NFTの課税は「一次流通」と「二次流通」で所得区分が異なる。同じNFTの売却でも、クリエイターか転売者かで税務処理がまったく変わる。
- 理由① クリエイターが自作NFTを販売する一次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」に該当し、雑所得(又は事業所得)に区分される。特別控除や長期保有の軽減措置は適用されず、受け取った暗号資産の時価が収入金額となる。
- 理由② 購入したNFTを転売する二次流通は「権利の譲渡」として原則・譲渡所得に区分される。年間50万円の特別控除と5年超保有の2分の1課税が適用されるため、同額の利益でも一次流通より税負担が軽くなる構造。
- 条件 営利目的で継続的にNFTの転売を行っている場合は、二次流通でも譲渡所得ではなく事業所得または雑所得に区分される。また、暗号資産(FT)の売買益は原則として雑所得であり、NFTとは所得区分が異なる。NFTと暗号資産を混同した申告は修正申告の原因となる。
国税庁NFT FAQ 問1・問4
この記事でわかること
- 税法上のNFTの定義と、この記事が「アートNFT」を前提とする理由
- NFTの一次流通と二次流通で所得区分が異なる理由と根拠条文
- 一次流通・二次流通それぞれの所得計算の概要
- NFTの取得価額の算定方法(暗号資産購入・フリーミント・交換)
- 暗号資産の「雑所得」とNFTの「譲渡所得」の違い
NFTの税務上の定義とこの記事の前提
【結論】国税庁はNFTを「ブロックチェーン上でデジタルデータに唯一の性質を付与し、真贋性を担保する機能や取引履歴を追跡できる機能をもつトークン」と定義している。ただしNFTの種類によって税務上の取扱いが異なるため、当ブログでは特別な指定がない限りデジタルアートが紐づいた「アートNFT」を前提とする。
NFTとは
NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)は、ブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンの一種である。ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(FT=Fungible Token)が「1BTC=1BTC」のように同じ種類のトークン同士で互換性があるのに対し、NFTは1つひとつが固有の識別情報を持ち、他のトークンと代替できない。この「代替不可能性」がNFTの本質的な特性である。
国税庁NFT FAQではNFTを「ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつトークン」と定義している。この定義は技術的な特性に着目したものであり、NFTに紐づくコンテンツの種類(アート、ゲーム、音楽等)は限定していない。 ただし、「非代替性」は絶対的な性質ではない。代表的なトークン規格であるERC-721は1トークンごとに固有のIDを持つため完全に非代替だが、ERC-1155は同一IDのトークンを複数発行できるセミファンジブル(半代替性)の規格であり、NFTにも暗号資産(FT)にも利用できる。また、ERC-721であっても同一のデジタルアートを紐づけたNFTを異なるIDで量産することは技術的に可能であり、「1点もの」かどうかはトークン規格ではなくプロジェクトの設計に依存する。税務上の取扱いはトークン規格ではなくNFTに紐づく権利の内容で判断されるため、ERC-1155で発行されたトークンであっても、デジタルアートの閲覧に関する権利が紐づいていればNFT FAQの射程に入る。
NFTの種類と税務処理の違い
NFTという名称は同じでも、紐づく権利やコンテンツによって税務上の所得区分や課税タイミングが異なる。
| NFTの種類 | 紐づく権利・コンテンツ | 主な税務上の論点 |
|---|---|---|
| アートNFT | デジタルアートの閲覧に関する権利 | 一次流通=雑所得、二次流通=譲渡所得(本記事で解説) |
| ゲームNFT | ゲーム内アイテム・キャラクター | ゲーム内限定トークンは課税対象外。換金可能な場合は雑所得(BCG記事で解説) |
| 会員権NFT | コミュニティへのアクセス権 | 取引の実態に応じて個別判断 |
| ドメインNFT | ブロックチェーンドメインの所有権 | 取引の実態に応じて個別判断 |
国税庁NFT FAQの問1〜問4は、NFTに「デジタルアートの閲覧に関する権利」が紐づいていることを前提に所得区分を示している。ゲームNFTや会員権NFTは紐づく権利の性質が異なるため、同じ結論が当てはまるとは限らない。
この記事の前提:アートNFT
当ホームページのブログで「NFT」と記載した場合、特別な記載がない限り、デジタルアート等が紐づけられた「アートNFT」を前提としている。アートNFTはNFT FAQの問1・問4がそのまま適用され、「権利の設定(一次流通)」と「権利の譲渡(二次流通)」の区分が所得区分を決定する。以降の解説はすべてこの前提に基づく。
一次流通と二次流通の所得区分
【結論】一次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」であるため譲渡所得にならず、雑所得(又は事業所得)に区分される。二次流通は「権利の譲渡」であるため原則として譲渡所得に区分される(NFT FAQ問1・問4、所得税法第27条・第33条・第35条)。
NFTの所得区分を分ける核心は「権利の設定」と「権利の譲渡」の違いにある。
一次流通=権利の設定 → 雑所得(又は事業所得)
NFTクリエイターが自分のデジタルアートをNFT化して第三者に販売する行為は、国税庁NFT FAQによれば「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定に係る取引に該当する。「設定」であって「譲渡」ではないため、譲渡所得の対象とならない。
アーティスト・クリエイター・NFT販売業者が行う一次流通の所得は、雑所得又は事業所得に該当する。二次流通で入るロイヤリティ収入も同様である。
二次流通=権利の譲渡 → 譲渡所得(原則)
購入したNFTを第三者に転売する二次流通は、「閲覧に関する権利」の譲渡に該当し、原則として譲渡所得に区分される。ただし、営利を目的として継続的にNFTの売買を行っている場合は、雑所得又は事業所得に該当する。
所得区分の比較表
| 区分 | 取引内容 | 所得区分 | 根拠 | 特別控除 |
|---|---|---|---|---|
| 一次流通 | クリエイターが自作NFTを販売 | 雑所得(又は事業所得) | NFT FAQ問1 | なし |
| 二次流通 | 購入NFTを第三者に転売 | 譲渡所得(原則) | NFT FAQ問4 | 最大50万円 |
| 二次流通(継続的売買) | 営利目的で継続的に転売 | 雑所得(又は事業所得) | NFT FAQ問4 | なし |
| ロイヤリティ | 二次流通時にクリエイターが受取 | 雑所得(又は事業所得) | NFT FAQ問1 | なし |
暗号資産の譲渡所得該当性をめぐる議論
暗号資産の譲渡による所得について、国税庁は「雑所得」と位置づけている。平成31年3月20日の参議院財政金融委員会で並木稔国税庁次長は、暗号資産は資金決済法上の「支払手段に類するもの」であり、譲渡所得の本質である「資産の値上がりによる増加益」とは性質を異にすると答弁した。
一方、令和4年4月15日付けの暗号資産MONA(モナコイン)に関する質問主意書に対する政府答弁では、「支払手段としての性質や資産の価値の増加益が生ずる性質を複合的に有する資産」が譲渡所得の基因となる資産に該当するか否かは「個別具体的な資産の性質により判断される」と述べられている。ファントークン(FCRコイン等)についても同様の論点が提起されたが、政府は現時点では暗号資産を譲渡所得の基因となる資産に該当しないとする立場を維持している。
NFTについては、何らかの権利に紐付いたNFTの二次流通は譲渡所得に該当し得るとNFT FAQが明示している点で、暗号資産一般とは異なる取扱いがなされている。暗号資産の所得区分の詳細は「暗号資産の所得区分と課税方式」で解説している。
一次流通の所得計算
【結論】一次流通の所得金額は「NFTの譲渡収入+ロイヤリティ収入−必要経費」で算出する。必要経費のうち売上原価にはNFTの組成費用のみが算入され、デジタルアートの制作費(外注費等)は売上原価に含まれない。ただし制作費は販売費及び一般管理費として必要経費に算入できる(NFT FAQ問1、所得税法第37条第1項)。
売上原価と販管費の区分は、経費化のタイミングに影響する。売上原価は販売個数に応じた按分が必要だが、販管費は支出年度に全額が必要経費となる。一次流通の所得計算の詳細と計算例は「NFTクリエイターの確定申告|一次流通の所得計算と消費税」で解説している。
二次流通の所得計算
【結論】二次流通でNFTを売却した場合の所得金額は「収入金額−取得価額−譲渡費用−特別控除額(最大50万円)」で算出する。5年超保有のNFTは長期譲渡所得となり、課税対象額が2分の1に軽減される(所得税法第33条第3項〜第5項)。
短期と長期の両方がある年は、特別控除額(最大50万円)をまず短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残額があれば長期譲渡所得の譲渡益から控除する(所得税法第33条第5項)。二次流通の計算例と実務上の注意点は「NFTの二次流通(転売)の税金|譲渡所得と特別控除」で解説している。
NFTの取得価額の算定方法
【結論】NFTの取得価額は購入方法ごとに算定方法が異なり、いずれも購入時に支払った対価の時価を基準とする。暗号資産で購入した場合は、NFTの取得価額が確定すると同時に、手放した暗号資産側でも損益が発生する点に注意が必要である(NFT FAQ問4、所得税法第36条・第37条)。
| 取得方法 | 取得価額の算定 | 損益発生 |
|---|---|---|
| 日本円で購入 | 支払った日本円の額 | なし |
| 暗号資産で購入 | 手放した暗号資産の時価 + ガス代 | 手放した暗号資産側で発生 |
| フリーミント | 支払ったガス代 | なし |
| 複数NFTとの交換(10連ガチャ等) | 渡したNFTの取得原価 ÷ 受取NFT数 | 渡したNFT側で発生 |
暗号資産でNFTを購入した場合の譲渡損益の計算構造(取得原価と時価の差額が損益となる仕組み)は「暗号資産の損益計算の基本」で解説している。
ガス代の処理パターンや必要経費の範囲については「NFTのガス代は経費になる?|必要経費の範囲と計上方法」で詳しく解説している。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. NFTの利益と暗号資産の利益は合算して申告しますか?
所得区分が異なるため単純な合算はできない。暗号資産の売買益は雑所得、NFTの二次流通は譲渡所得に区分される。雑所得同士(暗号資産の売買益とNFTの一次流通・ロイヤリティ)は内部通算が可能だが、譲渡所得と雑所得は別枠で計算する。
Q2. NFTの一次流通に消費税はかかりますか?
かかる。NFTクリエイターが自作のデジタルアートを紐付けたNFTをマーケットプレイスで販売する行為は、電気通信利用役務の提供として消費税の課税取引に該当する(NFT FAQ問11、消費税法第2条第1項第8号の3)。詳細は「NFTクリエイターの確定申告|一次流通の所得計算と消費税」を参照。
Q3. NFTを購入しただけで税金はかかりますか?
日本円での購入ならかからない。日本円でNFTを購入した時点では損益は発生せず、取得価額のみが計上される(所得税法第36条第1項)。ただし、暗号資産でNFTを購入した場合は、手放した暗号資産の側で損益が発生する。
Q4. 自分のウォレット間でNFTを移動させたり、ウォッシュトレードをした場合に税金はかかりますか?
かからない。自己所有ウォレット間の移動やウォッシュトレード(自己売買)は課税イベントに該当しない(所得税法第36条第1項)。ただし、ウォッシュトレードに要したガス代が必要経費に該当するかは明確な結論がなく、議論の余地がある。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
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専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第27条(事業所得)
- 所得税法第33条第1項〜第5項(譲渡所得)
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第36条第1項(収入金額)
- 所得税法第37条第1項(必要経費)
- 所得税法第38条(譲渡所得の取得費)
- 消費税法第2条第1項第8号の3(電気通信利用役務の提供)
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問1・問4・問11
