暗号資産の寄附と法人税|損金算入限度額

結論

法人が暗号資産で寄附を行うと、寄附金の損金算入制限と譲渡損益の認識という二重の課税関係が発生する。

  • 理由① 寄附時の時価が「寄附金の額」となり、損金に算入できるのは損金算入限度額の範囲内に限られる。限度額を超える部分は全額損金不算入となるため、含み益がある暗号資産ほど課税負担が重くなる。
  • 理由② 寄附した暗号資産の時価と帳簿価額の差額は譲渡損益として別途認識が必要。寄附金の損金不算入と合わせ、1つの寄附行為から2つの課税関係が生じる点が現金寄附との決定的な違いである。
  • 条件 国・地方公共団体への寄附は全額損金算入、指定寄附金は限度額が別枠で計算される。寄附先の区分により課税インパクトが大きく変わるため、寄附先の選定が税務戦略上の鍵となる。

法人税法第37条・第61条 / 国税庁FAQ 1-4

この記事でわかること

  • 暗号資産で寄附した場合の「寄附金の額」の算定方法
  • 寄附した法人側に生じる譲渡損益の計算
  • 一般寄附金と認定NPO法人等への寄附の損金算入限度額の違い
  • 寄附を受けた法人側の受贈益の取扱い
  • 暗号資産の寄附時の時価の算定基準
目次

暗号資産の寄附における課税の全体構造

【結論】暗号資産で寄附を行うと、税務上は「時価で売却してから金銭で寄附した」のと同じ課税関係が生じる。寄附した法人には①譲渡損益の計上と②寄附金の損金算入制限の2つの課税関係が同時に発生する(法人税法第37条、第61条)。

暗号資産で寄附を行った場合の法人税上の課税関係は、次の2段階で整理できる。

第1段階:譲渡損益の認識

法人が暗号資産を無償で譲渡(寄附)した場合、個人の所得税法第40条(みなし譲渡)のような個別規定が適用されるのではなく、法人税法の一般原則により「時価による有償譲渡による収益」と「同額の寄附金の支出」が同時に行われたものとして処理される(いわゆる両建経理。法人税法第22条第2項、第37条第7項)。帳簿価額(取得価額)と時価の差額が譲渡益(または譲渡損)として計上される。結果として、暗号資産で寄附を行う行為は「時価で売却してから金銭で寄附した」のと同じ課税関係となる。

第2段階:寄附金の損金算入制限

寄附した暗号資産の時価相当額が「寄附金の額」として経理処理される。この寄附金は無制限に損金算入できるわけではなく、損金算入限度額の範囲内においてのみ損金に算入される。限度額を超える部分は損金不算入(自己否認)として申告調整が必要となる。

課税関係 内容 計算の基準
譲渡損益 時価 − 帳簿価額 寄附時の時価
寄附金の額 寄附時の暗号資産の時価 寄附時の時価
受贈益(相手方) 受領時の暗号資産の時価 受領時の時価

計算例|法人が暗号資産を認定NPO法人に寄附した場合

【結論】帳簿価額500万円の4BTCを寄附した場合、譲渡利益40万円が益金に算入され、かつ寄附金540万円が損金算入限度額の範囲内で損金に算入される(国税庁FAQ1-4)。

以下はFAQ1-4の計算例に基づく。

前提条件:

  • 保有BTC:4BTC(帳簿価額5,000,000円)
  • 寄附先:認定NPO法人A
  • 寄附日前日の終値:1BTC = 1,350,000円

ステップ1:寄附金の額の算定

寄附金の額 = 寄附時の時価 = 1,350,000円 × 4BTC = 5,400,000円

ステップ2:譲渡損益の算定

譲渡利益 = 時価5,400,000円 − 帳簿価額5,000,000円 = 400,000円(益金算入)

ステップ3:寄附金の損金算入限度額の判定

認定NPO法人への寄附は「特定公益増進法人等に対する寄附金」に該当し、一般寄附金とは別枠で損金算入限度額が設けられている。限度額を超える部分は損金不算入となり、申告書上で加算調整する。

損金算入限度額の計算

【結論】寄附金の損金算入限度額は寄附先の法人区分によって異なる。一般寄附金は(資本金等の額×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4、特定公益増進法人等への寄附は(資本金等の額×0.375%+所得金額×6.25%)×1/2で算出し、後者は一般寄附金とは別枠で適用される(法人税法第37条)。

寄附先別の損金算入限度額

寄附先の区分 限度額の計算式 備考
国・地方公共団体 全額損金算入 限度額なし
指定寄附金 全額損金算入 財務大臣が指定するもの
認定NPO法人・特定公益増進法人等 (資本金等の額×当期月数/12×0.375%+所得金額×6.25%)×1/2 一般寄附金とは別枠
上記以外(一般寄附金) (資本金等の額×当期月数/12×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4

認定NPO法人等への寄附で別枠限度額を超えた部分は、さらに一般寄附金の限度額の枠内で損金算入できるかを判定する。両方の限度額を超えた部分のみが最終的に損金不算入となる。

受贈側の取扱い

寄附を受けた法人は、その暗号資産の受領時の時価相当額を収益(受贈益)として法人税の課税対象に含める。受贈益の計上時期は暗号資産を受領した事業年度である。

暗号資産の寄附時の時価の算定方法

【結論】寄附時の時価は、原則として暗号資産を受領した時点の市場価格を用いる。取引相場に大きな変動がない場合は前日の最終売買価格を用いることも認められる(国税庁FAQ1-4)。

暗号資産の時価の算定にあたっては、「価格等公表者」が公表する売買価格を参照する。価格等公表者とは、暗号資産の売買価格等を継続的に公表し、かつ、その公表する売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えている場合におけるその公表をする一定の者をいう。

時価算定のポイントは次のとおりである。

  • 原則:受領した時の市場価格(取引所の約定価格等)
  • 例外:取引相場に大きな変動がなければ、前日の最終売買価格(終値)も可
  • 複数の取引所で価格が異なる場合:その暗号資産の取引に最も通常使用している取引所の価格を用いるのが合理的

実務上の注意点

【結論】暗号資産による寄附は「利確+寄附」の二重の課税関係が生じるため、含み益が大きい暗号資産ほど税負担が重くなる。寄附を検討する際は、譲渡損益と損金算入限度額の両方を事前に試算すべきである。

損益計算や法人の暗号資産に関する申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の法人税務を税理士に依頼する」をご覧ください。

注意点①:含み益のある暗号資産の寄附は税負担が大きい

暗号資産で寄附を行うと、金銭で寄附する場合と異なり、寄附金の損金算入とは別に譲渡利益が課税される。たとえば帳簿価額100万円・時価500万円のBTCを寄附すると、400万円の譲渡益が益金に算入されたうえで、500万円の寄附金のうち限度額を超える部分が損金不算入となる。

注意点②:個人の暗号資産を法人に移す場合も同様

個人が所有する暗号資産を自分の法人に移す場合も、実質的にはすべて利益を確定したという扱いとなる(所得税法第40条、所得税法施行令第87条)。この場合、個人側に暗号資産の譲渡による所得(原則として雑所得)が発生する。現物出資・売買それぞれの課税関係と低額譲渡リスクの詳細は「暗号資産の法人設立スキーム」で解説している。

ICO等で発行されるトークンが何の権利も表象しない場合、資金提供者が行う暗号資産の拠出は「反対給付を伴わない寄附」と認識される場合がある。法人間であれば、拠出した法人は寄附金(損金算入限度額の適用)、受領した法人は受贈益の課税関係が生じる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 暗号資産で寄附すると「利確」扱いになるのですか?

なる。暗号資産を寄附のために移転した場合、税務上は時価で譲渡したものとみなされ、帳簿価額との差額が譲渡損益として計上される(法人税法第61条)。金銭で寄附する場合と異なり、含み益がある暗号資産の寄附は追加の税負担が生じる。

Q2. 個人が認定NPO法人に暗号資産で寄附した場合、寄附金控除は受けられますか?

受けられる。認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)などに対して一定の要件を満たす暗号資産の寄附を行った場合、寄附金控除(所得控除)または税額控除の適用を選択できる(所得税法第78条、租税特別措置法第41条の18の2)。ただし、個人側にもみなし譲渡所得が発生する点に注意が必要である。

Q3. 寄附を受けた法人側にはどのような課税が生じますか?

受贈益として法人税の課税対象となる。寄附を受けた法人は、暗号資産の受領時の時価相当額を収益(受贈益)に計上する(法人税法第22条第2項)。受贈益の計上時期は暗号資産を受領した事業年度である。

Q4. 寄附金の損金算入限度額を超えた場合はどうなりますか?

超えた部分は損金不算入となる。法人税の確定申告において、限度額を超える寄附金額を「寄附金の損金不算入額」として所得に加算する(法人税法第37条第1項)。認定NPO法人等への寄附の場合、別枠限度額を超えた部分は一般寄附金の枠でさらに判定を行う。

損益計算や法人の暗号資産に関する申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の法人税務を税理士に依頼する」をご覧ください。

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暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第40条
  • 所得税法第78条
  • 所得税法施行令第87条
  • 法人税法第22条第2項
  • 法人税法第37条
  • 法人税法第61条
  • 租税特別措置法第41条の18の2
  • 租税特別措置法第66条の11の3
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