雑所得に区分される。収入金額が300万円を超え、かつ帳簿書類を保存している場合は事業所得に該当する可能性があるが、自己の計算と危険において独立して営まれる業務であることが必要である(所得税法第27条、第35条、国税庁FAQ2-2)。
マイニング所得の所得区分は、以下の基準で判断する。
| 条件 | 所得区分 |
|---|---|
| 収入金額300万円以下 | その他雑所得 |
| 収入金額300万円超+帳簿保存なし | 業務に係る雑所得 |
| 収入金額300万円超+帳簿保存あり | 原則として事業所得(ただし個別判断) |
帳簿書類を保存していても、営利性が客観的に認められない場合や、自己の計算と危険において独立して営まれる業務とはいえない場合には、事業所得に該当しないことがある。事業所得の判断基準の詳細は「暗号資産の所得区分【第2回】|事業所得の判断基準と実務上の留意点」で解説している。この点を明確に示したのが、次のセクションで紹介する裁決事例である。
注意:雑所得と判定された場合、青色申告の「30万円未満の少額減価償却資産の特例」は一切適用できなくなる。この特例は事業所得(青色申告)に限られるため、マイニングマシンを特例で一括経費にしていた場合、税務調査で雑所得と認定されると全額経費否認(通常の4年減価償却への是正)となり、過去の申告との差額に対して追徴課税が発生する。さらに、雑所得の場合はマシンの売却損・廃棄損もその年のマイニング等の雑所得の黒字の範囲内でしか損失として差し引けず、給与所得等の他の所得との損益通算は認められない(所得税法第51条第4項、第69条第1項)。マイニングから撤退してマシンを安値で処分した場合の大赤字が、税務上は一切救済されないという事態が生じる。
関係法令:所得税法第27条、第35条 / 所得税基本通達35-1、35-2 / 国税庁FAQ2-2
裁決事例:マイニング所得が雑所得とされた事例
【結論】マイニング業務の実質的な運営を業者に委託し、暗号資産の種別選択や停止判断等の重要な意思決定を自ら行っていない場合、経済的実質はマイニングへの「投資」に等しく、事業所得ではなく雑所得に該当する(国税不服審判所裁決令和4年1月7日・大裁(所)令3-28)。
国税不服審判所は、令和4年1月7日裁決(大裁(所)令3-28)において、クラウドマイニングの所得が事業所得ではなく雑所得に該当すると判断した。
事案の概要
請求人は、マイニングマシンの販売元であるN社にマイニング業務を委託していた。請求人は以下の点を主張し、事業所得に該当すると争った。
- マイニングについて人的・物的設備を備えている
- 自己の危険と計算による企画遂行を行っている
- 精神的・肉体的労力を費やしている
- 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けている
審判所の判断
審判所は、以下の事実関係を認定し、請求人の主張を退けた。
- マイニングマシンの購入代金完済を停止条件として、N社に業務委託が行われていた
- マイニングする暗号資産の種別選択、市況を踏まえた停止・種別変更の判断がすべてN社に委ねられており、請求人には異議を述べる権限もなかった
- 請求人はマイニングに係る損失を負担せず、運営経費の内容・金額についても不知であった
これらを踏まえ、審判所は「請求人が行うマイニングは、マイニングマシンの取得費用の限度で危険を負担してN社が主体となって行うマイニングから生じる利益の分配を受けるものに等しく、その経済的実質はN社が行うマイニングへの投資に等しい」と判断した。
客観的・実質的にみて、請求人の計算と危険において独立して営まれる業務とはいえず、「対価を得て継続的に行なう事業」(所得税法施行令第63条第12号)にも該当しないとして、雑所得と結論づけた。
経営力向上計画の認定について
審判所は、中小企業等経営強化法における経営力向上計画の認定を受けただけでは、租税特別措置法第10条の5の3第1項に規定する特定経営力向上設備等を「事業の用に供した」ことを充足しないと判断した。
なお、令和5(2023)年度税制改正により、中小企業経営強化税制の「特定経営力向上設備等」の対象から、暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く)の用に供する資産でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものが除外されている(措法10の5の3、42の12の4、中小企業等経営強化法施行規則16②)。
関係法令:所得税法第27条、所得税法施行令第63条第12号 / 措法10の5の3、42の12の4
マイニングの必要経費の範囲
【結論】マイニングに直接要した費用は、所得の計算上、収入金額から必要経費として控除できる。具体的には、マイニングマシン等の減価償却費、電気代、インターネット回線利用料等が該当する(所得税法第37条、国税庁FAQ2-3)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
マイニングで認められる必要経費は以下のとおりである。
| 費用の種類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| マイニングマシン・パソコンの購入費 | 減価償却費として計上 | 10万円超は減価償却が必要(耐用年数4年) |
| 電気代 | マイニングに要した電力 | 家事按分が必要(マイニング使用割合を合理的に区分) |
| インターネット回線利用料 | マイニングに係る部分 | 暗号資産取引に係る部分を明確に区分できる場合に限る |
| マイニングプールの手数料 | プールマイニング参加費用 | 支払明細を保存 |
| マイニングマシンの修繕費 | 故障時の修理費用 | — |
| サーバーホスティング費用 | 設置場所の賃借料 | — |
クラウドマイニングの初期費用と前払費用処理
クラウドマイニングの契約料や初期費用を一括で支払った場合、その全額をその年の経費にすることはできない。クラウドマイニングは業者に資金を支払い、契約期間(2年〜3年等)にわたってマシンの稼働・管理という継続的な役務提供を受ける契約であるため、年末時点でまだ提供を受けていない未来のサービス期間に対応する金額は「前払費用」として資産計上し、契約期間に応じて按分して経費化する必要がある(所得税法施行令第7条第2項、法人税法施行令第14条第2項)。
| 項目 | 個人(所得税) | 法人(法人税) |
|---|---|---|
| 前払費用の定義 | 所得税法施行令第7条第2項 | 法人税法施行令第14条第2項 |
| 原則 | 支払年に一括経費化は不可。契約期間で按分 | 同左 |
| 短期前払費用の特例 | 支払日から1年以内にサービス完了する場合のみ一括経費可(所得税基本通達37-30の2) | 同左(法人税基本通達2-2-14) |
| クラウドマイニングへの適用 | 契約期間が通常1年超のため特例は適用不可 | 同左 |
注意:一括経費にしていた場合、税務調査で「期ずれ(計上時期の誤り)」として否認され、翌年以降に計上すべき経費を前倒しした分について追徴課税を受ける。クラウドマイニングの契約書に記載された契約期間を確認し、月割りで按分計算を行うこと。
前述の国会答弁でも、担税力の観点から、マイニングに要した費用(パソコンの減価償却費や電気代等)を差し引いて所得金額を計算すると明言されている。必要経費の範囲と所得区分による違いは「暗号資産の経費にできるもの一覧」で解説している。
よくある質問(FAQ)
Q1. マイニング報酬はいつ課税されますか?
取得した時点で課税される。マイニングにより暗号資産を取得した時点の時価が収入金額となる(所得税法第36条、国税庁FAQ1-7)。売却時ではなく取得時に課税が発生する点に注意が必要である。
Q2. マイニング報酬の所得区分は事業所得にできますか?
原則は雑所得である。収入金額300万円超かつ帳簿書類を保存している場合は事業所得に該当する可能性があるが、自己の計算と危険において独立して営まれる業務であることが必要である(所得税法第27条、第35条、国税庁FAQ2-2)。
Q3. クラウドマイニングの収益も課税対象ですか?
課税対象である。業者に委託するクラウドマイニングであっても、取得した暗号資産の時価に対して課税される(所得税法第36条)。前述の裁決事例のとおり事業所得ではなく雑所得と判断される可能性が高い。また、契約料や初期費用を一括で支払った場合でも、全額をその年の経費にすることはできず、契約期間に応じた前払費用処理(按分計算)が必要である(所得税法施行令第7条第2項)。契約期間が1年超の場合は短期前払費用の特例も使えないため、誤って一括経費にすると期ずれとして否認される。
Q4. マイニングの電気代はどのように必要経費にしますか?
家事按分で計算する。マイニングに使用した電力の割合を合理的に算出し、その割合分を必要経費として控除する(所得税法第37条、第45条)。マイニングマシンの稼働時間と総電力使用量から按分するのが一般的な方法である。
Q5. マイニングで取得した暗号資産の取得価額はいくらですか?
取得時点の時価である。マイニングにより取得した暗号資産の取得価額は、取得時点の時価となる(国税庁FAQ1-5の⑤「上記以外」)。その後売却する際には、この取得価額と売却価額の差額に対して再度課税される。
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関係法令
- 所得税法第27条
- 所得税法第35条
- 所得税法第36条
- 所得税法第37条
- 所得税法第45条
- 所得税法第51条第4項(資産損失の必要経費算入・雑所得の限度)
- 所得税法第69条第1項(損益通算の制限)
- 所得税法施行令第7条第2項(前払費用)
- 所得税法施行令第63条第12号
- 所得税法施行令第119条の6
- 所得税基本通達35-1、35-2
- 所得税基本通達37-30の2(短期の前払費用)
- 法人税法第22条
- 法人税法第22条の2
- 法人税法施行令第14条第2項(前払費用)
- 法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)
- 租税特別措置法第10条の5の3
- 租税特別措置法第42条の12の4
- 中小企業等経営強化法施行規則第16条第2項
- 国税庁FAQ1-5、1-7、2-2、2-3
