ICO・IEO・IDOの税金|発行者と購入者の課税関係

結論

ICO・IEO・IDOの課税関係は、最終的には各案件のホワイトペーパーやトークンセール契約の内容次第で結論が変わる。発行者側はトークンが表象する権利の有無、購入者側は払い出した暗号資産の含み損益が確定する時点が起点となる。

  • 理由① 【発行者】権利を伴わないトークンなら受領した暗号資産の時価全額が発行時の収益・益金となる。将来のサービス提供等の義務を伴うトークンなら受領額を前受金等の負債として認識し、義務の充足に応じて収益化する(ASBJ論点整理。会計基準は未確定)。
  • 理由② 【購入者】暗号資産を支払った時点で暗号資産同士の交換として譲渡損益を認識するのが基本で、払い出した暗号資産の含み損益は払込年に確定する(含み益・含み損とも同じ)。前払金処理を採る場合も、繰り延べられるのは対価部分だけで含み損益は繰り延べられない。
  • 条件 ICO・IEO・IDOで発行形態は異なるが、課税関係の基本構造は共通する。

法人税法第22条 / 所得税法第36条第1項・第2項 / ASBJ論点整理(2022年3月15日)

ICO(Initial Coin Offering)・IEO(Initial Exchange Offering)・IDO(Initial DEX Offering)は、いずれもブロックチェーン上で新規トークンを発行・販売して資金を調達する手法である。ICOはプロジェクトが直接販売、IEOは暗号資産取引所が審査・仲介して販売、IDOはDEX(分散型取引所)上で販売する点が異なるが、税務上の課税関係の基本構造は共通する。本記事では、発行者側の収益認識と、購入者側で払い出した暗号資産の含み損益がどの年に確定するかを整理する。

この記事でわかること

  • トークン発行法人の課税関係(権利を表象するトークン/しないトークン)
  • 購入者が払い出した暗号資産の含み損益はどの年に確定するか
  • 前払金処理を採っても含み損益が繰り延べられない理由
  • 前払金の取得価額への振替計算(段階配布)
  • ロック付きで配布される場合の受取時点の判定
  • プロジェクト中止・未配布分の処理
目次

トークン発行法人(資金調達者)の課税関係

【結論】トークン発行法人が暗号資産を対価として受領した場合、トークンの性質に応じて課税される(法人税法第22条、所得税法第36条第1項)。権利を表象するトークンは受領時の時価が収益となり、将来の義務を伴う場合は前受金等として繰り延べる。権利を表象しないトークンでも、受領した暗号資産の時価全額を発行時の収益(益金)として計上するのが原則である。

権利を表象するトークンの場合

ユーティリティトークン等、何らかの権利を表象するトークンを販売した場合、受領した暗号資産の受領時の時価がトークン販売の収益として法人税(個人は所得税)の課税対象となる(法人税法第22条、所得税法第36条第1項)。ただし将来のサービス提供やプラットフォーム利用等の義務を伴う場合は、受領額を前受金等の負債として認識し、義務の充足に応じて収益へ振り替える考え方も成立し得る。暗号資産に該当するICOトークンは収益認識会計基準の適用範囲外で、ASBJ論点整理で論点が示されるにとどまり会計基準は未確定である。

項目内容
課税関係トークン販売の収益(益金)。義務を伴う場合は前受金として繰延
課税時期暗号資産を受領した時点(繰延の場合は義務の充足時)
収益の額受領した暗号資産の受領時の時価
該当する税目法人→法人税 / 個人→所得税(事業所得または雑所得)

権利を表象しないトークンの場合

何の権利も表象しないトークンを発行して暗号資産を受領した場合でも、購入者は値上がり益等を期待して対価を払っており、発行者に履行義務がない以上、受領した暗号資産の時価全額を発行時の収益(益金)として計上するのが原則である(ASBJ論点整理第31項)。反対給付を伴わない純粋な寄附に当たる場面は限定的であり、一律に受贈益・贈与税の問題として扱うのは適当でない(無償移転の受取側課税は関連記事を参照)。

ICO購入者側の課税時期──支払暗号資産の含み損益はいつ確定するか

【結論】ICOに参加して暗号資産を支払った場合の最大の論点は、払い出した暗号資産の含み損益をどの年に計上するかである。結論は払込年で、含み益・含み損のいずれでも変わらない。ICOへの払込みは金銭の支払いではなく、保有する暗号資産の譲渡(暗号資産同士の交換)であり、手放した年に損益が確定するからである。

払込年に固定される3つの理由

第一に、含み損益は保有中は課税されず、資産が手元を離れる時に一度だけ精算される(実現主義)。ICO払込みは暗号資産の譲渡であり、その年に精算される。

第二に、トークンが未着でも引渡請求権という権利を取得しており、権利で収入する場合の収入金額はその取得時の時価とされる(所得税法第36条第2項)。

第三に、繰り延べるには取得価額を引き継ぐ課税繰延が必要だが、交換時の非認識を認めるのは固定資産の交換特例(所得税法第58条)等に限られ、暗号資産は対象外である。

前払金処理を採っても含み損益は繰り延べられない

前払金処理を採る場合も同じである。前払金は支払時の時価で計上するため(所得税法第36条第2項)、時価と帳簿価額の差=含み損益は払込年に確定する。繰り延べられるのは対価部分だけで、含み損益そのものは繰り延べられない。段階配布時の按分計算は次章で扱う。

例外:払込年に譲渡が成立していない場合

含み損益が払込年に落ちないのは、払込年に譲渡が成立していない場合に限られる。返金条項付きエスクローで鍵の一部を保持し支配が移転していない、停止条件付きで条件成就が翌年、といったケースである。これは「前払金だから繰延」ではなく「譲渡の未成立」という別の論理であり、混同すると主張が崩れる。ウォレットへ直送する通常のICOでは余地は乏しい。

補足:前払金と構成するか、引渡請求権と構成するか

払い出したETH等の含み損益が払込年に確定する点は、受け側をどう構成しても変わらない。ETHを手放して別の資産(前払金という債権、または引渡請求権)を取得時の時価で受け入れる以上、ETHの時価と取得価額の差はいずれの構成でも払込年に実現するからである。異なるのは、その後トークンの取得価額を確定させるまでの振替の理屈である。

前払金(前渡金)と構成する場合は、対価の前払いにすぎず未だトークンという資産は取得していないと整理し、段階配布のたびに前払金をトークンの取得価額へ振り替える(本章の〔計算例28-1〕参照)。これに対し、払込時点で引渡請求権という権利資産を時価で取得したと構成する場合は、その後のトークン配布を「引渡請求権からトークン本体への振替(権利の履行による資産の入れ替え)」と捉えることになり、前払金からの按分振替とは概念上の経路が異なる。さらに、引渡請求権自体がトークン化され暗号資産と評価される設計では、権利の取得時点とトークンの受領時点それぞれで課税イベントの成否を検討する余地が生じる。いずれの構成でも払込年のETH含み損益の結論は一致するが、取得価額を積み上げる過程の理屈が異なる点に留意する。なお、前払金を「対価の前払い」ではなく「単なる預け(預託)」と構成する余地は、ETHの支配が払込者に残り同種同量返還が予定される場合に限られ、その場合は前払金か否かではなく譲渡未成立(前述の例外)の問題に帰着する。通常のICOではETHが費消されトークンで返るため、預託構成は採りにくい。

前払金の振替計算(対価部分)

【結論】前払金処理では、払込時に含み損益を確定したうえで、前払金(払込時の時価)を段階配布のたびにトークンの取得価額へ振り替える。振替であり損益は生じない。

〔図28-1〕ICO購入者の処理フロー

時期処理
2022/5 ETH払込①含み損益を確定(暗号資産の譲渡)/②前払金を払込時の時価で計上
2022/8〜2023/7 ロックアップ期間配布なし。前払金のまま保持
2023/8〜 トークン段階配布前払金を配布割合でトークンの取得価額へ振替(損益なし)
最終配布前払金がゼロに。トークンの取得価額が確定
完了将来トークンを売却した時に、この取得価額を基準に譲渡損益を計算

※ロック付きで配布される場合の受取時点の判定は、後述の「ロック付きトークンの受取時点」を参照。

前提

2022年5月にETH1枚(取得価額250,000円、払込時の時価300,000円)を払い込み、2023年8月〜2024年7月に計12回でKTAX100枚が段階配布されるICOに参加したものとする。

払込時(2022年)の処理

ETHの譲渡損益=払込時の時価300,000円−取得価額250,000円=+50,000円を2022年に計上する。あわせて前払金300,000円(時価)を資産計上する。

各配布時の振替(損益なし)

前払金300,000円を、各回の受取数量の割合でトークンの取得価額へ振り替える。

ロック付きトークンの受取時点(論点)

ロック(売却・移転制限)付きで配布される場合、振替の起点となる「受取時点」を、ロック付きで配布された時点とみるか、ロック解除により処分可能となった時点とみるかは論点である。ロック中は処分できず収入すべき権利が確定していないとみれば解除時点、配布により支配が移転しているとみれば配布時点となる。ICOトークンのロック期間中の受取時点を直接定めた通達はなく、いずれで処理するかは、ホワイトペーパー・トークンセール契約上のロックの法的性質、スマートコントラクトの技術的な移転可能性、解除条件の確定性をどこまで資料で立証できるかに依存する。立証できる資料が乏しい場合は、取引履歴計上時点を起点とする処理が無難である。

〔計算例28-1〕前払金(300,000円)の取得価額への振替

配布回受取数量取得価額への振替額
第1〜11回(各回)9KTAX27,000円(=300,000×9/100)
第12回(最終回)1KTAX3,000円(=300,000×1/100)
合計100KTAX300,000円(前払金ゼロ)

各回とも損益は生じず、受け取ったKTAXの取得価額が積み上がるだけである。最終配布で前払金はゼロになり、KTAX100枚の取得価額合計は300,000円で確定する。将来KTAXを売却した時に、この取得価額を基準に譲渡損益を計算する。受取日ごとのKTAX時価は取得価額の算定には使わないが、将来の売却損益の計算・立証のため記録・保存する。

配布数量が予定を下回った場合、未配布分に対応する前払金が残る。この残高の損失処理は「実務上の注意点」の(4)を参照。

実務上の注意点

(1)ICO参加者の損益計算は事前ヒアリングが不可欠

送金した暗号資産の種類・数量・払込時の時価、受け取るトークンの種類・数量、付与スケジュール、ロックアップの有無と解除スケジュール(受取時点の判定資料)、ホワイトペーパーの内容を事前に顧問先に確認する。この情報がないと含み損益の確定と前払金の按分ができない。

(2)課税時期は法令上の明文がなく個別判断となる

ICOトークンの課税時期を直接定めた法令・通達はない。もっとも、払い出した暗号資産の含み損益が払込年に確定する点は、実現主義と所得税法第36条第2項から導かれる基本的な取扱いである。発行者側の収益認識(即時認識か繰延収益か)はトークンの権利内容に応じた個別判断となる。ホワイトペーパーに売買成立時期や権利内容を定める文言があれば判断材料となるが、多くは日本の税制を考慮しておらず記載がないことが多い。

(3)ICO・IEO・IDOで課税関係は同じ

IEO(取引所が審査・仲介)やIDO(DEX上で販売)はトークン販売の形態が異なるだけで、課税関係の基本構造はICOと共通である。IEOでは取引所が介在するため手数料の経費計上が追加論点となるが、発行者の収益認識・購入者の損益計算の考え方は同一である。

(4)プロジェクト中止・未配布分の処理

プロジェクトが中止されてトークンが配布されなかった場合、未配布分に対応する前払金の損失認識は、雑所得の枠組みでは明確な規定がない。詐欺・盗難と雑損控除の枠組み(所得税法第51条第4項による必要経費算入)の余地を検討する。ただし雑所得の金額が上限であり、繰越控除もない。

よくある質問(FAQ)

Q1. ICOに参加して暗号資産を支払った時点で課税されますか?

原則として課税される。ICOへの払込みは金銭の支払いではなく、保有する暗号資産の譲渡(暗号資産同士の交換)に当たるため、払い出した暗号資産の含み損益は払込年に確定する(含み益・含み損とも同じ)。前払金処理を採る場合でも、繰り延べられるのは対価部分だけで、含み損益は繰り延べられない。例外は、返金条項付きエスクローや停止条件付きで払込年に譲渡が成立していない場合に限られる。

Q2. トークンを発行した法人はどのような税金がかかりますか?

受領した暗号資産の時価が法人税の課税対象となる。権利を表象するトークンで将来の義務を伴う場合は前受金等として繰り延べ、義務の充足に応じて収益化する。権利を表象しないトークンでも、受領した暗号資産の時価全額を発行時の収益(益金)として計上するのが原則であり、一律に受贈益・贈与税の問題として扱うのは適当でない(ASBJ論点整理第31項)。

Q3. ICOで取得したトークンがロックされて売れない場合の税務処理は?

前払金をトークンの取得価額へ振り替える「受取時点」が論点となる。ロック中は処分できず権利が確定していないとみれば解除時点、配布により支配が移転しているとみれば配布時点となる。直接定めた通達はなく、ホワイトペーパー・契約上のロックの法的性質や技術的な移転可能性、解除条件の確定性を資料でどこまで立証できるかに依存する。立証資料が乏しい場合は取引履歴計上時点を起点とする処理が無難である。なお、含み損益の確定はロックの有無にかかわらず払込年である。

Q4. IEOやIDOもICOと同じ課税関係ですか?

基本構造は同じである。IEO(取引所が審査・仲介)やIDO(DEX上で販売)は販売形態が異なるだけで、発行者の収益認識・購入者の損益計算の考え方はICOと共通である。IEOでは取引所手数料の経費計上が追加論点となる。

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監修者・運営情報

本記事の監修者は、税理士 藤本剛平(カオーリア会計事務所 代表/近畿税理士会吹田支部・登録番号147244)。中央経済社『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務』共著者で、2026年11月に同社より暗号資産(仮想通貨)・NFT・DeFi税務の単著を刊行予定です。

本記事は、暗号資産(仮想通貨)・NFT・DeFiの税務、海外取引所の損益計算、税務調査対応を専門とするカオーリア会計事務所が、個人投資家・法人・税務調査対応の実務を踏まえて作成しています。暗号資産の確定申告、過年度申告・修正申告、DeFi取引の整理は個別事情により判断が異なります。

用語解説

  • IEO(Initial Exchange Offering):暗号資産取引所が審査・仲介して行うトークン販売。ICOより信頼性が高いとされるが、税務上の課税関係はICOと同一。
  • IDO(Initial DEX Offering):DEX(分散型取引所)上で行うトークン販売。中央集権的な審査がなく誰でも参加可能。
  • ホワイトペーパー:暗号資産プロジェクトの技術仕様・事業計画・トークンの用途等を記載した文書。株式のIPO目論見書に相当するが、法的拘束力は通常ない。
  • ユーティリティトークン:プロジェクトのサービスや機能を利用するためのトークン。配当権や議決権を持たず、サービス利用権を表章する。
  • エスクロー:第三者又はスマートコントラクトが資金を一時的に預かり、条件の成就を確認してから相手方に引き渡す仕組み。条件成就まで支配が移転しない場合がある。
  • ASBJ論点整理:企業会計基準委員会が2022年3月15日に公表した「ICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」。確定した会計基準ではなく、論点と予備的分析を示したもの。

関係法令

  • 所得税法第36条第1項・第2項(収入金額)
  • 所得税法第37条第1項(必要経費)
  • 所得税法第58条(固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例)
  • 法人税法第22条(益金の額・損金の額)
  • 法人税法第37条(寄附金)
  • 企業会計基準委員会「ICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(2022年3月15日)
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