BCGのプレイ報酬は原則として雑所得の課税対象。ただしゲーム内でしか使えないトークンは課税対象外であり、「外部に持ち出せるか」が課税の分かれ目となる。
- 理由① ゲーム内で獲得したトークンが取引所で売却可能、または他の暗号資産と交換可能な場合は経済的利益が実現しており課税対象となる。一方、ゲーム内でしか使用できず外部に持ち出せないトークンは課税対象外。この判定がBCG税務の起点である。
- 理由② BCGの取引履歴はブロックチェーンに記録されないケースが多く、1件ずつの損益計算が事実上不可能な場合がある。国税庁FAQの「簡便法」(期末一括評価)や実務上の「概算計算」で所得金額を算出するが、いずれも正確性に限界がある。
- 条件 簡便法には構造的問題(外部送金の捕捉漏れ・期末レートによる乖離等)があるため、そのまま適用すると実態と異なる所得額が算出される。簡便法の限界を理解した上で補正を加えるか、概算計算との併用で蓋然性の高い所得額を導く必要がある。
所得税法第35条・第36条第1項 / 国税庁NFT FAQ 問8
この記事でわかること
- BCGの報酬が課税対象になる場合・ならない場合の判定基準
- 国税庁FAQの簡便法の算式と具体的な計算例
- 簡便法の5つの実務上の問題点
- 実務で使われる概算計算の計算式と処理方法
- ブリード(NFT作成)やスカラーシップ報酬の課税関係
BCGの課税関係|課税される場合・されない場合
【結論】BCGの報酬は、ゲーム内通貨が外部の暗号資産やNFTと交換可能であれば課税対象(雑所得)となり、ゲーム内でしか使用できない場合は課税対象外である(NFT FAQ問8、所得税法第36条第1項)。
NFT FAQ問8では、BCGをプレイして得たゲーム内通貨(トークン)について、次のように整理している。
| 条件 | 課税関係 |
|---|---|
| ゲーム内通貨が暗号資産やNFTと交換可能 | 課税対象(雑所得) |
| ゲーム内通貨がゲーム内でしか使用できない(他の資産と交換不可) | 課税対象外 |
課税対象となる場合の所得金額は、次の算式で計算する。
雑所得の金額 = BCGの収入金額 − BCGの必要経費
- 収入金額:BCGで得たゲーム内通貨の総額。取得の都度評価するのが原則だが、月末または年末に一括で評価することもできる(NFT FAQ問8注1)
- 必要経費:BCGの報酬を得るために使用したゲーム内通貨の取得価額の総額(NFT FAQ問8注2)
暗号資産に直接交換できないなどの理由でゲーム内通貨の時価算定が困難な場合は、時価を0円として差し支えない。この場合、そのゲーム内通貨を「暗号資産と交換できる他のトークン」に交換した時点で課税される(NFT FAQ問8注1)。時価0円計上の根拠はハードフォーク(国税庁FAQ 1-6)の準用であり、詳細は「エアドロップの税金」で解説している。
BCGの具体的な課税イベントについては「STEPNの税務処理|歩いて稼ぐBCGの課税イベントを実務から解説」を参照。
国税庁FAQの簡便法|算式と計算例
【結論】簡便法は、ゲーム内通貨ベースで年間の増減額を算出し、年末に一括で円換算する方法である。取引の都度評価する煩雑さを回避できるが、実務上の課題が多い(NFT FAQ問8)。
BCGでは、ゲーム内通貨の取得や使用が頻繁に行われるため、取引の都度評価するのは煩雑である。そこでNFT FAQ問8は、年末に一括で評価する「簡便法」を認めている。
簡便法の算式
ステップ1:ゲーム内通貨ベースの所得金額を算出
① ゲーム内通貨ベースの所得金額 = ② − ③ − ④
- ② その年の12月31日に所有するゲーム内通貨の総額
- ③ その年の1月1日に所有するゲーム内通貨の総額
- ④ その年に購入したゲーム内通貨の総額
ステップ2:円換算して雑所得を算出
⑤ 雑所得の金額 = ① × ⑥ 年末の暗号資産への換算レート
年の途中で暗号資産に交換したゲーム内通貨がある場合は、交換で取得した暗号資産の価額を雑所得の金額に加算する。
計算例(STEPNの場合)
前提条件:
- 2022年1月1日時点:ゲーム内ウォレットに200SOL
- 2022年11月1日:日本円で購入した300SOLをゲーム内ウォレットに送金
- 2022年12月31日時点:ゲーム内ウォレットに100SOLと靴NFT1個(3,000SOLで取得)
- 期中にゲーム内ウォレットから外部に4,000SOLを移動
- SOLの年末時点の時価:1SOL=1,300円
パターン1:ゲーム内通貨に暗号資産とNFTの両方を含める場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| ② 年末残高(100SOL + 靴NFT3,000SOL相当) | 3,100SOL |
| ③ 年始残高 | 200SOL |
| ④ 年中購入額 | 300SOL |
| ① = ② − ③ − ④ | 2,600SOL |
| ⑤ = ① × 1,300円 | 3,380,000円 |
ただし、このパターンでは期中にゲーム内ウォレットから外部に移動した4,000SOLに対する所得が反映されない。
パターン2:ゲーム内通貨に暗号資産のみを含め、NFTは含めない場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| ② 年末残高(SOLのみ) | 100SOL |
| ③ 年始残高 | 200SOL |
| ④ 年中購入額 | 300SOL |
| ① = ② − ③ − ④ | △400SOL |
| ⑤ = ① × 1,300円 | 0円(マイナスのため) |
パターン2では、靴NFTの購入・売却は原則法で別途計算する必要があるが、取引履歴がないBCGでこの計算を行うのは困難である。
簡便法の問題点
【結論】FAQ簡便法には、①外部送金で所得が計算から漏れる、②購入額把握に結局ゲーム内履歴が必要、③期末一括評価で実態と乖離した所得が算出される、という3つの構造的問題がある。そのまま適用すると実態に即した損益が算出できないケースが大半である(NFT FAQ問8)。
上記の計算例でも、パターン1では期中に外部へ移動した4,000SOLの利益が計算に含まれず、パターン2ではNFTを原則法で別途計算する必要が生じるなど、いずれも実務でそのまま使える状態ではない。加えて、年末年始のトークン数量を記録していない納税者が大半であること、BCGのサービス終了によりデータが消失するリスクも問題を深刻にしている。
簡便法の各問題点の詳細な分析と、問題点をクリアした改善版の計算式(簡便法(改))については「国税庁BCG簡便法の3つの問題点|期末一括評価が生む乖離と対応策」で解説している。
実務で用いる概算計算の方法
【結論】BCGでは取引履歴が取得できないケースが大半であるため、実務上はゲーム内ウォレットへの入出金数量と期首期末の残高から概算で増減数量を算出し、月数按分してエアドロップとして計上する方法が用いられる。
概算計算の算式
(A) = 期首保有数量 + 期中入金数量 − 期末保有数量 − 期中出金数量
| (A)の結果 | 処理方法 |
|---|---|
| 正の値 | (A) ÷ 計算期間の月数 = 各月の概算増加数量 → 各月初日の時価でエアドロップとして利益計上 |
| 負の値 | 期末にトークンの取得原価分を損失計上 |
計算上の注意点
- (A)が正の場合:概算増加数量を計算期間(またはゲームプレイ期間)の月数で按分し、各月初日にエアドロップがあったものとして時価で利益計上する
- (A)が負の場合:(A)の数量だけ期末に取得原価分を損失計上する。期中に損失計上すると、期中の取引で数量不足エラーが発生するため、期末に計上する
- NFT:時価が取れないケースがほとんどであるため、0円の利益計上を行うか、購入価額分だけ損失計上するケースが多い
- メモの活用:BCGへの送金と入金の2種類のトランザクションは、どのゲームへの入出金かを把握するため、損益計算ツールのメモ欄にゲーム名を記載してソート機能で抽出する
概算計算は外部出金も反映され、ブロックチェーン上の入出金データで計算可能なため、ゲーム内データの取得が前提となるFAQ簡便法よりも実務上の使い勝手が大幅に高い。FAQ簡便法との詳細な比較や、問題点をクリアした改善版の計算方法(簡便法(改))については「国税庁BCG簡便法の3つの問題点|期末一括評価が生む乖離と対応策」を参照。
STEPNを例にした具体的な課税イベントは「STEPNの税務処理|歩いて稼ぐBCGの課税イベントを実務から解説」を参照。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFT・BCGの損益計算を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
ブリード(NFTキャラクター作成)の課税関係
【結論】BCGのブリード(NFTキャラクターの新規作成)では、消費した暗号資産の時価の合計額が、新たに取得したNFTの取得価額となる。この際、「暗号資産を支払ってNFTを購入した」ことと同じになるため、消費した暗号資産の時価とその暗号資産の取得原価との差額が、暗号資産の譲渡損益としてブリード時点に発生する点に細心の注意が必要である(所得税法第36条第1項、国税庁暗号資産等FAQ 1-2)。
計算例(Axie Infinityのブリード)
前提条件:
- 0.5AXS(時価:1AXS=8,000円 / 取得原価:1AXS=5,000円)と900SLP(時価:1SLP=2.5円 / 取得原価:1SLP=1.0円)を消費してブリード
- 新しいNFTキャラクターを取得
新NFTの取得価額の計算:
| 消費した暗号資産 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| AXS | 0.5 × 8,000円 | 4,000円 |
| SLP | 900 × 2.5円 | 2,250円 |
| 新NFTの取得価額 | 合計 | 6,250円 |
暗号資産の譲渡損益の計算:
| 暗号資産 | 計算(時価 − 取得原価) | 譲渡損益 |
|---|---|---|
| AXS | 0.5 ×(8,000円 − 5,000円) | +1,500円 |
| SLP | 900 ×(2.5円 − 1.0円) | +1,350円 |
| 譲渡損益 合計 | +2,850円 |
ブリードは実質的に暗号資産を支払って新しいNFTを購入していることと同一であり、消費した暗号資産の時価合計が新NFTの取得価額となる。同時に、消費した暗号資産の時価と取得原価の差額が暗号資産の譲渡損益として発生する。NFTを消費してブリードする場合は、消費したNFTの時価を取得価額に算入する。
ブリードを頻繁に行うBCG(Axie Infinity、STEPNの靴ミント等)では、ブリードの都度この譲渡損益が発生するため、取引件数が大量になる点に注意が必要である。
スカラーシップ報酬の課税関係
【結論】スカラーシップ報酬(NFTキャラクターの貸出しによる報酬)は、報酬を受け取ったタイミングの時価で利益として計上する。ただし、オーナーとスカラーの契約関係(賃貸借・業務委託・雇用・組合等)によって課税関係が異なりうる(所得税法第36条第1項)。
スカラーシップとは、NFTキャラクターの保有者(オーナー)が他者(スカラー)にNFTキャラクターを貸し出し、スカラーがゲームをプレイして得た暗号資産の一部をオーナーの報酬として受け取る仕組みである。
BCGによって報酬の受取り方は異なるが、スカラーが稼いだ暗号資産が全額オーナーに振り込まれ、その中からスカラーへの報酬を支払い、残りをスカラーシップ報酬とする場合は、報酬受取時の時価で利益計上する。
スカラーへの報酬支払いは暗号資産による支払いに該当し、支払時点の時価で損益が発生する。オーナーとスカラーの契約関係が賃貸借、業務委託、雇用、組合、またはこれらに準じたものなのかによって、両者の課税関係が異なる点に注意が必要である。
よくある質問(FAQ)
Q1. BCGで稼いだトークンを売却しなければ税金はかからない?
かからないとは限らない。ゲーム内通貨が他の暗号資産やNFTと交換可能であれば、取得した時点で課税対象となる(所得税法第36条第1項、NFT FAQ問8)。ただし、時価の算定が困難な場合は0円として差し支えなく、その場合は暗号資産に交換した時点で課税される。
Q2. BCGの税金の計算で原則法は使えないのか?
使えるが、実務上はほぼ不可能である。原則法はゲーム内での取引ごとに総平均法や移動平均法を適用する方法だが、BCGには多種多様なアイテム・キャラクター・ガチャ・合成等の要素があり、どれが暗号資産やNFTに該当するかを都度判断して記録するのは困難である。NFTの場合はコントラクトアドレスやトークンIDの把握も必要になる。
Q3. ゲームがサービス終了した場合の税金はどうなる?
サービス終了によりトークンの価値が消失した場合は、損失計上できる可能性がある。保有していたトークンの取得原価分を損失として計上する。ただし、税務署から「単なる含み損ではないか」と否認されるのを防ぐため、以下の客観的証拠を保存しておくことが必須である。
- サービス終了の告知画面やログインできなくなった画面のスクリーンショット
- 運営からの公式アナウンス(メール・SNS等)の保存
- サービス終了後もブロックチェーン上に残っている無価値のNFT等については、誰もアクセスできないアドレス(Burnアドレス)に送付して完全に消滅させたトランザクション履歴を残すことが、実務上極めて有効な防衛策となる
Q4. 簡便法と概算計算のどちらを使うべきか?
実務上は概算計算の方が使いやすい。簡便法はゲーム内データの取得が前提となるが、BCGの多くではユーザーが取引履歴を入手できない。概算計算はブロックチェーン上の入出金データから算出でき、外部への出金も反映されるため、所得金額がより適切なものになる。簡便法の構造的な問題点については「国税庁BCG簡便法の3つの問題点|期末一括評価が生む乖離と対応策」を参照。
Q5. NFTキャラクターを貸し出して得た報酬の所得区分は?
原則として雑所得である。ただし、オーナーとスカラーの契約関係(賃貸借・業務委託・雇用・組合等)の実態によって、事業所得や給与所得に該当する可能性もあり、個別具体的な判断が必要である(所得税法第27条、第28条、第35条)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFT・BCGの損益計算を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
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暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 所得税法第27条(事業所得)
- 所得税法第28条(給与所得)
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第36条第1項(収入金額)
- 所得税法第37条第1項(必要経費)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-2
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問8(令和5年1月)
