STEPNを含むBCGの各イベントには既存の課税ルール(NFT売買・エアドロップ・暗号資産決済等)が個別に当てはめられる。BCG固有の税法規定は存在しない。
- 理由① NFTスニーカーの購入・売却、トークン報酬の獲得、ミント、レベルアップ等のゲーム内行為は、それぞれ既存の課税類型(NFT売買・エアドロップ・暗号資産による決済・NFT同士の交換等)に分解して処理する。1つのゲームに10種類以上の課税イベントが混在する。
- 理由② BCGの税務処理に関する国税庁の公式見解はFAQ簡便法にとどまり、個別イベントの取扱いは十分に示されていない。現状は実務上の運用に基づく処理が中心であり、税務調査時の論点となるリスクがある。
- 条件 ゲーム内トークンが暗号資産に該当するか(資金決済法上の定義を満たすか)によって課税タイミングが変わる。ゲーム内で完結する行為と外部への送金・換金を伴う行為では、所得の認識時点が異なる。
国税庁NFT FAQ 事例5・10・33・34・40 / 所得税法第36条第1項
この記事でわかること
- STEPNを題材にした10の課税イベントと、それぞれに当てはめる課税ルール
- 靴の購入・歩行報酬・修理・mint・売却等の具体的な処理方法
- レベルアップの支出が「棚卸資産」か「固定資産」かで処理が分かれる論点
- 時価の把握が困難な場合の実務上の対応
- 計算ソフトでの対応が困難な処理とその限界
10の課税イベント一覧
【結論】STEPNで発生する課税イベントは10パターンに分類でき、それぞれ既存の暗号資産・NFTの課税ルール(売却・交換・エアドロップ・決済等)を当てはめて処理する。すべてのパターンに共通するのは、暗号資産を支払いに充てた時点で、その暗号資産自体に課税イベントが発生する点である(所得税法第36条第1項)。
以下、STEPNを題材に各イベントの処理を解説する。なお、STEPN以外のBCGにも同様の考え方を応用できる。
| # | イベント | 当てはめる課税ルール | 課税のポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 靴・靴箱を買う | NFTの取得価額(暗号資産で購入) | 支払った暗号資産に課税イベント発生 |
| 2 | 歩いてGSTをもらう | エアドロップ | 獲得時のGST時価がそのまま所得 |
| 3 | 靴を修理する | 暗号資産による決済 | 修繕費として経費計上(実務上は簿価で処理) |
| 4 | mint(靴箱の生成) | NFTの新規作成(mint) | GST・GMT・ミントスクロールの支払いが課税イベント |
| 5 | 靴箱を開封する | NFT同士の交換 | 実務上は損益ゼロで処理 |
| 6 | 時間短縮・上限解放 | 暗号資産による決済 | サービス購入として経費計上 |
| 7 | ミステリーボックス開封 | 暗号資産による決済+エアドロップ | 出てきたアイテムの種類で処理が分岐 |
| 8 | GEM合成 | NFT同士の交換 or 損失計上 | 成功=交換、失敗=損失 |
| 9 | 靴・靴箱・GEMの売却 | NFTの譲渡(売却) | 譲渡価額−取得価額=所得 |
| 10 | レベルアップ・ソケットのアンロック | 棚卸資産 or 固定資産アプローチ | 処理方法が未確定の論点 |
各イベントの処理方法
【結論】各イベントは「支払った暗号資産の課税イベント」と「取得したNFT・暗号資産の取得価額の算定」の2つの視点で処理する。時価の把握が困難な場合は、支払額をそのまま取得価額とするなどの実務上の簡便的な処理が広く行われている。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
①靴・靴箱を買う
暗号資産を支払ってNFT(靴・靴箱)を購入した取引である。支払った暗号資産の時価と取得価額との差額に課税イベントが発生し、靴・靴箱の取得価額は支払った暗号資産の支払時の時価(+ガス代等)となる。
複数の低レアリティの靴と1足の高レアリティの靴を交換する場合は、複数の靴の取得価額の合計額を1足の靴の取得価額として処理する。
②歩いて(またはレンタルして)GSTをもらう
歩行やレンタルによって獲得したGSTは、エアドロップと同様に処理する。獲得時点のGSTの時価がそのまま所得金額となる。
③靴を修理する
GSTを支払って靴を修理する処理である。本来は、支払ったGSTの取得価額と支払時の時価との差額を損益計上し、修理代(GSTの支払時の時価)を修繕費として経費計上するのが正確な処理である。
しかし、時価の記録が煩雑であること、また収入と必要経費が相殺される結果となることから、実務上はGSTの取得価額(簿価)で経費処理を行うことが多い。
なお、修理に要した金額の修繕費・資本的支出の判定については、20万円未満であること、修理の周期が3年以内であること等の基準(所得税基本通達37-12、37-13)で判定するが、多くの場合は修繕費として経費計上となる。
④mint(靴箱の生成)
GST、GMT、ミントスクロールを支払って靴箱を新たに生成する処理である。支払った各暗号資産・NFTの時価(ミントスクロールの時価が取得できない場合は取得価額)の合計額が、生成された靴箱の取得価額となる。
GST、GMT、ミントスクロールの支払いそれぞれが課税イベントとなる点に注意が必要である。
mintでレアリティが上振れした場合(アンコモン・レアの靴箱や双子): 本来はmint時の靴箱の時価を収入金額とし、支払いに用いた暗号資産等の額を控除した金額が所得となる。しかし、mint時の靴箱の時価を後から調べることが困難であるため、実務上は以下の処理が一般的である。
- アンコモン・レアの靴箱 → 支払ったGST・GMT・ミントスクロールの時価をそのまま取得価額とする
- 双子が出た場合 → 支払額の1/2をそれぞれの靴箱の取得価額とする(減価償却資産の処理に準じた按分)
⑤靴箱を開封する
靴箱と靴を交換する形となるため、NFT同士の交換として処理する。開封した靴箱よりも上位のレアリティの靴が出た場合、④と同様の論点が発生する。
実務上は、「開封して出てきた靴の時価」=「靴箱の購入価額」として損益ゼロで処理する。靴の時価を把握することが困難なためである。
⑥ミステリーボックス開封までの時間短縮・GSTマイニングの上限解放
GSTやGMTを支払ってサービスを受ける取引であるため、暗号資産による決済として処理する。③の靴の修理と同様に、実務上はGST・GMTの取得価額(簿価)で経費処理を行っている。
⑦ミステリーボックス開封
GSTを支払って開封し、結果に応じて以下のように処理が分かれる。
| 開封結果 | 処理方法 |
|---|---|
| 何も手に入らない | GSTの支払いのみ課税イベント |
| GEMが手に入る | 時価のないNFTの取得 → 取得価額ゼロ円 |
| ミントスクロールが手に入る | 同上 → 取得価額ゼロ円 |
| GSTが手に入る | エアドロップとして獲得時の時価で所得計上 |
GEM・ミントスクロールとGSTを開封時に交換したという考え方もありうるが、計算ソフトでの対応が困難であるため、上記の処理が実務上の対応となる。
⑧GEM合成
複数のGEMを合成し、成功するとレベルの高いGEMを取得できるが、失敗すると合成に使ったGEMを失う。GEMはNFTである可能性が高いため、以下のように処理する。
| 合成結果 | 処理方法 |
|---|---|
| 成功 | NFT同士の交換。「新GEMの時価=旧GEMの取得価額合計」として損益ゼロで処理 |
| 失敗 | 合成に使ったGEMの取得価額を損失として計上 |
⑨靴・靴箱・GEMの売却
NFTの売却として処理する。譲渡価額から取得価額を控除した金額が所得となる。
⑩靴のレベルアップ(ブースト含む)・ソケットのアンロック
レベルアップによって靴自体の価値を上げる支出の処理については、棚卸資産アプローチと固定資産アプローチの2つの考え方がある。
棚卸資産アプローチ(靴を売却用の資産とみる場合): レベルアップの支出は靴の取得価額に上乗せされ、売却するまで必要経費に算入されない(所得税法第37条)。
固定資産アプローチ(靴を暗号資産を稼ぐための資産とみる場合): 支出が資本的支出(所得税法施行令第181条)に該当するか、修繕費に該当するかの判定が必要となる。1回のレベルアップに要する金額が20万円未満のケースがほとんどであるため、修繕費として支出年分の必要経費に計上できる可能性がある(所得税基本通達37-12)。ただし、国税庁の公式見解は不明である。
なお、実務上は、レベルアップのために支払ったGSTが「どの靴のレベルアップに使われたか」を計算ソフト上で判別することが技術的に困難であるという限界がある。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「BCG・NFTの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
関係法令:所得税法第36条第1項、第37条 / 所得税法施行令第181条 / 所得税基本通達37-12、37-13
よくある質問(FAQ)
Q1. STEPNで歩いて稼いだGSTにも税金はかかりますか?
かかる。獲得時点のGSTの時価がそのまま雑所得の収入金額となり、確定申告が必要である(所得税法第36条第1項、第35条)。
Q2. mintで双子が出た場合、取得価額はどう計算しますか?
支払額の1/2をそれぞれの靴箱の取得価額とする。mint時の靴箱の時価を後から調べることが困難であるため、実務上は支払ったGST・GMT・ミントスクロールの時価の合計額を2等分して按分する処理が一般的である。
Q3. 靴のレベルアップ費用は経費にできますか?
処理方法が確定していない。靴を棚卸資産とみれば取得価額に上乗せ(売却時まで経費にならない)、固定資産とみれば資本的支出または修繕費(20万円未満なら支出年分の経費計上可)となる。国税庁の公式見解は示されていないため、税理士への相談が推奨される。
Q4. BCGの損益計算を計算ソフトで処理する際の注意点は?
すべてのイベントが自動処理できるわけではない。特に、レベルアップのGST支払いが「どの靴に紐づくか」の判別や、ミステリーボックス開封で出てきたアイテムの取得価額算定は、計算ソフト上での自動対応が困難である。手動での調整が必要になる場合がある。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
関連記事・サービスページ
関連記事
専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第36条第1項(収入金額)
- 所得税法第37条(必要経費)
- 所得税法施行令第181条(資本的支出)
- 所得税基本通達37-12(修繕費の判定・20万円基準)
- 所得税基本通達37-13(修繕費の判定・周期基準)
- NFT FAQ問8(国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和5年1月)
