暗号資産の確定申告のやり方|必要書類・手順・期限

結論

暗号資産で所得が生じた場合、確定申告が必要である。ただし、給与所得者は暗号資産の所得について20万円を超えなければ住民税の申告のみでよい。申告期限の翌年3月15日を過ぎると無申告加算税と延滞税が発生する。

  • 理由① 申告の手順は、①取引履歴の収集→②国税庁の「暗号資産の計算書」等で所得金額を算出→③確定申告書に雑所得として記載→④e-Taxまたは書面で提出・納税。年間取引報告書で計算できるのは国内取引所の現物取引のみであり、DeFi・海外取引所がある場合はCSVベースの計算が必要。
  • 理由② 暗号資産の所得は「雑所得(その他)」、「雑所得(業務)」に記載する。給与所得や事業所得とは別欄であり、記載場所を間違えると所得区分の誤りとなる。住民税の申告も連動するため、確定申告を行えば住民税の別途申告は不要。
  • 条件 給与所得者の「20万円以下申告不要」は所得税に限った話であり、住民税の申告義務は1円でも所得があれば発生する。また、医療費控除やふるさと納税で確定申告を行う場合は、20万円以下の暗号資産所得も合算して申告する必要がある。

所得税法第120条・第121条第1項第1号

この記事でわかること

  • 確定申告が必要になる条件(20万円ルールの正しい理解)
  • 申告に必要な書類の一覧と入手方法
  • 年間取引報告書の記載内容と読み方
  • 計算書を使った所得金額の計算手順
  • 確定申告の期限と提出方法
目次

確定申告が必要な人

【結論】給与所得者で暗号資産の所得が20万円を超える場合、確定申告が必要である。ただし「20万円以下なら非課税」は誤りであり、確定申告が不要になるだけで住民税の申告は別途必要である(所得税法第121条第1項第1号)。

暗号資産取引で確定申告が必要になる主な条件は以下のとおりである。

対象者確定申告が必要な条件
給与所得者(年末調整済み)給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円超
個人事業主・フリーランス暗号資産の所得を含めて申告(金額にかかわらず)
2か所以上から給与を受ける者年末調整されない給与+暗号資産所得が20万円超

「20万円以下なら非課税」の誤解

「暗号資産の利益が年間20万円以下なら非課税」という情報が広まっているが、これは不正確である。正確には「年末調整を受けた給与所得者で、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下の場合に、所得税の確定申告が不要になる」という制度である(所得税法第121条第1項第1号)。

この申告不要制度について、以下の3点に注意が必要である。

①住民税の申告は別途必要である。確定申告不要の制度は国税(所得税)のみの特例であり、住民税にはこの制度がない。暗号資産の所得が20万円以下であっても、原則として住民税の申告が必要である。

②還付申告をする場合は20万円以下でも申告が必要である。医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)の適用を受けるために確定申告をする場合は、暗号資産の所得が20万円以下であっても合わせて申告しなければならない。

③住民税申告のみの場合は各自治体窓口で直接行うのが手軽。20万円以下の利益額のために税理士を雇うのはコスパが悪いため、自治体で直接やり方を聞きながら行う方が効率的。

確定申告に必要な書類

【結論】暗号資産の確定申告に添付が必要な書類はない。ただし、税務調査に備えて損益計算の結果や取引履歴のCSVファイル、ウォレットアドレス一覧と年末時点のウォレットのスクリーンショットの保管(7年間)を推奨する。

書類入手方法備考
暗号資産の計算結果自作・または国税庁HPからDL損益計算ソフトで計算したものが望ましい
取引履歴(CSVファイル)各取引所からダウンロードCSV形式での保存が望ましい
年間取引報告書各取引所からダウンロード(PDF)複数取引所・ウォレットで取引の場合、
損益額は必ずしも正しいものではない
ウォレットの期末残高スクリーンショット12月31日時点のウォレット画面をキャプチャ取引所以外のウォレットがある場合
ウォレットアドレスMetaMask等のウォレットアプリで確認DeFi取引がある場合に必要

取引履歴は各取引所の管理画面からダウンロードできる。各損益計算ソフト会社のHPでDL方法のマニュアルがあることも多い。

DeFi取引がある場合の追加資料

DeFi(分散型金融)やNFTの取引がある場合は、取引所の年間取引報告書だけでは情報が不足する。以下の資料を追加で準備する必要がある。

ウォレットごとの期末保有数量:12月31日時点で保有するすべてのウォレットの残高画面をスクリーンショットで保存し、トークンの種類・数量をExcelにまとめる。LPトークンや債権トークンも記載が必要である。

ウォレットアドレス:MetaMask等のウォレットアプリのアドレスを控えておく。オンチェーンの取引履歴を取得する際に必要となる。

トークンの特定情報:暗号資産は18,000種類以上存在し(CoinGecko登録数)、同じシンボル名で異なるトークンが存在するケースが多い。CoinGecko API IDやコントラクトアドレスでトークンを正確に特定しておくことが重要である。

これらの資料は税務調査の際に提示を求められる場合があるため、損益計算が終わった後も必ず保管しておく。

年間取引報告書の読み方

【結論】年間取引報告書には、年始残高・年中の購入金額・売却金額・手数料など10項目が記載される。複数の取引所を利用している場合は、すべての取引所の報告書を合算して「暗号資産の計算書」に入力する(国税庁FAQ 2-9)。

年間取引報告書の記載項目は以下のとおりである。

項目内容
①年始数量1月1日現在の保有数量
②年中購入数量年中に購入した数量
③年中購入金額年中に購入した金額(取得価額)
④年中売却数量年中に売却した数量
⑤年中売却金額年中に売却した金額
⑥移入数量購入以外で口座に受け入れた数量(入金・エアドロップ等)
⑦移出数量売却以外で口座から払い出した数量(出金・送金等)
⑧年末数量12月31日現在の保有数量
⑨損益合計証拠金取引の損益合計額
⑩支払手数料取引所に支払った手数料

特殊な取引は以下のように記載される。

取引報告書上の計上方法
エアドロップ等の無償交付購入数量・購入金額に時価で計上
暗号資産での商品購入(円転)売却数量・売却価額に計上
暗号資産同士の交換交換元を売却、交換先を購入としてそれぞれ計上

計算書を使った所得金額の計算

【結論】国税庁が提供する「暗号資産の計算書(総平均法用)」に年間取引報告書の数値を入力することで、所得金額を算出できる。複数取引所を利用している場合は、すべての取引所分を合算する(国税庁FAQ 2-8)。

計算例(国税庁FAQ 2-8)

A取引所とB取引所でBTCを取引した場合の計算例を示す。

取引データ(合算後):

項目金額・数量
年中購入数量6.5BTC
年中購入金額4,037,800円
年中売却数量5.0BTC
年中売却金額5,295,000円

計算ステップ:

① 総平均単価:4,037,800円 ÷ 6.5BTC = 621,200円
② 譲渡原価:621,200円 × 5.0BTC = 3,106,000円
③ 所得金額:5,295,000円 − 3,106,000円 = 2,189,000円

この所得金額2,189,000円を確定申告書の「雑所得」欄に記載する。

前年以前から取引がある場合

前年以前から暗号資産を保有している場合は、前年末の数量・取得価額を「年始残高」として計算書に入力する。年始残高を含めて総平均単価を計算することで、正確な譲渡原価が算出される。

計算書のダウンロードは国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm )から可能である。

確定申告の手順と期限-「雑所得(その他)」の場合-

【結論】確定申告の期限は毎年3月15日(土日の場合は翌月曜日)である。申告書の提出方法はe-Tax(電子申告)、郵送、税務署窓口の3通りがある。暗号資産の所得は「雑所得(その他)」として確定申告書の第二表に記載する(所得税法第120条)。

申告の手順

ステップ内容
1. 取引履歴の収集全取引所から年間履歴をダウンロード
2. 所得金額の計算損益計算ソフトや「暗号資産の計算書」、エクセルで所得金額を算出
3. 申告書の作成確定申告書の「雑所得(その他)」欄に所得金額を記載
4. 申告書の提出e-Tax、郵送、または税務署窓口で提出
5. 納税3月15日までに所得税を納付(振替納税・クレジットカード納付も可)

申告期限と納付方法

項目期限・方法
申告期限翌年3月15日(土日の場合は翌月曜日)
納付期限申告期限と同日(振替納税の場合は4月中旬頃)
提出方法e-Tax(推奨)、郵送、税務署窓口
納付方法振替納税、ダイレクト納付、クレジットカード、コンビニ、窓口

e-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば自宅から申告が完了する。

所得区分は必ずしも「雑所得(その他)」になるとは限らないため、以下の記事も確認の上、判断が必要。

実務上の注意点

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

【結論】暗号資産の損益計算では、利益が出た年だけでなく取引開始年度から遡って一貫して計算する必要がある。また、損益計算ではxlsxかCSVファイル形式の取引履歴を使う方が多い。

取引開始年度からの一貫計算が必要

暗号資産の損益計算は、当年の取引だけで完結しない。前年末の保有数量と取得価額が当年の計算の起点になるため、取引を開始した年度から遡って一貫した計算が必要である。過去に申告していなかった場合は、取引開始年度まで遡って計算し直す必要がある。

年間取引報告書のPDFは使わない

損益計算ソフトに取り込む場合は原則xlsxかCSVファイル形式の取引履歴を使用する。年間取引報告書は概要の確認には使えるが、個別取引の詳細が含まれないため、厳密な損益計算を行う場合は使用できない。

取引履歴の文字化けに注意

取引所からDLした取引履歴を開いたり、編集したりすると文字化けするリスクがあるため、中身を確認する際はコピーを取ることを推奨する。

損益計算の実務フロー

損益計算の実務は以下のステップで行う。

ステップ内容
1. 取引履歴の取得取引所からCSVダウンロード。ウォレットはアドレスからオンチェーン履歴を取得
2. 損益計算ソフトへ取込取引履歴をソフトにインポート
3. 取引内容の確認取引の種別(売却・交換・送金等)が正しく分類されているか確認
4. 残高調整ソフトの算出した保有数量と実際の保有数量に乖離がある場合、調整を行う
5. 損益額の確定調整後の最終的な損益額を算定し、税額を計算

よくある質問(FAQ)

Q1. 暗号資産の利益が20万円以下なら申告しなくてよいですか?

所得税の確定申告は不要となる場合がある。ただし、年末調整済みの給与所得者に限られ、住民税の申告は別途必要である(所得税法第121条第1項第1号)。医療費控除やふるさと納税で還付申告をする場合は、20万円以下でも併せて申告が必要となる。

Q2. 暗号資産の取引履歴はどこから取れますか?

国内・海外CEXの場合は各サイトからDL可能。メタマスクなどのウォレットを用いて取引をしている場合は損益計算ソフトを用いて取引履歴を取得するが損益計算ソフトごとに取引取得能力に差がある。

Q3. 複数の取引所を使っている場合はどう計算しますか?

すべての取引所の年間取引報告書を合算して計算する。もしくは損益計算ソフトに取引履歴を取り込んで計算する。

Q4. 確定申告の期限を過ぎた場合はどうなりますか?

期限後でも申告は可能だが、無申告加算税や延滞税が課される可能性がある。期限後申告の場合、原則として無申告加算税(15〜20%)が課される。ただし、期限後1か月以内に自主的に申告した場合は加算税が免除される場合がある(国税通則法第66条)。

Q5. 損益計算ソフトを使わずに自分で計算できますか?

国内取引所のみの取引であれば、国税庁の「暗号資産の計算書」で計算可能である。年間取引報告書の数値を計算書に入力するだけで所得金額が算出される(国税庁FAQ 2-8)。DeFi・NFT・海外取引所の取引がある場合は、損益計算ソフトの利用を推奨する。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

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専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第35条(雑所得)
  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 所得税法第120条(確定所得申告)
  • 所得税法第121条第1項第1号(確定所得申告を要しない場合)
  • 所得税法第48条の2(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)
  • 国税通則法第66条(無申告加算税)
  • 国税庁FAQ 2-7(暗号資産の取得価額や売却価額が分からない場合)
  • 国税庁FAQ 2-8(年間取引報告書を活用した暗号資産の所得金額の計算)
  • 国税庁FAQ 2-9(年間取引報告書の記載内容)
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