NFTの時価評価|時価がないNFTの取扱いと評価方法

結論

NFTの時価評価に統一的なルールはなく、場面ごとに評価方法が異なる。時価が算定できないNFTは0円取得として処理し、売却時に全額課税される。

  • 理由① 所得計算では直近取引価格やフロアプライスが基準となるが、NFTは1点もので流動性が低く、同一条件の取引事例がないケースが大半。暗号資産のように取引所の終値で一律に評価できない点がNFT時価評価の根本的な困難さである。
  • 理由② 相続・贈与時は財産評価基本通達第135条(書画骨とう品)に準じ、売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価する。所得計算時の評価方法とは根拠条文が異なるため、同じNFTでも場面によって評価額が変わり得る。
  • 条件 エアドロップや無償配布で取得したNFTは取得時に時価を算定できないケースが多く、実務上は取得価額0円で記録する。売却・交換時に売却額の全額が利益となるため、課税の免除ではなく繰延べである点は暗号資産のハードフォークと同じ構造。

所得税法第36条第1項 / 財産評価基本通達第5条・第135条 / 国税庁NFT FAQ 問9

この記事でわかること

  • NFTの時価を算定する際の基本的な考え方と参照すべき価格情報
  • 時価の算定が困難なNFTの実務上の取扱い(0円処理)
  • 相続・贈与によりNFTを取得した場合の評価方法(評価通達135条準用)
  • NFTクリエイターが法人化する際の時価算定方法(評価通達148条準用)
  • 財産債務調書におけるNFTの価額の記載方法
目次

NFTの時価算定の基本的な考え方

【結論】NFTの時価は、マーケットプレイスでの提示価格・直近の取引価格、フロアプライス(コレクション中の最低価格)、同じ制作者の類似作品の販売価格などを基に算定する(所得税法第36条第1項)。ただし、販売実績のないNFTや時価の参照先がないNFTについては、算定が極めて困難な場合がある。

NFTの時価算定にあたって参照すべき情報は以下のとおりです。

参照情報内容
直近の取引価格そのNFT自体がマーケットプレイスで実際に売買された直近の価格
フロアプライス同一コレクション内で出品されている最低価格
類似作品の価格同じ制作者の類似NFTの提示価格・販売価格
二次流通の状況そのNFTの二次流通における取引量・取引頻度
購入価格暗号資産(仮想通貨)や日本円でNFTを購入した場合のその対価

暗号資産や日本円でNFTを購入した取引履歴が確認できる場合は、その購入価格が取得価額として計算に使用できるため、時価算定の問題は発生しません。時価算定が問題となるのは、エアドロップによる無償取得、法人の期末評価、他者への無償譲渡といった場面です。

NFTの時価算定が困難な理由

NFTの時価算定には、暗号資産とは異なる固有の困難さがあります。

  • NFTアートはマネーロンダリングに利用されることがあり、オークション価格が不自然に跳ね上がるケースがあるため、取引価格が厳密な時価とは言い難い場合がある
  • エアドロップされるNFTには、単なるQRコードの画像やバナー広告のような画像など、常識的に高値がつくとは思えないものが多く含まれる
  • 美術鑑定家にNFTアートの評価を依頼しようとしても、数が多すぎるため対応できないケースが多い
  • 取引件数が数万件に及ぶ場合、すべてのNFTの時価を厳密に算定することは実務上不可能に近い
  • 信頼できる精通者が存在するか、各NFTについて十分な量の売買実例が存在するか、という根本的な問題がある

関係法令:所得税法第36条第1項

時価不明のNFTの実務上の取扱い(0円処理)

【結論】エアドロップ等で無償取得した時価不明のNFTについては、実務上、時価を0円として処理する対応がとられている。ただし、「NFTの時価は誰にもわからないからすべて0円」と安易に処理することにはリスクが伴う。

0円処理が認められる場面

CoinGecko等の価格表示サイトに掲載されていないトークンやNFTで、マーケットプレイスでの売買実績もないものについては、所得計算の実務上、時価を0円として処理することが行われています。国税庁NFT FAQ問7においても、商品購入時に無償で取得したトークンについて「時価算定困難→0円可」とされています。

0円処理のリスクと注意点

「NFTが高額なのはバブルであり時価は誰にもわからない」として、マーケットプレイスで取引価格が確認できるNFTまで安易に時価0円で処理することにはリスクが伴います。直近の取引価格やフロアプライスが存在するNFTについては、それらを参照して時価を算定する必要があります。

0円処理が許容されるのは、あくまで以下のような場合に限られます。

場面具体例
価格情報が存在しない価格表示サイトに未掲載、マーケットプレイスでの売買実績なし
経済的価値が認められない単なるQRコード画像、バナー広告のような画像、クリスマスカード等
算定コストが過大数万件のエアドロップNFTを1つ1つ算定することが現実的に困難

0円処理後に売却した場合

時価0円で取得したNFTを後日売却(または他のトークンと交換)した場合、取得原価が0円であるため、売却時の対価(受け取ったトークンの時価等)が全額利益として計上されます。0円処理は「課税の免除」ではなく「課税タイミングの繰り延べ」である点に注意が必要です。

関係法令:所得税法第36条第1項、国税庁NFT FAQ問7

相続・贈与時のNFTの評価方法

【結論】相続・贈与により取得したNFTは、財産評価基本通達に定めがないため、評価通達5条(定めのない財産の評価)により、評価通達135条(書画骨とう品の評価)に準じて評価する(国税庁NFT FAQ問9)。具体的には、売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して評価し、市場取引価格があればそれによることができる。

NFTは財産評価基本通達に直接の定めがない財産です。そのため、国税庁NFT FAQ問9では、評価通達5条(評価方法の定めのない財産)に基づき、評価通達135条(書画骨とう品の評価)に準じて評価して差し支えないとしています。

評価の具体的な方法

評価方法内容
売買実例価額そのNFTの過去の売買実績に基づく価格
精通者意見価格NFT市場に精通した者の意見に基づく価格
市場取引価格マーケットプレイスで確認できる直近の取引価格

市場取引価格が確認できる場合は、その価格で評価して差し支えありません。

著作権者の相続が発生した場合

NFTアート等に係る著作権者の相続が発生した場合には、評価通達148条(著作権の評価)に準じた評価も候補に入ります。これは、NFTアートコレクションの価値が実質的にその著作権本体にあると考えられるためです。

評価通達148条に基づく著作権の評価式は以下のとおりです。

著作権の評価額 = 年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率

関係法令:相続税法第2条、第2条の2、相続税基本通達11の2-1、財産評価基本通達5条、135条、148条

法人化時のNFTコレクションの時価算定

【結論】個人事業主のNFTクリエイターが法人化し、自身のNFTコレクションの権利を法人に譲渡する場合、NFTアートコレクションの価値は実質的にその著作権本体にあると考え、財産評価基本通達148条(著作権の評価)に準じて算定する実務対応がとられている。安易に0円や低額で譲渡すると、みなし譲渡課税(所得税法第59条第1項)により多額の所得税が追徴されるリスクがある。

なぜ法人化時に時価算定が不可欠なのか

個人がNFTコレクションを法人に無償譲渡(または著しく低い価額で譲渡)した場合、所得税法第59条第1項(みなし譲渡)の規定により、税務署から「適正な時価で譲渡したものとみなして」所得税を課される。つまり、実際には対価を受け取っていないにもかかわらず、時価相当額の所得があったとして課税される。

この追徴課税を防ぐためには、法人への譲渡時点で合理的な根拠に基づく時価を算定し、適正な対価で譲渡する(または適正な時価に基づいて所得税の申告を行う)必要がある。0円処理が許容されるエアドロップの場面とは根本的に状況が異なり、法人化時のNFT譲渡では時価算定を回避できない。

注意:みなし譲渡課税は税務調査で後日指摘されるケースが多く、指摘された時点では修正申告に加えて過少申告加算税・延滞税も発生する。法人化時のNFT譲渡は必ず事前に専門の税理士に相談すべきである。

実務上の算定手法

専門家の間で検討されている実務上の算定手法は以下のとおりです。

項目内容
評価根拠財産評価基本通達148条(著作権の評価)を準用
算式年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率
年平均印税収入の額課税時期の属する年の前年以前3年間におけるNFTコレクションの年平均売上(一次流通収入+ロイヤリティ収入)
0.5著作権者の所得税負担を考慮した割引率(通達上固定)
評価倍率残存期間に応じた基準年利率による複利年金現価率。NFTの場合、著作権の法定残存期間(著作者の死後70年)ではなく「NFTアートとしての収益が見込める期間」を残存期間として用いる
残存期間の推定NFTアートのリアルイベントで参加者(約100名)にアンケートを実施し、平均的な収益見込期間を推定(結果:約2年※実際NFTブームは2年で去った。)。この2年を残存期間として対応する複利年金現価率を算出し、評価倍率とする
自コレクション以外のNFT取得原価が判明していればその金額、不明なら0円

算式の流れを整理すると、①直近3年間のNFT売上の年平均額を算出し、②所得税負担の割引(×0.5)を行い、③NFTアートとして収益が見込める残存期間(本事例では2年)に対応する複利年金現価率を乗じて評価額を算出する。著作権の法定残存期間(著作者の死後70年)をそのまま使うとNFTの実態と著しく乖離するため、残存期間の合理的な推定が最大の論点となる。

この方法は法令に明文の定めがあるわけではなく、評価通達を準用した実務上のアプローチです。法人化に際してNFTコレクションの譲渡を検討する場合は、専門の税理士に相談することを推奨します。

関係法令:所得税法第59条第1項、財産評価基本通達148条

財産債務調書におけるNFTの価額

【結論】12月31日時点でNFTを保有し、財産債務調書の提出義務がある場合、NFTの価額は原則として「時価」で記載し、時価の算定が困難な場合は「見積価額」として売買実例価額→譲渡価額→取得価額の優先順位で記載する(国税庁NFT FAQ問13〜15)。NFTの所在は保有者の住所であり、国外財産調書への記載は不要である。

財産債務調書へのNFTの記載ルールは以下のとおりです。

項目内容
記載対象12月31日時点で暗号資産等と交換可能なNFT
記載区分種類別(アート、音楽、スポーツ、ゲーム等)、用途別、所在別
NFTの所在保有者の住所(マーケットプレイスの所在ではない)
国外財産調書記載不要(居住者のNFTは「国外財産」に該当しない)

価額の記載方法

価額は、原則として12月31日における「時価」で記載する。マーケットプレイスで市場取引価格が存在する場合はその価格による。時価の算定が困難な場合は、「見積価額」として以下の優先順位で算定した金額を記載する(国税庁NFT FAQ問14)。

区分優先順位評価方法
原則12月31日における時価(市場取引価格)
見積価額(時価算定困難時)12月31日の売買実例価額(なければ同日前で最も近い日の売買実例価額)
①がない場合:翌年1月1日から提出期限までの譲渡価額
①②がない場合:取得価額

関係法令:国外送金等調書法第6条の2第1項、国外送金等調書規則第12条第3項第6号

実務上の注意点

【結論】NFTの時価評価で最も重要なのは、①取引価格が確認できるNFTまで安易に0円処理しないこと、②0円処理したNFTの売却時は全額利益計上となること、③法人化や相続など時価算定が不可避な場面では通達準用による合理的な算定方法を検討すること、④海外マーケットプレイスで保有するNFTの調書記載を誤らないことの4点である。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税金を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

① 安易な0円処理の回避

「NFTにはバブルで時価がない」と一括して0円処理を行うことは税務リスクを伴います。マーケットプレイスで直近の取引価格が確認できるNFTについては、その価格を参照して時価を算定する義務があります。

② 法人の期末評価における注意

法人が保有するNFTについて、暗号資産と同様に期末時価評価を行うべきかは、そのNFTが暗号資産に該当するか否かによります。NFTは暗号資産とは異なり代替性がないため、暗号資産の期末時価評価(法人税法第61条第2項)の直接の対象とはなりませんが、棚卸資産に該当する場合は棚卸資産の評価規定に従います。

③ マネーロンダリングによる価格の歪み

NFTアートはマネーロンダリングに利用されるケースがあり、オークション価格が不自然に跳ね上がることがあります。このような場合の取引価格をそのまま時価として採用してよいかは慎重な判断が必要です。

④ 海外保管のNFTと調書記載の罠

海外のマーケットプレイス(OpenSea等)や海外ウォレットで保有しているNFTは、直感的には「国外財産」に思えるが、税務上、NFTの所在は「保有者の住所地」とされるため「国外財産調書」の記載対象外であり、「財産債務調書」に記載しなければならない(NFT FAQ問15)。

注意:この法解釈を誤って財産債務調書への記載を漏らした場合、税務調査において過少申告加算税等の加重措置(5%加算)の対象となるリスクがある。海外マーケットプレイスで保有=国外財産ではない点を正しく理解しておく必要がある。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税金を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. NFTの時価がわからない場合、すべて0円で処理してよいですか?

安易にすべて0円とすることにはリスクがある。マーケットプレイスで取引価格やフロアプライスが確認できるNFTは、それらを参照して時価を算定する必要がある(所得税法第36条第1項)。0円処理が許容されるのは、価格情報が存在せず経済的価値の算定が困難な場合に限られる。

Q2. エアドロップで受け取ったNFTを0円で計上した後に売却したら、税金はどうなりますか?

売却代金の全額が利益となる。取得原価が0円であるため、売却時に受け取った対価(暗号資産の時価等)が全額所得として課税される(所得税法第36条第1項)。0円処理は課税の免除ではなく、課税タイミングの繰り延べである。

Q3. 相続で取得したNFTはどのように評価しますか?

財産評価基本通達135条(書画骨とう品の評価)に準じて評価する。NFTは評価通達に直接の定めがないため、評価通達5条により135条を準用する(国税庁NFT FAQ問9)。売買実例価額、精通者意見価格、市場取引価格などを参酌して評価する。

Q4. NFTクリエイターが法人化する際、NFTコレクションの時価はどう算定しますか?

財産評価基本通達148条(著作権の評価)に準じて算定する実務対応がある。NFTアートコレクションの価値は実質的にその著作権本体にあると考え、年平均印税収入の額×0.5×評価倍率の算式で算定する。安易に0円で譲渡するとみなし譲渡課税(所得税法第59条第1項)のリスクがあるため、法人化時のNFT譲渡は必ず専門の税理士に相談すべきである。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税金を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

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関係法令

  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 所得税法第59条第1項(みなし譲渡)
  • 相続税法第2条、第2条の2(相続税の課税関係)
  • 相続税基本通達11の2-1(相続税の評価に関する取扱い)
  • 財産評価基本通達5条(評価方法の定めのない財産の評価)
  • 財産評価基本通達135条(書画骨とう品の評価)
  • 財産評価基本通達148条(著作権の評価)
  • 法人税法第61条第2項(暗号資産の期末時価評価)
  • 国外送金等調書法第6条の2第1項(財産債務調書)
  • 国外送金等調書規則第12条第3項第6号(財産債務調書の記載事項)
  • 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問7、問9、問13〜15(令和5年1月)
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