国税庁BCG簡便法の3つの問題点|期末一括評価が生む納税額と手持ち資産の乖離と対応策

結論

国税庁BCG簡便法には3つの構造的問題があり、そのまま適用すると実態と乖離した所得額が算出される。簡便法の限界を理解した上での補正が不可欠である。

  • 理由① ゲーム内で獲得したトークンを外部ウォレットや取引所に送金すると、簡便法の計算式では捕捉できず所得が漏れる。ゲーム内完結を前提とした計算式が、現実のプレイヤー行動と合っていない。
  • 理由② 簡便法で必要な「購入したトークンの総額」の把握には結局ゲーム内の取引履歴が必要となり、簡便法を使っても集計負担が軽減されない。簡便法の「簡便」さが実質的に機能していない。
  • 理由③ 期末時点の換算レートで一括評価するため、年中に高値で売却済みでも期末に暴落していれば所得が過小に、その逆なら納税額が手持ち資産を超える事態が生じる。

国税庁NFT FAQ 問8 / 所得税法第36条第1項

この記事でわかること

  • 国税庁FAQ簡便法の計算式と仕組み
  • FAQ簡便法に内在する3つの構造的問題点
  • 「ゲーム内通貨(トークン)」の範囲が不明確であることの実務への影響
  • 問題点をクリアするための改善された簡便法(簡便法(改))の具体的な手順
  • 簡便法(改)を損益計算ソフトに反映させる方法
目次

FAQ簡便法の計算式と仕組み

【結論】FAQ簡便法は、年末のトークン残高から年始の残高と期中の購入額を差し引いた「増減数量」に年末の換算レートを乗じて所得金額を算出する方法である(NFT FAQ問8)。

令和5年1月13日、国税庁は「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表し、取引履歴の取得が困難なBCGの損益計算について簡便法を示した。計算式は以下のとおりである。

(トークンベースの所得金額)× 年末の暗号資産への換算レート = 雑所得の金額
ステップ 計算内容
その年の12月31日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額
①から、その年の1月1日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額を控除
②から、その年に購入したゲーム内通貨(トークン)の総額を控除
③の金額(トークンベースの所得金額)× 年末の暗号資産への換算レート = 雑所得の金額

年の中途で暗号資産に交換したゲーム内通貨がある場合は、交換で取得した暗号資産の価額を雑所得の金額に加算する。また、ゲーム内通貨が暗号資産と交換できないなど時価の算定が困難な場合は、雑所得の金額を0円として差し支えない(NFT FAQ問8)。

一見するとシンプルで実用的に見えるが、この計算式をそのまま適用すると、損益計算ソフトで適切な損益が計算できない。以下、3つの構造的問題点を解説する。

FAQ簡便法の3つの構造的問題点

【結論】FAQ簡便法の3つの問題点は、①外部送金時の所得漏れ、②購入額把握のための履歴取得困難、③期末一括評価による実態乖離であり、いずれもそのまま適用すると実態に即した損益が算出できない(所得税法第36条第1項)。

問題点①:外部送金で所得が計算から漏れる

FAQ簡便法の計算式は「年末の残高 − 年始の残高 − 購入額」であるため、ゲーム内で獲得したトークンを期中に外部ウォレットへ送金した場合、その送金分は年末の残高に含まれない。つまり、BCGをプレイして得たトークンのうち、外部に移した分は所得計算の対象から完全に漏れてしまう。BCGのプレイヤーが利益を確定するためにゲーム内トークンをCEX(中央集権型取引所)に送金して売却するのは一般的な行動であり、この送金分が計算から外れるのは致命的な欠陥である。

問題点②:購入額の把握に結局ゲーム内履歴が必要

計算式にある「その年に購入したゲーム内通貨(トークン)の総額」を正確に把握するためには、ゲーム内でどのような取引を行ったかの履歴を確認する必要がある。しかし、そもそもFAQ簡便法が「取引履歴の取得が困難」であることを前提に設けられた方法であるにもかかわらず、購入額を算出するために取引履歴が必要になるのは論理的に矛盾する。ゲーム内のマーケットプレイスやスワップ機能で暗号資産を使ってゲーム内通貨を購入するケースは多いが、これらの取引記録がシステム上取得できないBCGが大半である。

問題点③:期末一括評価で実態と乖離した所得が算出される

FAQ簡便法では、期中に増減したトークンの数量を「年末の換算レート」で一括して日本円に換算する。この方式の場合、以下のような実態との乖離が生じる。

たとえば、年の前半にBCGをプレイしてトークンを大量に獲得し、その時点でのトークン価格が1枚=1円だったとする。その後トークン価格が暴落し年末時点で1枚=0.01円になった場合、年末のレートで評価すれば所得はごく僅かになる。逆に、年の前半に1枚=0.01円で獲得したトークンが年末に1枚=100円に高騰していた場合、実際には換金していないにもかかわらず、年末のレートで計算された巨額の所得に対して課税される。この場合、手元にあるのはゲーム内トークンだけで日本円がないため、納税資金が不足し破産するリスクがある。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

「ゲーム内通貨(トークン)」の範囲をめぐる疑問点

【結論】FAQ簡便法の対象となる「ゲーム内通貨(トークン)」に暗号資産やNFTが含まれるかは不明確であり、暗号資産を含めない場合は簡便法が実務上ほとんど使えなくなる(NFT FAQ問8)。

FAQ簡便法の適用範囲に関しては、計算式以前に「ゲーム内通貨(トークン)」の定義が不明確であるという根本的な問題がある。

  • 第一に、ゲーム内通貨にFT(暗号資産)やNFTが含まれるのかが明らかでない。STEPNを例にとれば、GST・GMT・SOLはゲーム内で使用するが取引所でも売買可能な暗号資産である。これらを「ゲーム内通貨」に含めないのであれば、簡便法は実務でほとんど使用できないか、原則的計算方法と簡便法を併用する必要が生じ、極めて使いづらくなる。
  • 第二に、仮にNFTを簡便法の対象外とした場合、NFTについてのみ原則法に戻って取引の都度計算する必要が生じる。BCG内で暗号資産とNFTが混在して取引される以上、一部だけ原則法を適用するのは管理が複雑化する。
  • 第三に、FAQ(NFT)はBCG報酬の所得を「その他雑所得」に該当することを前提として回答しているように読める。そうすると、BCGのプレイが事業所得や業務に係る雑所得に該当する場合にも簡便法を適用できるのかが不明瞭である。

取引履歴が残らないBCGで簡便法を使って精度の高い所得金額を算出するためには、ゲーム内で生じたものをすべて計算に入れなければならないため、暗号資産やNFTなどをすべて含めたものと解釈するのが合理的である。

簡便法(改):問題点をクリアした実務的アプローチ

【結論】FAQ簡便法の問題点をクリアするには、BCGを「ステーキングや流動性供給の一種」と捉え、外部送金分とNFTの換算分も加味して期中の暗号資産増減数量を算出し、各月に按分して計上する方法(簡便法(改))が有効である(所得税法第36条第1項)。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

FAQ簡便法の目指すところは「取引履歴の取得が困難なBCGの増減トークンを日本円換算し、損益計算に反映させること」であるから、3つの問題点をクリアした以下の計算式(簡便法(改))を実務では推奨する。

簡便法(改)の計算式

加算項目 内容
期末(または引退日)時点でBCG内ウォレットに残っている暗号資産の数量
期末(または引退日)時点でBCG内ウォレットに残っているNFTを取得価額で換算した暗号資産の数量
期中にBCG内ウォレット外に移した暗号資産の数量
期中にBCG内ウォレット外に移したNFTを取得価額で換算した暗号資産の数量
控除項目 内容
期首時点でBCG内ウォレットに残っている暗号資産の数量
期首時点でBCG内ウォレットに残っているNFTを取得価額で換算した暗号資産の数量
期中にBCG内ウォレット外から移してきた暗号資産の数量
期中にBCG内ウォレット外から移してきたNFTを取得価額で換算した暗号資産の数量

上記の差額が「期中に増減した暗号資産の数量」となる。数量が増加していれば各月に按分し、各月初日のボーナス(利益)として損益計算ソフトに入力する。逆に数量が減少していれば、減少数量に取得原価を乗じた金額を損失として計上する。

FAQ簡便法との違い

比較項目 FAQ簡便法 簡便法(改)
外部送金の扱い 計算対象外(漏れる) 加算項目に含める
NFTの扱い 対象に含むか不明確 取得価額で暗号資産に換算して含める
時価評価のタイミング 期末に一括評価 各月に按分して各月の時価で評価
損益計算ソフトとの親和性 低い(一括入力が前提) 高い(各月のカスタムファイルで入力可能)

実務に必要な情報

簡便法(改)を適用するために、納税者は最低でも以下の4つの情報を用意する必要がある。

  • 期首のBCG内ウォレットの暗号資産・NFTの数量
  • 期末のBCG内ウォレットの暗号資産・NFTの数量
  • 期中にBCG内ウォレットで暗号資産・NFTを入送金したトランザクション
  • 上記1〜3に該当するNFTの取得原価(日本円換算不要。可能な範囲で可)

BCGを複数プレイしている場合はBCGごとに計算し、同一BCG内で複数の暗号資産を利用している場合は暗号資産ごとに計算する。CEXなどで取引履歴が取得できる取引については、通常どおり損益計算を行う。

なお、増加数量を各月で按分して損益計算ソフト(例:クリプタクト)のカスタムファイルに入力する際、price欄を空欄にしておけば、ソフト側が自動で時価を取得して反映する。そのため、時価の平均を自分で算出して掛け算する方法よりも、按分する方法の方が手間が少ない。明らかに送金タイミングがプレイ期間の前半に集中している場合は、実態に即した形で各月の増減数量を調整する必要がある(損益計算ソフトのトークン数量不足エラー対策にもなる)。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. FAQ簡便法は必ず使わなければならないのですか?

必ずしも使う必要はない。FAQ簡便法は国税庁が示した計算方法の一つであり、原則的な計算方法で損益計算を行うことも認められている(NFT FAQ問8)。取引履歴が取得可能であれば、原則法の方が正確な所得金額を算出できる。

Q2. ゲーム内通貨が暗号資産と交換できない場合はどうなりますか?

所得金額は0円として差し支えない。ゲーム内通貨が暗号資産と交換できないなど時価の算定が困難な場合は0円計上が認められている(NFT FAQ問8)。ただし、そのゲーム内通貨を暗号資産と交換できる他のトークンに交換した時点で、当該トークンの価額を雑所得として申告する必要がある。

Q3. BCGのサービスが年末に終了してデータが確認できない場合はどうすればよいですか?

把握可能な範囲で合理的に計算するほかない。FAQ簡便法は年末年始の残高把握が前提であるが、サービス終了によりデータが消失している場合は、送金履歴等の外部データから可能な限り残高を推定して計算する。損益計算の基本的な考え方は所得税法第36条第1項に基づく経済的利益の認識であり、把握不能な部分まで申告義務が課されるものではない。

Q4. 簡便法(改)は税務署に認められますか?

確度80%。簡便法(改)は国税庁が公式に示した方法ではないが、所得税法第36条第1項に基づく経済的利益の認識という原則に則った合理的な計算方法である。FAQ簡便法の問題点を解消しつつ、客観的な計算根拠を保持しているため、実務上は税務署から否認されるリスクは低い。ただし、公式見解ではないことは理解しておく必要がある。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

関連記事・サービスページ

関連記事

専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 所得税法第35条(雑所得)
  • 所得税法第37条第1項(必要経費)
  • NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)問8(令和5年1月13日・国税庁)
必要に応じてご共有ください
  • URLをコピーしました!
目次