ICOでトークンを発行した法人の課税関係は、発行するトークンが「何の権利を表象するか」によって決まる。トークンの性質の分類が税務処理の起点となる。
- 理由① 権利を表象するトークン(ユーティリティトークン等)を販売した場合、受領した暗号資産の時価が収益として法人税の課税対象となる。対価としてETH等を受け取った場合、受取時の日本円換算額で益金に算入する。
- 理由② 何の権利も表象しないトークンを発行した場合、対価性がないため売上ではなく「寄附を受けた」として受贈益課税が生じる可能性がある。発行者の意図ではなく、トークンの客観的な権利内容で判定される。
- 条件 IEO(取引所経由)・IDO(DEX経由)でも課税関係の基本構造は同じだが、IEOでは取引所が介在するため手数料の経費計上や源泉徴収の有無が追加論点となる。発行形態の違いが直接的に課税関係を変えるわけではない。
法人税法第22条・第37条
この記事でわかること
- ICOでトークンを発行した法人の法人税上の取扱い
- トークンの性質(権利あり/なし)による課税関係の違い
- ICOでトークンを購入した側の損益計算上の取扱い
- 年度をまたぐICOの「前払金処理」の考え方
- ロック(売却制限)がある場合の実務対応
トークン発行法人(資金調達者)の課税関係
【結論】トークン発行法人が暗号資産を対価として受領した場合、トークンの性質に応じて「収益」または「受贈益」として法人税の課税対象となる。個人が発行する場合も同様に所得税の対象となる(法人税法第22条、所得税法第36条第1項)。
ICOの課税関係については税法に個別の規定がなく、トークンの性質に応じて一般原則で判定する。平成30(2018)年3月22日の参議院財政金融委員会において、藤井健志国税庁次長が以下の要旨で答弁している。
トークンが権利を表象する場合
資金調達者がイベント参加権等の権利を表象したトークンを販売し、対価として暗号資産を受領した場合、その受領した財産的価値はトークン販売の収益として法人税(個人の場合は所得税)の課税対象となる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税関係 | トークン販売の収益 |
| 課税時期 | 暗号資産を受領した時点 |
| 収益の額 | 受領した暗号資産の受領時の時価 |
| 該当する税目 | 法人→法人税 / 個人→所得税(事業所得または雑所得) |
トークンが権利を表象しない場合
発行するトークンが何の権利も表象しない場合、資金提供者から受け取る暗号資産は「反対給付を伴わない寄附」と認識される可能性がある。
| 資金提供者 → 資金調達者 | 資金調達者の処理 | 資金提供者の処理 |
|---|---|---|
| 個人 → 個人 | 贈与税の課税対象 | ― |
| 法人 → 法人 | 受贈益として法人税の課税対象 | 寄附金として損金算入限度額の範囲内で損金 |
| 個人 → 法人 | 受贈益として法人税の課税対象 | ― |
| 法人 → 個人 | 一時所得等として所得税の課税対象 | 寄附金処理 |
ICO購入者側の損益計算上の取扱い
【結論】ICOに参加して暗号資産を先払いした時点では、売買が成立していないものとして課税イベントを発生させない「前払金処理」が実務上の標準的な対応である。新しいトークンを受け取った時点で、暗号資産同士の交換があったものとして損益計算を行う(所得税法第36条第1項)。
ICOにおいてトークンを購入する場合、資金(暗号資産であることが多い)を先払いし、数か月から数年後にトークンが付与されるケースが一般的である。ここで「いつの時点で課税関係が発生するか」が最大の論点となる。
原則:ホワイトペーパーの契約内容に従う
ICOのホワイトペーパーに売買成立時期を規定する文言があれば、それが最優先となる。しかし、ホワイトペーパーは日本の税制を考慮しているものばかりではなく、判断材料が記載されていないことが極めて多い。
実務上の対応:前払金処理
| ステップ | 処理内容 |
|---|---|
| ①資金(暗号資産)支払時 | 売買未成立として損益計算を行わない(前払金のような処理) |
| ②新しいトークン受取時 | 通常の暗号資産同士の交換があったものとして損益計算を行う |
年度をまたぐ場合の注意点
資金の支払いと新トークンの受取が異なる年度にまたがる場合が特に問題となる。支払年度内にトークンを受け取らない場合は、前払金処理により、支払った暗号資産の数量を保有数量に加算して年度末の残高を調整する。
ロックアップ(売却制限)がある場合の取扱い
【結論】ICOで発行された暗号資産がロックされている場合でも、前払金処理の基本的な考え方は同様である。ただし、アンロックが段階的に行われる場合は各アンロック時点の処理方法を検討する必要がある(所得税法第36条第1項)。
ICOで取得した暗号資産は、発行時点では大半がロックされ、一定期間をかけて段階的にアンロックされるケースが多い。
実務上の注意点
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産法人の税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
【結論】ICO参加者の損益計算を行う場合、送金した暗号資産の種類・数量、新しい暗号資産がどれくらいの期間で何分割で付与されるのかを、事前に納税者に確認する必要がある。
- 送金した暗号資産の種類と数量
- 受け取る新しい暗号資産の種類と数量
- トークンの付与スケジュール
- ロックアップの有無と解除スケジュール
- ホワイトペーパーの内容
よくある質問(FAQ)
Q1. ICOに参加して暗号資産を支払った時点で課税されますか?
原則として課税されない。売買未成立として前払金処理を行うケースが多い。課税関係は新しいトークン受取時に発生する(所得税法第36条第1項)。
Q2. トークンを発行した法人はどのような税金がかかりますか?
受領した暗号資産の時価が法人税の課税対象となる。トークンの性質に応じて法人税法第22条、第37条により判定される。
Q3. ICOで取得したトークンがロックされて売れない場合の税務処理は?
ロック中でも受取時点で交換処理を行うのが実務上の標準である。経済的利得が発生している以上、課税を繰り延べる根拠はない(所得税法第36条第1項)。
Q4. IEOやIDOもICOと同じ課税関係ですか?
基本的な課税関係は同じである。発行トークンの性質に応じて法人税法第22条の一般原則で判定する。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産法人の税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
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専門の税理士に依頼する場合
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関係法令
- 所得税法第36条第1項
- 法人税法第22条
- 法人税法第37条
- 相続税法第21条の3(贈与税)
