現行税法にNFT固有の規定はなく、課税関係は「トークンそのもの」「紐付けられた資産・権利」「紐付けの態様」の3つの着眼点から個別に判定する必要がある。
- 理由① 国税庁はNFT FAQにおいて「紐付けられた資産・権利」に着目するアプローチを採用している。同じNFTでもデジタルアートか、ゲームアイテムか、会員権かで所得区分・課税タイミングが変わるため、トークン名だけでは課税関係を確定できない。
- 理由② ウォッシュトレード(自己売買による価格操作)やスカラーシップ報酬など、通常の暗号資産取引では生じない固有論点がある。これらは課税イベントに該当するか否か自体が不明確であり、事実関係の整理が課税判断の前提となる。
- 条件 国税庁FAQは代表的なケースの取扱いを示すにとどまり、DAO投票権付きNFTやダイナミックNFT等の新形態はカバーされていない。FAQ外の取引は3つの着眼点に立ち返って個別に検討する必要がある。
所得税法第36条第1項 / 国税庁NFT FAQ 問1・問4
この記事でわかること
- NFT取引の課税関係を検討する際の3つの着眼点
- NFTが「暗号資産」に該当するかの判定視点
- ウォッシュトレード(自己売買)の課税イベント該当性
- スカラーシップ報酬の所得計上方法と契約関係による違い
- NFTを暗号資産で購入する際に発生する課税イベント
NFT取引の課税関係を検討する3つの着眼点
【結論】NFT取引の課税関係は、「①NFT(トークンそのもの)」「②NFTに紐付けられた資産ないし権利」「③紐付けの態様」の3視点から検討する。国税庁はFAQ(NFT)で②の視点を中心に課税関係を整理している(NFT FAQ問1・問4)。
現行税法にはNFTの定義や特別な課税規定は存在しない。したがって、取引されるNFTに財産性があることを前提として、既存の所得税法・法人税法の枠組みで課税関係を検討する。その際の着眼点は以下の3つである。
①NFT(トークンそのもの)
ブロックチェーン上を移転するトークン自体に着目する視点である。この視点が重要になるのは、NFTが「暗号資産」に該当するか否かの判定場面である。
同一種類のゲームアイテムのNFTでナンバリングがされていない場合や、ナンバリングがされていても実質的にユニーク性が付与されていない場合は、代替性が否定できず、暗号資産に該当する可能性がある。暗号資産に該当すれば、法人税法上の期末時価評価や所得区分の判定に影響する。
なお、税法はNFTを定義しているわけではないため、あるトークンがNFTであること自体は直接の税務効果を持たない。問題となるのは「暗号資産に該当するかどうか」である。
②NFTに紐付けられた資産ないし権利
NFTには通常、ゲームアイテム、イラスト画像、コミュニティ参加権など、何らかの資産や権利が紐付けられている。その実態に応じて課税関係を検討する必要がある。
国税庁はFAQ(NFT)において、NFTの一次流通を「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」(NFT FAQ問1)、二次流通を「閲覧に関する権利の譲渡」(NFT FAQ問4)として整理している。すなわち、トークンそのものではなく、紐付けられた権利に着目して所得区分を判定するアプローチを採用していると解される。
| 取引類型 | 国税庁の着眼点 | 所得区分 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 一次流通(組成→譲渡) | 閲覧権利の「設定」 | 雑所得(又は事業所得) | NFT FAQ問1 |
| 二次流通(購入→転売) | 閲覧権利の「譲渡」 | 譲渡所得(原則) | NFT FAQ問4 |
③紐付けの態様
デジタルコンテンツがオンチェーンかオフチェーンか、IPFSで管理されているかといった技術的な紐付けの態様に着目する視点である。
さらに、プラットフォームの利用規約や当事者間の合意内容も検討対象となる。これらはブロックチェーン外の法的取決めとして、NFT保有者が有する権利内容や法的地位に影響を与える。
もっとも、紐付けの態様が税務上どのような影響を与えるかについては個別具体的な検討が必要であり、現時点で一律の結論はない。
ウォッシュトレードの課税イベント該当性
【結論】自己が所有するウォレット間でのNFT・暗号資産の移動は課税イベントに該当しない。ウォッシュトレード(自己売買)も原則として同様であるが、ガス代の経費算入可否には議論の余地がある(所得税法第37条第1項)。
自分が所有するウォレット間で暗号資産やNFTを移動させた場合は、単なる資金移動であり、所得の計算を行う必要はない。ステーキングプールへの預入、イールドファーミング用コントラクトへの移動、NFTマーケットプレイスへの出品なども同様である。
- ステーキングプールへの暗号資産の預入
- イールドファーミング用コントラクトへの移動
- レンディング用コントラクトへの預入
- NFTマーケットプレイスへの出品
- BCG内コントラクトアドレスへの移動
ウォッシュトレード(自分のアドレス間で売買を繰り返す行為)も実質的には自己間取引であるため、原則として課税イベントには該当しない。ただし、当該取引に要したガス代が「所得を生ずべき業務に直接必要な支出」(所得税法第37条第1項)に該当するかについては、肯否が分かれ得る。
なお、流動性供給やブリッジは課税イベントと解する見解もあり、すべてのコントラクトアドレスへの移動が非課税となるわけではない点に留意が必要である。
スカラーシップ報酬の課税
【結論】BCGのスカラーシップ報酬は、オーナーが報酬(暗号資産)を受け取ったタイミングの時価で利益計上する。ただし、契約関係により課税関係が異なるため個別検討が必要である(所得税法第36条第1項)。
BCGでは、NFTキャラクターの保有者(オーナー)が他者(スカラー)にNFTを貸し出し、スカラーが得た暗号資産の一部を取り分として受け取る仕組みが存在する。
- オーナー側:受領時の暗号資産の時価で収益計上
- スカラーへの支払:暗号資産による決済として処理し、取得価額との差額で損益認識
| 契約関係の類型 | 課税関係への影響 |
|---|---|
| 賃貸借 | NFT使用料としての所得 |
| 業務委託 | 委託報酬としての所得 |
| 雇用 | 給与所得(源泉徴収義務の可能性) |
| 組合 | 損益を出資割合等で按分 |
実務上は契約書が存在しないケースも多く、実態に即して所得区分を判断する必要がある。
NFTを暗号資産で購入する際の課税イベント
【結論】NFTの購入代金やガス代を暗号資産で支払う場合、支払った暗号資産の取得価額と支払時の時価との差額が課税対象となる(所得税法第36条第1項)。暗号資産同士の交換と同様の課税イベントが発生する。
NFT取引では購入代金やガス代をETH等の暗号資産で支払うことが通常である。この際、保有暗号資産が値上がりしていれば差益が、値下がりしていれば差損が発生する。NFT自体の売買損益とは別に、支払手段として使用した暗号資産の損益が発生する点に留意する必要がある。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する(NFT税務)」をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自分のウォレット間でNFTを移動させた場合、税金はかかりますか?
かからない。自己所有ウォレット間の移動は単なる資金移動であり、課税イベントに該当しない(所得税法第36条第1項)。
Q2. ウォッシュトレードで発生したガス代は経費にできますか?
議論の余地がある。ウォッシュトレード自体は課税イベントに該当しないが、ガス代が必要経費(所得税法第37条第1項)に該当するかは明確な結論がない。
Q3. NFTが「暗号資産」に該当するケースはありますか?
ある。実質的にユニーク性が認められないトークンは代替性があり、暗号資産に該当する可能性がある。
Q4. スカラーシップ報酬の所得区分は何になりますか?
原則として雑所得である。ただし、契約関係により事業所得や給与所得等に該当する可能性がある(所得税法第35条)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する(NFT税務)」をご覧ください。
関連記事・サービスページ
関連記事
専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第36条第1項(収入金額)
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第37条第1項(必要経費)
- NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)問1・問4・問8(令和5年1月13日・国税庁)
