NFTのガス代は経費になる?|必要経費の範囲と計上方法

結論

NFTのガス代は経費になる。ただし「取得原価に加算」「譲渡費用として控除」「必要経費として計上」の3パターンがあり、取引の種類で処理方法が異なる。

  • 理由① 購入時(ミント時含む)のガス代はNFTの取得原価に加算する。売却時のガス代は譲渡費用として控除する。いずれも損益計算に直接組み込まれるため、ガス代の記録漏れは取得価額と譲渡損益の両方に影響する。
  • 理由② 送付・承認(approve)・リスト出品等のガス代は、売買に直接紐づかないため取得原価にも譲渡費用にもならない。これらは所得区分に応じた必要経費として処理するが、その他雑所得の場合は「直接要した費用」に限定されるため算入が認められないリスクがある。
  • 条件 ガス代はETH等の暗号資産で支払うため、ガス代の支払い自体が暗号資産の「使用」に該当し、ETHの譲渡損益が発生する。ガス代1回ごとにETHの取得価額との差額を計算する必要があり、ガス代の経費計上と暗号資産の損益認識は同時に処理する必要がある。

所得税法第37条第1項 / 国税庁FAQ 2-3

この記事でわかること

  • ガス代が「取得原価」に含まれるケースと「必要経費」になるケースの違い
  • フリーミントのガス代の取扱い
  • 所得区分(事業所得・業務雑所得・その他雑所得)による経費範囲の違い
  • PC・ネット回線などの按分計算と減価償却の方法
  • NFTクリエイター固有の必要経費の範囲
目次

ガス代の2つの処理パターン

【結論】ガス代は取引の性質によって「取得原価への加算」と「必要経費としての控除」に分かれる。NFT購入時のガス代は取得原価に加算し、売却時のガス代は譲渡費用として計上する(NFT FAQ問4、所得税法第33条・第38条)。

パターン①:取得原価への加算

暗号資産でNFTを購入した場合、NFTの取得原価は「手放した暗号資産の時価+購入時に支払ったガス代」となる。ガス代は単独の経費ではなく、NFTの取得原価の一部として資産計上される。このガス代が経費として認識されるのは、そのNFTを売却した時点である。

フリーミント(ガス代を支払うことでNFTを取得する行為)の場合、NFTの取得価額はフリーミント時に支払ったガス代のみとなる。

取引 ガス代の処理 経費になるタイミング
暗号資産でNFTを購入 NFTの取得原価に加算 NFT売却時
フリーミントでNFTを取得 取得原価=ガス代 NFT売却時
NFTの売却 譲渡費用として控除 売却した年分
NFTの送付・承認 必要経費 支払った年分

パターン②:必要経費としての控除

NFTの売却時に支払うガス代(マーケットプレイスでの出品やトランスファーに伴うもの)は、その年分の譲渡費用として必要経費に算入される。DeFiでのトレードやステーキング等で発生するトランザクションフィーも同様に必要経費となる。

ガス代支払いに伴う暗号資産の譲渡損益

NFTの購入・売却・送付時に支払うガス代はETH等の暗号資産で支払われる。税務上、これは「保有するETHを支払手数料として譲渡(使用)した」扱いとなるため、ガス代として支払ったETHの取得価額と支払時の時価との差額が、暗号資産の譲渡損益として認識される(所得税法第48条の2)。

たとえば、取得価額1ETH=15万円のETHを保有しており、NFT購入時にガス代として0.01ETHを支払った時点で1ETH=30万円であった場合、ガス代の金額(3,000円)がNFTの取得原価に加算されると同時に、ETH側では0.01ETH×(30万円−15万円)=1,500円の譲渡益が発生する。ガス代の経費計上(又は取得原価への加算)だけでなく、暗号資産側の損益計上も同時に行わなければならない点に細心の注意が必要である。暗号資産の「使用=譲渡」の基本構造は「暗号資産の損益計算の基本」で解説している。

所得区分による経費範囲の違い

【結論】事業所得・業務に係る雑所得に該当する場合は、売上原価だけでなく販売費・一般管理費(税理士報酬、PC代、通信費等)も必要経費に算入できる。「その他雑所得」に該当する場合は、売上原価と売却等に直接要した費用のみが認められ、経費範囲が大幅に狭くなる(所得税法第37条第1項、国税庁FAQ 2-3)。

所得税法上、必要経費に算入できる金額は次の2種類である(所得税法第37条)。

①売上原価その他その所得の総収入金額を得るため直接に要した費用の額

②その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額

事業所得又は業務に係る雑所得に該当する場合は①②の両方が必要経費に算入できるが、その他雑所得に該当する場合は①のみとなり、②の販管費等が経費から除外される。

所得区分別の経費算入可否

費用の例 事業所得 業務に係る雑所得 その他雑所得
NFTの譲渡原価(取得価額)
売却時の手数料・ガス代
取引所の送金手数料
税理士報酬 ×
損益計算ソフトの利用料 ×
PC購入費(減価償却費) △(※)
インターネット回線利用料 △(※)
書籍代・セミナー参加費 ×

国税庁FAQ 2-3は、その他雑所得であっても「インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、暗号資産の売却のために直接必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます」としている。したがって一律に経費否認されるわけではないが、「直接必要な支出」に限定される点で事業所得・業務雑所得よりも大幅に範囲が狭く、その立証責任は納税者側にある。

「その他雑所得」に該当する場合、税理士報酬や暗号資産の計算ソフト利用料が必要経費に算入できなくなる。所得区分の判定は経費範囲に直結するため、帳簿書類の保存を含め慎重に検討する必要がある。

必要経費算入が認められる支出の具体例

事業所得又は業務に係る雑所得に区分される場合、以下のような支出が必要経費に算入できる。

  • 暗号資産やNFT取引のための筆記用具・ファイル類、書籍代、セミナー参加費
  • 税金申告のために利用しているソフト等の利用料金や税理士への報酬
  • 取引所等での送金手数料
  • ウォレットや取引所間での送金、DeFiでのトレードやステーキング等で発生するトランザクションフィー

経費になるタイミングのズレ(期ずれリスク)

「その他雑所得」に該当する場合は「直接要した費用」に限定されるため、NFTの出品(リスト)のためにガス代を支払っても、そのNFTが売れなければその年の経費にすることはできない。実際に売れた年の経費にするしかないという「期ずれの罠」が存在する。年末に大量のNFTを出品してガス代を支払ったものの翌年まで売れなかった場合、ガス代を支払った年の所得が過大に計上される結果となる。

PC・ネット回線の按分計算と減価償却

【結論】インターネット回線利用料やPC購入費用は、NFT取引に係る部分を明確に区分できる場合に限り必要経費に算入できる。個人的な利用と混在する場合は使用時間等で合理的に按分し、PC等は減価償却費として期間按分する必要がある(国税庁FAQ 2-3)。

インターネット回線利用料

NFT取引に係る利用料とそれ以外の利用料を一括で支払っている場合、NFT取引に係る利用料を明確に区分できる場合に限り、その部分のみが必要経費に算入できる。暗号資産やNFTの取引専用の回線であれば全額を計上できるが、個人的な用途にも使用している場合は使用時間や使用日数等で合理的に按分する。

PC等の減価償却

使用可能期間が1年以上で、かつ一定金額(10万円)を超えるパソコン等の資産は、その年に一括して必要経費に計上できない。使用可能期間の全期間にわたり分割して減価償却費として計上する。NFT取引と個人的な利用の両方に使用している場合は、減価償却費をさらに使用割合で按分する。

「直接」という要件

国税庁は令和4年12月のFAQ改訂で、必要経費について「暗号資産の売却のために直接必要な支出」という文言を追加した。従前のFAQにはなかった「直接」という語が挿入されたことで、間接的な費用の算入がより厳格に判断される可能性がある。

NFTクリエイター固有の経費

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

【結論】NFTクリエイターの売上原価は「NFTを組成するために要した費用の額」のみであり、デジタルアートの制作費(外注費等)は売上原価に含まれない。ただし制作費は販売費及び一般管理費として必要経費に算入できる。グラフィックツール代・液晶ペンタブレット代・家賃等も同様である(NFT FAQ問1、所得税法第37条第1項)。

デジタルアート制作費は売上原価ではなく販管費

NFT FAQは、NFTクリエイターの売上原価について「NFTを組成するために要した費用の額」のみとし、デジタルアートの制作費は含まれないとしている。ただし、制作費が売上原価に含まれないことは、必要経費に算入できないことを意味しない。NFT FAQは必要経費を「売上原価の額並びに販売費及び一般管理費の額など」と定義しており(NFT FAQ問1)、イラストレーターへの外注費はNFTの譲渡収入を得るために支出した費用であるため、販売費及び一般管理費として必要経費に算入できる(所得税法第37条第1項)。

NFTクリエイターの販管費として認められるもの

業務に係る雑所得や事業所得に該当する場合、以下のような費用が必要経費に算入できる。

  • 会議費・交際費(業務に関連するもの)
  • 事務所として使用している家賃(按分が必要な場合あり)
  • 液晶ペンタブレットやAdobe Illustratorなどのグラフィックツールの代金
  • 作品制作における参考資料に係る費用

付き合い購入のNFTは即時経費にならない

「知り合いのNFTクリエイターの作品を付き合いで購入した」という場合、その支出時にただちに必要経費として計上することは認められない。まず資産計上し、そのNFTを売却した際に初めて取得価額相当額を必要経費として計上する。

ミント時のガス代が経費になるタイミング

クリエイターが作品をNFT化(ミント)する際のガス代は「売上原価」であるため、ミントした年ではなく、そのNFTが実際に売れた年に初めて経費として差し引くことができる。年末に大量にミントしても、売れなければその年の経費にはならない。この期ずれを認識しないまま、ミント時にガス代を全額経費計上してしまうと、税務調査で否認される原因となる。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. NFTを購入した時のガス代は、その年の経費にできますか?

できない。購入時のガス代はNFTの取得原価に加算され、そのNFTを売却した年分の経費となる(NFT FAQ問4、所得税法第37条第1項・第38条第1項)。ガス代を単独で即時経費にすることはできない。

Q2. フリーミントで取得したNFTのガス代はどう処理しますか?

NFTの取得価額として計上する。フリーミント時に支払ったガス代がそのNFTの取得価額の全額となる(NFT FAQ問4)。売却時に取得原価として控除される。

Q3. 個人でNFTを売買していますが、税理士報酬は経費にできますか?

所得区分による。事業所得又は業務に係る雑所得に該当する場合は必要経費に算入できる。その他雑所得に該当する場合は、売上原価や売却に直接要した費用以外の販管費は必要経費に算入できない可能性がある(所得税法第37条第1項、国税庁FAQ 2-3)。

Q4. NFTクリエイターですが、デジタルアートの外注費は経費になりますか?

売上原価には含まれないが、必要経費にはなる。NFT FAQはNFTの売上原価を「NFTを組成するために要した費用の額」に限定しており、デジタルアートの制作費は売上原価に含まれない(NFT FAQ問1)。ただし、制作費は販売費及び一般管理費として必要経費に算入できる(所得税法第37条第1項)。売上原価に計上すると販売個数に応じた按分が必要になるが、販管費であれば支出年度に全額経費化できる。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

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関係法令

  • 所得税法第33条(譲渡所得)
  • 所得税法第37条第1項(必要経費)
  • 所得税法第38条第1項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
  • 所得税法第45条(家事関連費等の必要経費不算入)
  • 所得税法第48条の2(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)
  • 所得税法施行令第6条(減価償却資産の範囲)
  • 所得税法施行令第96条(家事関連費)
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-3
  • 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問1、問4
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