暗号資産の借入自体は課税イベントではない。課税が発生するのは借り入れた暗号資産を売却・交換・決済に使用した時点である。
- 理由① 借入は返還義務を伴う取引であり、経済的利益の確定を伴わない。担保の預入れも所有権の移転ではないため、借入・担保預入れのいずれも所得を構成しない。この点はCeFiの信用取引と同じ原理である。
- 理由② 借り入れた暗号資産を売却・スワップ・決済に使用した時点で、通常の暗号資産取引と同様に譲渡損益が発生する。借入であっても「使用」の段階では課税を免れない点を見落とすと、申告漏れに直結する。
- 条件 法人が借り入れた暗号資産は返還義務があるため「自己の計算において有する」に該当せず、期末時価評価の対象外となる。ただし自己保有分と借入分を同一ウォレットで管理している場合、区分の立証が実務上の課題となる。
所得税法第36条第1項 / 法人税法第61条 / 国税庁FAQ 3-1-8
この記事でわかること
- DeFiで暗号資産を借り入れた場合の課税関係(個人・法人)
- 借入時の帳簿価額の処理パターン(時価計上 vs 0円計上)
- 借入暗号資産の返済時の損益計算方法
- 法人の期末時価評価における借入暗号資産の取扱い(FAQ3-1-8)
- 損益計算ソフトCryptorchにおける処理方針
DeFi借入の課税関係
【結論】暗号資産の借入時点では、個人・法人ともに課税は発生しない。返還義務を伴うため経済的利得がなく、所得税法第36条第1項の「収入すべき金額」に該当しない。課税が発生するのは、借り入れた暗号資産を売却・交換・決済に使用した時点である。
DeFiの借入(Aave・Compound等)は、担保として預け入れた暗号資産に対し、プロトコルから別の暗号資産を借り入れる仕組みである。借り入れた暗号資産には返還義務があるため、借入時点では所得が発生しない。
| 取引 | 課税の有無 | 所得計算 |
|---|---|---|
| 借入のみ(保有) | 課税なし | — |
| 借り入れた暗号資産を売却 | 課税あり | 売却価額 − 譲渡原価 |
| 借り入れた暗号資産で他の暗号資産を購入 | 課税あり | 購入した暗号資産の時価 − 譲渡原価 |
| 借り入れた暗号資産で商品・サービスを購入 | 課税あり | 商品等の価額 − 譲渡原価 |
| 返済(同種・同量の暗号資産で返却) | 下記参照 | 返済用暗号資産の取得価額と借入時帳簿価額の差額 |
関係法令:所得税法第36条第1項 / 法人税法第61条
帳簿価額の2つの処理パターン
【結論】借り入れた暗号資産の帳簿価額には、借入時の時価を用いる方法(パターンA)と取得原価を0円とする方法(パターンB)がある。企業会計基準委員会の実務対応報告第38号の考え方を援用すると、パターンAが現時点の実務では最も妥当である。
パターンA:借入時の時価で計上
借入時点の暗号資産の時価を帳簿価額とする方法である。
- 帳簿上に借入暗号資産の存在を表現できる
- 期末時価評価の際の損益額が穏やかになりやすい
企業会計基準委員会の実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」では、預託者から預かった暗号資産の資産・負債の認識において同様の考え方を採用している。この取扱いを援用するとパターンAが妥当である。
パターンB:取得原価を0円で計上
借入により暗号資産を取得するためのコストは存在しないとして、取得原価を0円とする方法である。
- 帳簿上に借入暗号資産の存在が反映されない
- 他トークン購入時に購入トークンの時価が全額利益として計上される可能性がある
いずれのパターンでも最終的な損益は一致するが、期中の損益計上タイミングが異なる。CryptorchではパターンA(時価計上)のみを採用している。
返済時の損益計算
【結論】返済時の損益は、返済用に取得した暗号資産の取得価額と借入暗号資産の帳簿価額との差額で算定する(所得税法第36条第1項、第37条第1項)。
ケース1:借入暗号資産を使用せず返済
借入時:1,000USDC × 100円 = 100,000円(帳簿価額)
返済時:1,000USDC × 104円 = 104,000円(取得価額)
104,000円 − 100,000円 = △4,000円
返済用暗号資産の取得価額と借入時帳簿価額との差額が損失となる。
ケース2:借入暗号資産を使用後に返済
借り入れた暗号資産を使用した時点で通常の譲渡損益を計算し、その後、返済用暗号資産を取得して同様の返済処理を行う。
法人の期末時価評価と借入暗号資産
【結論】法人が借り入れた暗号資産は評価対象となりうるが、「自己の計算において有する」暗号資産には該当しないため、評価損益の益金・損金算入は不要である(国税庁FAQ3-1-8、法人税法第61条第2項)。
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 「有する」に該当 | 該当しうる |
| 「自己の計算において有する」に該当 | 該当しない |
| 時価評価額の算定 | 必要 |
| 評価損益の益金・損金算入 | 不要 |
借入暗号資産を譲渡した場合は暗号資産信用取引に該当し、未決済時はみなし決済損益の計上が必要である(法人税法第61条の5)。
実務上の注意点
【結論】帳簿価額の処理パターンは年度を通じて一貫適用する必要がある。途中変更は損益の整合性を損なう。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
- パターン選択後は年度内で変更しない
- 雑所得は他区分との損益通算不可(所得税法第69条第1項)
- ロスカットは担保暗号資産の譲渡として処理
- 借入利息は必要経費(所得税法第37条第1項)
よくある質問(FAQ)
Q1. DeFiで暗号資産を借りただけで税金はかかりますか?
かからない。借入は返還義務を伴い経済的利得がないため、所得税法第36条第1項の収入に該当しない。
Q2. 借りたETHを売却した場合、申告は必要ですか?
必要である。売却価額から譲渡原価を差し引いた金額が雑所得となる。
Q3. 法人の期末評価はどうなりますか?
評価損益の計上は不要である。借入暗号資産は「自己の計算において有する」に該当しないためである。
Q4. パターンAとBはどちらが妥当ですか?
パターンA(時価計上)が実務上妥当である。企業会計基準委員会実務対応報告第38号の考え方を援用できる。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。
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専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第36条第1項
- 所得税法第37条第1項
- 所得税法第69条第1項
- 法人税法第61条第2項
- 法人税法第61条の5
- 法人税法施行令第118条の7
- 企業会計基準委員会 実務対応報告第38号
