NFT購入代価に「著作権の使用料」が含まれる場合、支払者に源泉徴収義務が生じる。ただし、すべてのNFT購入に源泉徴収が必要なわけではない。
- 理由① 所得税法第204条第1項第1号により、著作権の使用料の支払いには源泉徴収義務がある。NFTがデジタルアートの利用許諾を伴う場合、購入代価の一部が著作権使用料に該当し、購入者側が天引き・納付する義務を負う。
- 理由② NFTマーケットプレイスでの購入では、対価のうち著作権使用料部分の区分が困難なケースが大半であり、かつ少額の場合は不徴収とされている。実務上、源泉徴収が問題になるのは法人が高額NFTを直接取得する場面に集中する。
- 条件 給与等の支払いをしていない一般の個人(源泉徴収義務者でない個人)が支払う場合は源泉徴収不要。源泉徴収義務が生じるのは法人または給与支払者である個人事業主に限られる。
所得税法第204条第1項第1号 / 国税庁NFT FAQ 問10
この記事でわかること
- NFT購入代価がなぜ「著作権の使用料」に該当しうるか
- 居住者に支払う場合の源泉徴収税率と義務者の範囲
- 非居住者・外国法人に支払う場合の取扱い(居住者の場合との違い)
- NFT FAQ問10が示す源泉徴収不要の2つの要件
- NFTマーケットプレイスやスマートコントラクトを介した取引の実務上の課題
NFT購入代価と「著作権の使用料」の該当性
【結論】NFTを購入しデジタルアートをSNSアイコン等に使用する場合、著作権法第21条の複製権・第23条の公衆送信権等に係る著作物の利用許諾の対価が含まれるため、「著作権の使用料」に該当しうる(NFT FAQ問10)。ただし、対価部分の区分が困難かつ少額と認められる場合は源泉徴収不要とされている。
NFTの購入は単なるトークンの取得にとどまらず、そのNFTに紐づくデジタルアートの利用権を取得する側面を持つ。国税庁のNFT FAQ問10は、購入したNFTに係るデジタルアートをSNSのアイコンに使用することについて、著作権法第21条の複製権および第23条の公衆送信権等に係る著作物の利用許諾を受けることの対価が「著作権の使用料」に該当するとしている。
この「著作権の使用料」に該当する場合、支払者は原則としてその支払いの際に所得税を源泉徴収しなければならない。NFTの取引であっても、従来の著作権使用料と同様の源泉徴収の枠組みが適用される。
| 取引の内容 | 著作権の使用料に該当するか | 源泉徴収の検討 |
|---|---|---|
| NFT購入+デジタルアートのSNSアイコン使用 | 該当しうる(複製権・公衆送信権の利用許諾) | 必要(ただし下記の不徴収要件あり) |
| NFT購入+閲覧のみ(利用許諾なし) | 該当しない | 不要 |
| NFTの転売(二次流通) | 利用権の譲渡であり使用料とは異なる | 別途検討 |
NFT FAQ問10が示す不徴収の要件
NFT FAQ問10は、法人等の支払者であっても、以下の2つの要件をいずれも満たす場合は、NFT購入代価の支払いの際に「著作権の使用料」として源泉徴収する必要はないとしている。
- 要件①:NFT購入代価の内訳として、デジタルアートをSNSのアイコンに使うことについての利用許諾の対価が明記されていないため、対価部分を区分することが困難であること
- 要件②:許諾の範囲がSNSのアイコンに使用することに限られているため、その対価部分は極めて少額であると認められること
この取扱いの法的根拠は明示されていないが、実行可能性や執行可能性への配慮があるものと考えられる。NFTマーケットプレイスでの一般的な購入(数千円〜数万円程度のNFTアート)は、多くの場合この不徴収要件を満たすと解される。
なお、支払先が内国法人(国内に本店または主たる事務所を有する法人)である場合は、著作権の使用料であっても源泉徴収の対象とならない(所得税法第174条、第212条第3項)。
関係法令:所得税法第204条第1項第1号、著作権法第21条・第23条、NFT FAQ問10
居住者に著作権の使用料を支払う場合
【結論】居住者に対し著作権の使用料を支払う場合、源泉徴収税率は支払額の10.21%(100万円超の部分は20.42%)である(所得税法第204条第1項第1号、第205条第1号、復興財確法第28条第1項)。ただし、給与等の支払いをしていない一般の個人(会社員等)が支払う場合は、源泉徴収義務を負わない。また、居住者に対する著作権の「譲渡(完全な買取り)」の対価は源泉徴収の対象外であり、源泉徴収の対象は使用料のみである。
源泉徴収税率
国内のNFTクリエイター(居住者)に対して著作権の使用料を支払う場合、源泉徴収税額は以下のとおりである(復興特別所得税2.1%を含む)。
| 支払金額 | 税率(復興特別所得税込み) |
|---|---|
| 100万円以下の部分 | 10.21% |
| 100万円を超える部分 | 20.42% |
注意:復興特別所得税(2.1%)を含めた10.21%・20.42%が実際の徴収税率である。復興特別所得税を含めず10%・20%で納付すると、0.21%・0.42%分の納付不足として不納付加算税・延滞税の対象となるため注意が必要である。
居住者への「譲渡対価」は源泉徴収不要
居住者に対する支払いにおいて源泉徴収の対象となるのは、著作権の「使用料」のみである。著作権の「譲渡(完全な買取り)」の対価は、居住者への支払いでは源泉徴収の対象外である(所得税法第204条第1項第1号)。この点は、後述する非居住者・外国法人への支払い(使用料+譲渡対価の両方が源泉徴収対象)とは異なるため注意が必要である。
源泉徴収義務者の範囲
すべての支払者が源泉徴収義務を負うわけではない。以下の者は、居住者に対する著作権の使用料の支払いについて、源泉徴収義務を負わない。
- 給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人(所得税法第204条第2項第2号)
- 常時2人以下の家事使用人のみに対して給与等の支払いをする個人(所得税法第184条、第200条)
「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」には、実際に徴収して納付する税額がない者も含まれる(所得税基本通達204-5)。
つまり、会社勤めの給与所得者など、給与等の支払者に該当しない一般の個人がNFTを購入する場合、たとえその代価に著作権の使用料が含まれていても、源泉徴収義務は生じない。一方、支払者が法人の場合は源泉徴収義務の検討が必須である。
関係法令:所得税法第6条、第184条、第200条、第204条第1項第1号・第2項第2号、第205条第1号、復興財確法第28条第1項、所得税基本通達204-5
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
非居住者・外国法人に著作権の使用料等を支払う場合
【結論】非居住者または外国法人に対して著作権の使用料等を支払う場合、居住者への支払いとは異なり、①給与の支払いをしていない一般の個人であっても源泉徴収義務者になりうる、②著作権の「使用料」だけでなく「譲渡対価」も源泉徴収の対象となる、③税率は原則20.42%(復興特別所得税込み)であるという3点で取扱いが大きく異なる(所得税法第212条第1項、第213条第1項第1号)。
居住者への支払いとの違い
居住者への支払いでは、給与支払者でない個人は源泉徴収義務を負わない。しかし、非居住者または外国法人に対して国内において著作権の使用料や著作権の譲渡対価を支払う場合は、支払者の属性を問わず源泉徴収の検討が必要となる。
| 比較項目 | 居住者への支払い | 非居住者・外国法人への支払い |
|---|---|---|
| 一般個人の源泉徴収義務 | 不要 | 発生しうる |
| 対象となる支払い | 使用料のみ | 使用料+譲渡対価 |
| 税率(復興特別所得税込み) | 10.21%(100万円超は20.42%) | 原則20.42% |
租税条約の適用と実務上の困難
非居住者または外国法人への支払いについては、相手方の居住地国との租税条約の適用により、源泉徴収が不要または税率が軽減される場合がある。ただし、租税条約の適用を受けるためには、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」等を所轄税務署に提出する必要がある。
注意:「租税条約に関する届出書」の提出には、相手方(非居住者・外国法人)の署名等が必要であるが、NFTマーケットプレイスでの取引は匿名性が高く、売主が誰であるかすら把握できないケースが大半である。そのため、Web3の匿名取引においては租税条約の適用手続を履行することが事実上不可能に近く、原則税率の20.42%が適用されることを前提に検討せざるを得ない。
国内支払のみなし規定
国外において支払いを行う場合は原則として源泉徴収の対象とならない。ただし、支払者が国内に住所もしくは居所を有し、または国内に事務所等を有するときは、国内において支払うものとみなされる(所得税法第212条第2項)。
なお、恒久的施設を有しない非居住者または外国法人の著作権の使用料や譲渡対価に係る国内源泉所得については、源泉徴収のみで課税関係が終了する(租税条約の適用により源泉徴収されない場合もある)。
関係法令:所得税法第161条第1項第11号、第212条第1項・第2項、第213条第1項第1号
実務上の論点
【結論】NFT取引における源泉徴収には、①NFT FAQ問10の不徴収要件の射程範囲の不明確さ、②マーケットプレイス取引特有の実行困難性という2つの実務上の論点がある。特に海外クリエイターとの取引では、相手方の特定やグロスアップ計算が必要になる場合があり、専門家への相談が不可欠である。
不徴収要件の射程に関する留意点
NFT FAQ問10の不徴収の取扱いには、以下の点について国税庁の見解が十分に示されていない。
- 対価が明記されていない場合に、利用許諾の範囲(SNSアイコン等に限定されるか否か)をどのように判断するか
- 商業利用権やコミュニティ参加権など複数の対価が混在し、明確に区分されていない場合の取扱い
- PFP(プロフィール画像)型NFTのように、著作物の利用が取引の本質的部分を構成する場合の源泉徴収義務
NFTマーケットプレイス取引の実行困難性
NFT取引の実務においては、源泉徴収制度の適用に以下の困難が伴う。
- 相手方の特定が困難:NFTマーケットプレイスでは、売主が居住者か非居住者か、個人か法人かを把握できないことが多い
- 源泉控除がシステム上困難:スマートコントラクトを通じた取引では、購入者が代金から源泉所得税分を差し引いて支払う仕組みがない
- グロスアップ計算の負担:源泉徴収が必要な取引で代金から控除できない場合、支払者が自己負担で税額を上乗せして納付するグロスアップ計算が必要になる
NFTの損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
関係法令:NFT FAQ問10、所得税基本通達204-8、204-10、204-28の2
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人がNFTを購入するだけで源泉徴収は必要ですか?
通常は不要である。給与等の支払いをしていない一般の個人(会社員等)がNFTを購入する場合、たとえ購入代価に著作権の使用料が含まれていても、源泉徴収義務は生じない(所得税法第204条第2項第2号)。ただし、非居住者・外国法人への支払いの場合は一般の個人でも源泉徴収義務が発生しうるため注意が必要である(所得税法第212条第1項)。
Q2. 法人がNFTを購入する場合、源泉徴収は必要ですか?
原則として検討が必要である。法人が居住者のクリエイターから著作権の使用料を含むNFTを購入する場合、支払額の10.21%(100万円超部分は20.42%)を源泉徴収する義務がある(所得税法第204条第1項第1号、復興財確法第28条第1項)。ただし、NFT FAQ問10の不徴収要件(対価部分の区分困難+少額)を満たす場合は不要となる。
Q3. 海外のクリエイターからNFTを購入した場合の源泉徴収は?
一般の個人でも源泉徴収義務が発生しうる。非居住者・外国法人に対する著作権の使用料・譲渡対価の支払いでは、居住者への支払いとは異なり、給与支払者でない個人も源泉徴収義務者になりうる(所得税法第212条第1項)。税率は原則20.42%(復興特別所得税込み)である。租税条約による免除・軽減を受けるには支払日前日までに届出書を税務署に提出する必要があるが、NFTマーケットプレイスの匿名取引では相手方の署名等を得ることが事実上不可能であり、租税条約の適用は極めて困難である。
Q4. OpenSeaなどのマーケットプレイスで購入した場合、源泉徴収は実際にできますか?
システム上、実行が極めて困難である。スマートコントラクトを通じた取引では、購入代金から源泉所得税を控除して支払う仕組みがない。また、売主が居住者か非居住者かの判別も困難である。源泉徴収義務が生じる場合はグロスアップ計算による自己負担納付が必要になりうるため、税理士への相談が推奨される。
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関係法令
- 所得税法第2条第1項第3号・第5号・第6号・第7号(居住者・非居住者・内国法人・外国法人の定義)
- 所得税法第6条(源泉徴収義務者)
- 所得税法第161条第1項第11号(国内源泉所得・著作権の使用料等)
- 所得税法第174条(内国法人に係る所得税)
- 所得税法第184条・第200条(源泉徴収義務の範囲)
- 所得税法第204条第1項第1号・第2項第2号(居住者に対する源泉徴収)
- 所得税法第205条第1号(源泉徴収税額)
- 所得税法第212条第1項・第2項・第3項(非居住者・外国法人に対する源泉徴収)
- 所得税法第213条第1項第1号(非居住者・外国法人に対する源泉徴収税額)
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第28条第1項(復興特別所得税)
- 所得税基本通達204-5、204-8、204-10、204-28の2
- 著作権法第21条(複製権)・第23条(公衆送信権)
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問10(令和5年1月)
