NFTを相続・贈与で取得した場合、相続税・贈与税の課税対象となる。評価方法は財産評価基本通達第135条(書画骨とう品)に準じ、売買実例価額等を参酌して評価する。
- 理由① NFTは財産的価値を有する資産であり、財産評価基本通達にNFT固有の定めがないため、同通達第5条(定めのない財産の評価)を根拠に第135条を準用する。デジタルアートを「書画骨とう品」に準じて扱う点が暗号資産(時価評価)との決定的な違いである。
- 理由② 評価の基礎となるのは「売買実例価額」「精通者意見価格等」であり、マーケットプレイスでの直近取引価格やフロアプライスが参考指標となる。ただしNFTは流動性が低く価格変動が激しいため、評価時点の時価の客観的な立証が実務上の最大の課題となる。
- 条件 取引実績がなく市場価格を把握できないNFTは、精通者意見価格等による評価が必要となるが、NFTの「精通者」自体が確立されていない分野である。評価額をゼロとすることは困難であり、合理的な評価根拠の文書化が税務調査対策上不可欠。
財産評価基本通達第5条・第135条 / 国税庁NFT FAQ 問9 / 相続税法第2条・第2条の2
この記事でわかること
- NFTが相続税・贈与税の課税対象となる根拠
- 評価通達135条(書画骨とう品)に準じた評価方法
- 著作権を伴うNFTの評価通達148条(著作権の評価)準用
- NFTの時価算定が困難な場合の実務対応
- 財産債務調書・国外財産調書への記載の要否
NFTが相続税・贈与税の課税対象となる根拠
【結論】NFTは「経済的価値のある財産」に該当し、相続税・贈与税の課税対象となる(相続税法第2条、第2条の2、相続税法基本通達11の2-1、NFT FAQ 問9)。贈与者側の所得税課税は、NFTが「譲渡所得の基因となる資産」か「棚卸資産等」かで適用条文が異なる。
相続税法は、相続・遺贈・贈与により取得した「財産」のすべてを課税対象としている。NFTはブロックチェーン上で唯一性が担保されたデジタル資産であり、マーケットプレイス等で売買が行われている場合には経済的価値がある。したがって、暗号資産と同様に相続税・贈与税の課税対象となる。
譲渡所得の基因となる資産(コレクション目的NFT等)の場合
個人がコレクション目的で保有するNFTなど、譲渡所得の基因となる資産を贈与・低額譲渡する場合の課税関係は、相手方が個人か法人かで異なる。
| 取引 | 贈与者(譲渡者)の課税 | 受贈者(取得者)の課税 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 個人→個人 贈与 | 所得税なし | 贈与税 | 相続税法第1条の4・第2条の2 |
| 個人→個人 低額譲渡 | 所得税なし | 贈与税(時価との差額) | 相続税法第7条 |
| 個人→法人 贈与 | 所得税あり(みなし譲渡) | 法人税(受贈益) | 所得税法第59条第1項第1号 |
| 個人→法人 低額譲渡 | 所得税あり(みなし譲渡) | 法人税(受贈益) | 所得税法第59条第1項第2号 |
所得税法第59条第1項(みなし譲渡課税)は、個人が法人に対して資産を贈与した場合、または著しく低い価額で譲渡した場合に、時価で譲渡があったものとみなす規定である。個人間の贈与・低額譲渡には適用されない。個人間で著しく低い価額で財産を取得した場合は、取得者側に相続税法第7条の贈与税が課される。
棚卸資産・事業用資産(クリエイターのNFT等)の場合
NFTクリエイターが一次流通で発行するNFTや、営利目的で継続的に取引するNFTなど、事業所得・雑所得の基因となる棚卸資産等の場合は、所得税法第40条が適用される。この場合、個人間の贈与・低額譲渡であっても贈与者に所得税が課される。
| 取引 | 贈与者(譲渡者)の課税 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 個人→個人 贈与 | 所得税あり(時価を総収入金額に算入) | 所得税法第40条 |
| 個人→個人 低額譲渡 | 所得税あり(時価を総収入金額に算入) | 所得税法第40条 |
| 個人→法人 贈与 | 所得税あり | 所得税法第40条 |
| 個人→法人 低額譲渡 | 所得税あり | 所得税法第40条 |
所得税法第40条は、棚卸資産・業務用資産・暗号資産等を贈与または低額譲渡した場合に、時価を総収入金額に算入する規定である(所得税法施行令第87条に対象資産を列挙)。NFTの所得区分が事業所得・雑所得に該当する場合(一次流通のクリエイター、営利目的の継続的取引者など)は、相手方が個人であっても40条によりみなし譲渡課税が生じる。
NFTの贈与・低額譲渡における課税関係の判断では、「そのNFTが譲渡所得の基因となる資産か、棚卸資産等か」の区分が決定的に重要となる。二次流通のコレクターが保有するNFTと、クリエイターが発行した一次流通NFTでは適用条文が異なる点に注意が必要である。
関係法令:相続税法第2条、第2条の2、第7条、相続税法基本通達11の2-1/所得税法第40条、第59条第1項/所得税法施行令第87条
評価通達135条に準じた評価方法
【結論】NFTの相続税・贈与税の評価額は、財産評価基本通達第5条(定めのない財産)に基づき、同通達第135条(書画骨とう品の評価)に準じて、売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価する(NFT FAQ 問9、財産評価基本通達第5条、第135条)。
財産評価基本通達には、NFTの評価方法に関する個別の定めがない。そこで、通達第5条(「この通達に定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する」)が適用される。
国税庁NFT FAQ 問9は、デジタルアート等のNFTについて、書画骨とう品の評価を定めた通達第135条に準じた評価を示している。
具体的な評価手順
| 優先順位 | 評価方法 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 売買実例価額 | マーケットプレイス(OpenSea等)での直近の取引価格 |
| 2 | 精通者意見価格 | NFTアート等に精通した者の評価意見 |
| 3 | その他参酌可能な価格 | 類似NFTの取引価格、コレクション全体の取引傾向等 |
マーケットプレイス上で活発に取引されているNFTであれば、課税時期(相続開始日または贈与日)における市場取引価格で評価できる。
暗号資産との評価方法の違い
暗号資産(ビットコイン、イーサリアム等)の相続税評価は、取引所が公表する課税時期の取引価格で行う(国税庁FAQ 4-2)。NFTはこの方法が使えないケースが多い。暗号資産は同一銘柄が大量に流通し取引価格が明確であるのに対し、NFTは一点物であり、取引頻度が低く、課税時期にちょうど取引価格が存在するとは限らないためである。
関係法令:財産評価基本通達第5条、第135条
著作権を伴うNFTの評価|通達148条の準用
【結論】NFTアーティストが著作権を保有したまま相続が発生した場合、財産評価基本通達第148条(著作権の評価)に準じた評価も候補となる。算式は「年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率」である(財産評価基本通達第148条)。
NFTアートコレクションの価値は、実質的にその著作権本体にある場合がある。NFTクリエイターが自身のNFTアートに係る著作権を保有したまま死亡した場合や、法人成りにあたり権利を法人に譲渡する場合には、通達第135条(書画骨とう品)だけでなく、通達第148条(著作権の評価)に準じた算定が有力な選択肢となる。
通達148条に基づく算式
著作権の評価額 = 年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 年平均印税収入の額 | 課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の年平均額 |
| 0.5 | 通達所定の乗率 |
| 評価倍率 | 著作物に精通する者の意見等を基に推算した印税収入期間に応ずる基準年利率による複利年金現価率 |
実務での適用事例
NFTアーティストが法人成りし、自身のNFTコレクションの権利をすべて法人に譲渡した実務事例では、以下の方法で時価を算定している。
- 年平均印税収入の額:NFTアートのロイヤリティ収入の過去2年間(NFT発売から2年しか経過していなかったため)の年平均額を使用
- 評価倍率の算定:NFTアートに精通する者の意見として、NFTアートのリアルイベント参加者約100名へのアンケート(「NFTアートは今後どれくらいの期間盛り上がるか」)を実施し、回答年数の平均(約2年)を印税収入期間として使用
自身のコレクション以外のNFTで時価が明らかでないものについては、取得原価がわかるものは取得原価、取得原価もわからないもの(エアドロップ等)は0円で計上している。
なお、法人への譲渡を行う個人事業者が消費税の課税事業者の場合、消費税の計上漏れがないよう注意が必要である。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に相談する」をご覧ください。
財産債務調書・国外財産調書への記載
【結論】NFTは財産債務調書の記載対象であり、種類別(アート、音楽、ゲーム等)・用途別に記載する。NFTの所在は保有者の住所とされるため、国外財産調書への記載は不要である(NFT FAQ 問13〜15、国外送金等調書規則第12条第3項第6号)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に相談する」をご覧ください。
12月31日時点で暗号資産等と交換可能なNFTを保有している場合、財産債務調書の記載が必要となる(提出要件を満たす場合)。
価額の記載は、時価または見積価額による。見積価額は以下の順で求める。
| 優先順位 | 見積価額の算定方法 |
|---|---|
| 1 | 12月31日の売買実例価額(なければ同日前の直近の売買実例価額) |
| 2 | 翌年1月1日から提出期限までの譲渡価額 |
| 3 | 取得価額 |
NFTの所在は「保有者の住所」とされるため(マーケットプレイスの所在地ではない)、居住者が保有するNFTは「国外にある財産」に該当しない。したがって、国外財産調書への記載は不要であり、財産債務調書に記載する。なお、財産債務調書合計表を作成する際は、「財産の区分」欄の「その他の財産(上記以外)」に記載する点に留意が必要である。
関係法令:国外送金等調書法第5条、第6条の2第1項、国外送金等調書規則第12条第3項第6号
よくある質問(FAQ)
Q1. NFTを相続した場合、相続税はかかるか?
かかる。NFTは経済的価値のある財産であり、相続税の課税対象となる(相続税法第2条、NFT FAQ 問9)。評価は財産評価基本通達第135条(書画骨とう品)に準じて売買実例価額等で行う。
Q2. NFTの時価がわからない場合はどうするか?
取得価額で評価する。売買実例価額も精通者意見価格も得られない場合は、取得価額をもって評価する。エアドロップ等で取得原価もわからない場合は0円で計上する実務対応がとられている。
Q3. NFTクリエイターが死亡した場合、作品の著作権はどう評価するか?
財産評価基本通達第148条(著作権の評価)に準じて評価する。算式は「年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率」であり、NFTロイヤリティ収入を年平均印税収入として用いる。
Q4. 海外のマーケットプレイスで保有するNFTは国外財産調書に記載するか?
記載不要である。NFTの所在は保有者の住所とされるため、居住者のNFTは「国外にある財産」に該当しない(国外送金等調書規則第12条第3項第6号)。財産債務調書に記載する。
Q5. NFTを個人間で安く譲った場合、譲渡者に所得税はかかるか?
NFTの所得区分による。コレクション目的NFT(譲渡所得の基因となる資産)の個人間低額譲渡では、譲渡者に所得税は課されず、取得者に贈与税が課される(相続税法第7条)。一方、クリエイターの一次流通NFTや営利目的の継続取引NFT(棚卸資産等)の場合は、個人間であっても所得税法第40条により時価が総収入金額に算入され、譲渡者に所得税が課される。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に相談する」をご覧ください。
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暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 相続税法第2条、第2条の2(納税義務者)
- 相続税法第22条(評価の原則)
- 相続税法基本通達11の2-1(財産の範囲)
- 財産評価基本通達第5条(評価方法の定めのない財産の評価)
- 財産評価基本通達第135条(書画骨とう品の評価)
- 財産評価基本通達第148条(著作権の評価)
- 所得税法第40条(たな卸資産等の贈与等の場合の総収入金額算入)
- 所得税法第59条第1項(贈与等の場合のみなし譲渡)
- 所得税法施行令第87条(たな卸資産等の贈与等の場合の総収入金額算入の特例)
- 国外送金等調書法第5条、第6条の2第1項(国外財産調書、財産債務調書)
- 国外送金等調書規則第12条第3項第6号(NFTの所在の判定)
