暗号資産の廃品回収サービスの税金|不要トークンの処分

結論

廃品回収サービスで暗号資産を1円売却すれば「引取価格−取得価額」の損失を確定できる。ただし低額譲渡の論点に注意が必要。

  • 理由① 価値がほぼゼロのトークンでも、保有し続ける限り損失は実現しない。廃品回収サービスによる売却は「譲渡」に該当するため、取得価額との差額を雑所得の計算上マイナスとして確定させる唯一の手段となる。
  • 理由② 確定した損失は同年の他の暗号資産の利益と雑所得内で通算できる。年末に含み益のあるポジションを整理する前に、不要トークンの損失を先に確定させることで課税所得を圧縮する実務テクニックとして活用される。
  • 条件 引取価格が時価の70%未満の場合は低額譲渡に該当し得る。その場合、実際の引取価格ではなく時価で収入金額を再計算する必要があり、想定した損失額が得られない可能性がある。時価がほぼゼロであることの客観的な裏付けが重要。

所得税法第36条第1項・第59条第1項

この記事でわかること

  • 廃品回収サービスを利用した場合の所得金額の計算方法
  • 低額譲渡に該当するかの判定基準(時価の70%ライン)
  • セルフバーン・セルフGoxの損失計上の論点
  • NFTの廃品回収における注意点
  • 損失を計上する際の課税リスク
目次

廃品回収サービスの仕組みと課税関係

【結論】廃品回収サービスの利用は、暗号資産の「譲渡」に該当する。引取価格(1円など)が収入金額となり、取得価額との差額が所得金額(通常はマイナス=損失)となる(所得税法第36条第1項)。

廃品回収サービスでは、取引所で値段がつかなくなった暗号資産やNFTを、業者が少額(1円など)で買い取る。利用者にとっては、ウォレットに残った不要トークンを整理できるだけでなく、取得価額との差額を損失として確定申告に反映できるメリットがある。

税務上、この取引は通常の暗号資産の売却と同じ扱いである。収入金額は引取価格(1円など)、譲渡原価は取得時の価額で計算する。

所得金額の計算方法

【結論】所得金額は「引取価格 − 取得価額 × 譲渡数量」で算出する。取得価額が大きいほど損失額も大きくなる(所得税法第36条第1項、第37条第1項)。

以下は、暗号資産の廃品回収サービスを利用した場合の計算例である。

計算例:TITANの廃品回収

項目内容
購入日2021年6月16日
購入価額700万円(1TITAN=7,000円 × 1,000TITAN)
廃品回収日2021年12月31日
引取価格1円(全数量を引取)

所得金額の計算:

1円 −(700万円 ÷ 1,000TITAN)× 1,000TITAN = △6,999,999円
計算要素金額
①収入金額1円
②1単位当たりの取得価額7,000円
③譲渡数量1,000TITAN
④所得金額(①−②×③)△6,999,999円

この損失は、同年の暗号資産取引の利益(雑所得内)と通算できる。ただし、雑所得の損失は給与所得や事業所得など他の所得区分とは損益通算できない(所得税法第69条第1項)。

低額譲渡に該当するかの判定

【結論】廃品回収に出す暗号資産は通常、取引所で値段がつかない(時価がほぼ0円)ものであるため、低額譲渡に該当する可能性は低い。ただし「廃品回収サービスに出す=低額譲渡に該当しない」ではない点に注意が必要である(所得税法第59条第1項、国税庁FAQ2-10)。

個人が暗号資産を時価の70%相当額に満たない価額で譲渡した場合、低額譲渡として時価の70%相当額を収入金額とみなす規定がある。

判定基準内容
低額譲渡の閾値引取価格 < 時価 × 70%
該当した場合の収入金額時価の70%相当額
根拠条文所得税法第59条第1項、所得税法施行令第169条

廃品回収に出すトークンは、そもそも市場で値段がつかないものがほとんどである。時価が0円(またはそれに近い金額)であれば、1円での引取りは「時価の70%未満」に該当しないため、低額譲渡の問題は生じない。

一方、まだ取引所で一定の価格がついている暗号資産を廃品回収サービスに出した場合は、低額譲渡の判定が必要になる。

実務上の注意点

【結論】廃品回収による損失計上には、低額譲渡以外にも「詐欺損失・資産損失としての認定」「租税回避の否認規定の適用」という2つの課税リスクがある。限界事例の判断は税理士に相談すべきである。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

損失の性質に関するリスク

廃品回収で計上した損失について、税務調査で以下の指摘を受ける可能性がある。

  • 詐欺損失・資産損失としての認定:廃品回収による「譲渡損失」ではなく、それ以前の詐欺や価値喪失による「資産損失」として認定された場合、必要経費への算入が制限される
  • 租税回避の否認:損失を意図的に作り出す目的で廃品回収サービスを利用したと認定された場合、否認規定の適用を受ける可能性がある

セルフバーンとセルフGox

廃品回収サービスの利用以外にも、価値のないトークンを処分する方法として以下の論点がある。

  • セルフバーン:自分で暗号資産やNFTをバーンアドレス(誰もアクセスできないアドレス)に送付して消滅させる行為。損失として認められるかは明確な規定がない
  • セルフGox:暗号資産送付時に誤ったアドレスを入力し、暗号資産を喪失する行為。こちらも損失計上の可否について確立した取扱いがない

いずれも、廃品回収サービスのように「譲渡」の形式をとっていないため、譲渡損失として計上できるかが論点となる。

NFTの廃品回収

NFTの廃品回収サービスを利用して、保有するNFTを1円などの低額で業者に引き取ってもらう場合も、暗号資産の場合と同様の課税関係となる。廃品回収に出すようなNFTは通常、時価がないことがほとんどであるため、低額譲渡に該当する可能性は低い。ただし、詐欺損失・資産損失として認定されるリスクについては同様に留意が必要である。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産の損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 廃品回収サービスで損失を出して、他の暗号資産の利益と相殺できますか?

できる。同じ年の暗号資産取引で生じた利益(雑所得)と通算可能である(所得税法第69条第1項)。ただし、雑所得の損失は給与所得など他の所得区分とは損益通算できない。

Q2. 廃品回収サービスを使わず、自分でバーンアドレスに送れば同じ効果がありますか?

現時点で明確な規定がない。セルフバーンは「譲渡」の形式をとっていないため、譲渡損失として認められるかは不確定である。損失を確実に計上したい場合は、廃品回収サービスを利用して「譲渡」の形式を整えるほうが安全である。

Q3. まだ取引所で少額の価格がついているトークンを廃品回収に出しても問題ありませんか?

低額譲渡の判定が必要になる。引取価格が時価の70%相当額に満たない場合、時価の70%相当額が収入金額とみなされる可能性がある(所得税法第59条第1項、所得税法施行令第169条)。

Q4. NFTも廃品回収サービスで処分できますか?

できる。NFTの廃品回収も暗号資産と同じ課税関係となる。廃品回収に出すようなNFTは通常時価がないため、低額譲渡に該当する可能性は低い。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

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専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 所得税法第37条第1項(必要経費)
  • 所得税法第59条第1項(みなし譲渡・低額譲渡)
  • 所得税法施行令第169条(低額譲渡の基準)
  • 所得税法第69条第1項(損益通算の制限)
  • 国税庁FAQ2-10(暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い)
  • 国税庁FAQ2-11(暗号資産取引で損失が生じた場合の取扱い)
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