暗号資産の消費税改正|有価証券に類するものへの変更

結論

暗号資産の譲渡は改正後も消費税「非課税」のまま変わらない。変わるのは非課税の法的根拠と、課税売上割合の計算方法である。

  • 理由① 非課税の根拠が「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」に変更される。消費税の課否判定(非課税)自体は同じだが、法律上の位置づけが金融商品寄りに再整理される。
  • 理由② 実務上の最大の変化は課税売上割合の計算。改正後は有価証券と同様に、譲渡対価の5%相当額が課税売上割合の分母に算入される。暗号資産の売買額が大きい事業者は課税売上割合が低下し、仕入税額控除に影響が出る。
  • 条件 本改正は令和8年度税制改正大綱の段階であり、金融商品取引法改正の施行日の属する年の翌年1月1日以降に適用される。法案の成立・施行時期に注意が必要。

令和8年度税制改正大綱 / 消費税法第6条第1項・別表第一

この記事でわかること

  • 暗号資産の消費税上の位置づけが「支払手段」から「有価証券」にどう変わるか
  • 課税売上割合の計算方法の改正内容(5%算入ルール)
  • 暗号資産の貸付け(レンディング)に対する消費税の非課税化
  • 改正の施行時期と現時点での留意事項
  • 一般の個人トレーダーと事業者それぞれへの影響
目次

改正の概要|「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」へ

【結論】暗号資産の譲渡に対する消費税の非課税根拠が変更される。現行法では「支払手段に類するもの」の譲渡として非課税(消費税法別表第一第2号)だが、改正後は「有価証券に類するもの」の譲渡として非課税となる(令和8年度税制改正大綱)。譲渡自体が非課税である点に変わりはない。

暗号資産の消費税の取扱いには、以下のような経緯がある。

時期 消費税の取扱い 根拠
平成29年6月以前 課税対象 消費税の非課税規定なし
平成29年7月〜現行 非課税(支払手段に類するもの) 消費税法別表第一第2号・消費税法施行令第9条第4項
改正後 非課税(有価証券に類するもの) 消費税法別表第一(改正後)

この位置づけ変更は、金融商品取引法の改正により暗号資産が金融商品として整理されることに伴うものである。暗号資産が「決済手段」から「金融商品(投資対象)」へと法的性格を変えるため、消費税法上の根拠規定も有価証券に揃えられる。

暗号資産を売買する際に消費税がかからない点は改正前後で同じであり、暗号資産の購入時に消費税を支払う必要はない。取引所の仲介手数料は改正後も課税仕入れとなる(国税庁FAQ 6-1)。

課税売上割合の計算方法の変更|5%算入ルール

【結論】改正後は、暗号資産の譲渡対価の5%相当額が課税売上割合の計算上の分母(資産の譲渡等の対価の額)に算入される。現行制度では暗号資産の譲渡対価は分母に一切算入されないため、事業者にとって課税売上割合の計算に影響が生じる(令和8年度税制改正大綱・消費税法第30条第6項)。

現行制度(改正前)

現行法では、課税売上割合の計算上、分母の非課税売上高に暗号資産の譲渡対価は含まれない(消費税法第30条第6項・消費税法施行令第48条第2項第1号)。

課税売上割合は以下の算式で計算される。

課税売上割合 =(課税売上高+輸出免税売上高)÷(課税売上高+輸出免税売上高+非課税売上高)

現行制度では暗号資産の譲渡対価は分母の非課税売上高に含まれないため、暗号資産の売買金額がいくら大きくても課税売上割合に影響しない。

改正後

改正後は、暗号資産の譲渡対価の5%相当額が分母に算入される。これは上場株式等の有価証券の譲渡と同じ取扱いである(消費税法施行令第48条の改正)。

【計算例】課税売上1,000万円、暗号資産の年間売却総額5億円の事業者

項目 現行制度 改正後
分子(課税売上高) 1,000万円 1,000万円
分母の非課税売上高(暗号資産分) 0円 2,500万円(5億円×5%)
分母合計 1,000万円 3,500万円
課税売上割合 100% 約28.6%

このように、暗号資産の売買金額が大きい事業者は、改正後に課税売上割合が大幅に低下する可能性がある。課税売上割合が95%未満になると、仕入税額控除の計算方法として個別対応方式または一括比例配分方式を適用する必要が生じ、控除できる消費税額が減少する。

ただし、この影響を受けるのは消費税の課税事業者として暗号資産取引を事業規模で行っている場合に限られる。消費税の免税事業者(課税売上高1,000万円以下等)や、事業として暗号資産取引を行っていない一般の個人トレーダーには実務上ほとんど影響がない。

暗号資産の貸付けの消費税非課税化

【結論】改正により、暗号資産の貸付け(レンディング)についても消費税が非課税となる。現行法では暗号資産の貸付けに係る利用料は消費税の課税対象であるが(国税庁FAQ 6-2・消費税法第2条第1項第8号・第4条第1項)、改正後は有価証券の貸付けと同様に非課税取引として整理される(令和8年度税制改正大綱)。

現行法では、暗号資産の貸付けは「資産の貸付け」に該当し、支払手段の譲渡・金銭の貸付け・有価証券の貸付け等の非課税取引のいずれにも該当しないため、利用料は消費税の課税対象とされている。

改正後は暗号資産が「有価証券に類するもの」に位置づけられるため、その貸付けも有価証券の貸付けと同様に非課税となる。レンディングサービスを提供する事業者や、暗号資産の貸付けを行う法人にとって、消費税の計算に影響がある。

実務上の注意点

【結論】本改正は大綱段階であり法律未成立である。施行は金融商品取引法改正の施行日の属する年の翌年1月1日以降であり、具体的な施行年は確定していない。現時点では現行法に基づいて消費税の申告を行う必要がある(令和8年度税制改正大綱)。

暗号資産の消費税の取扱いを税理士に相談したい場合は「暗号資産の法人税務を専門家に依頼する」をご覧ください。

実務上、以下の点に留意する必要がある。

施行時期について: 改正の適用開始は金融商品取引法の改正法の施行日に連動する。金商法改正の国会審議の進捗次第であり、具体的な施行年は現時点で確定していない。

事業者への影響の大小: 課税売上割合の計算方法の変更は、暗号資産の売買を事業規模で行っている消費税の課税事業者に影響がある。一般の個人投資家や免税事業者にはほとんど影響がない。

課税売上割合がゼロになるケース: 暗号資産の譲渡以外に課税売上がない事業者の場合、課税売上割合の分母・分子がともにゼロとなることがある。この場合、国税庁は課税売上割合をゼロ%(95%未満)として取り扱うという見解を示している(国税庁質疑応答事例「課税売上割合が0の場合の仕入控除税額の計算方法」)。

仕入税額控除の方法: 課税売上割合が95%未満となる場合は、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかにより仕入税額控除を計算する必要がある。暗号資産の取引手数料は、個別対応方式では非課税売上げに対応する課税仕入れに区分される(国税庁FAQ 6-1)。

よくある質問(FAQ)

Q1. 改正後、暗号資産の売買に消費税がかかるようになりますか?

かからない。 暗号資産の譲渡は改正後も消費税非課税である。変わるのは非課税の根拠規定(「支払手段に類するもの」→「有価証券に類するもの」)と課税売上割合の計算方法であり、暗号資産を売買する際に消費税を支払う必要がない点は現行法と同じである(消費税法第6条第1項・令和8年度税制改正大綱)。

Q2. 個人で暗号資産を売買しているだけの場合、今回の改正は関係ありますか?

ほとんど関係ない。 課税売上割合の計算方法の変更は、消費税の課税事業者として事業規模で暗号資産取引を行っている場合に影響がある。消費税の免税事業者や、事業として暗号資産取引を行っていない一般の個人トレーダーには実務上の影響はない。

Q3. レンディングの利用料に消費税がかからなくなるのはいつからですか?

金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以降である。 具体的な施行年は金商法改正の国会審議の進捗次第であり、現時点で確定していない(令和8年度税制改正大綱)。施行されるまでは、現行法に基づき暗号資産の貸付けに係る利用料は消費税の課税対象として取り扱う。

Q4. 課税売上割合が下がると何が問題になりますか?

仕入税額控除の金額が減少し、消費税の納税額が増加する可能性がある。 課税売上割合が95%未満になると、仕入税額の全額控除ができなくなり、個別対応方式または一括比例配分方式で控除額を計算する必要がある(消費税法第30条)。暗号資産の年間売買金額が大きい課税事業者ほど影響が大きい。

暗号資産の消費税の取扱いを税理士に相談したい場合は「暗号資産の法人税務を専門家に依頼する」をご覧ください。

関連記事・サービスページ

関連記事

専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 消費税法第6条第1項(非課税)
  • 消費税法別表第一(非課税取引の一覧)
  • 消費税法第2条第1項第8号(資産の譲渡等の定義)
  • 消費税法第4条第1項(課税の対象)
  • 消費税法第30条第6項(課税売上割合)
  • 消費税法施行令第9条第4項(支払手段に類するもの)
  • 消費税法施行令第48条第2項(課税売上割合の計算)
  • 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
必要に応じてご共有ください
  • URLをコピーしました!
目次