海外法人で暗号資産を運用しても、CFC税制により所得が日本の株主に合算課税(&損失が出た場合は切り捨てられる)される可能性がある。海外法人の設立だけでは日本の課税を回避できない。
- 理由① 暗号資産のデリバティブ取引やレンディングによる所得は「受動的所得」に該当し得る。CFC税制では経済活動基準を満たして全体合算を回避できても、受動的所得は部分合算課税の対象となるため、これらの暗号資産の運用益だけが日本で課税されるリスクが残る。
- 理由② 海外法人の租税負担割合が20%未満の場合にCFC税制の適用判定が行われる。暗号資産運用を目的に設立される法人は軽課税国に所在するケースが多く、まさにCFC税制の射程に入りやすい構造となっている。
- 条件 CFC税制の適用は日本の居住者・内国法人が海外法人の株式等の10%以上を保有している場合に問題となる。また、経済活動基準(事業基準・実体基準・管理支配基準・非関連者基準等)をすべて満たせば全体合算は回避できるが、暗号資産売買のみの法人がこれらの基準を満たすハードルは極めて高い。
租税特別措置法第66条の6
この記事でわかること
- CFC税制(タックスヘイブン対策税制)の基本的な仕組みと判定フロー
- 暗号資産を海外法人で運用する場合の合算課税リスク
- ペーパーカンパニー判定と経済活動基準の4要件
- 非居住者・外国法人の暗号資産取引に対する日本の課税関係
- 海外法人スキームを検討する際の実務上の注意点
CFC税制(タックスヘイブン対策税制)の概要
【結論】CFC税制は、日本の居住者・内国法人が株式の50%超を保有する海外法人(外国関係会社)が軽課税国に所在する場合、その海外法人の所得を日本の株主の所得に合算して課税する制度である。租税回避の意図がなくても適用される(租税特別措置法第66条の6、個人は第40条の4)。
CFC税制は1978年(昭和53年)に導入され、平成29年度税制改正で大幅に見直された。現行制度では、海外法人の「租税負担割合」と「経済実態の有無」の2軸で合算課税の要否を判定する。
外国関係会社の判定
CFC税制の対象となる「外国関係会社」とは、日本の居住者および内国法人が直接または間接にその発行済株式等の50%超を保有している外国法人、または実質的に支配している外国法人をいう。
合算課税の判定フロー
| ステップ | 判定内容 | 結果 |
|---|---|---|
| ① | 外国関係会社に該当するか(持株50%超等) | 非該当→CFC税制の対象外 |
| ② | 租税負担割合が27%以上か | 27%以上→合算課税なし(適用免除) |
| ③ | 特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)に該当するか | 該当→全額合算課税 |
| ④ | 租税負担割合が20%以上か | 20%以上→合算課税なし(③非該当の場合) |
| ⑤ | 経済活動基準の4要件をすべて満たすか | 満たさない→全額合算課税 |
| ⑥ | 受動的所得があるか | あり→受動的所得のみ部分合算課税 |
※ 令和5年度税制改正により、特定外国関係会社の適用免除となる租税負担割合の閾値は30%から27%に引き下げられた(令和6年4月1日以後開始事業年度から適用)。
特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)
租税負担割合が27%未満の外国関係会社のうち、以下のいずれかに該当する場合は「特定外国関係会社」として、所得の全額が合算課税の対象となる。
| 類型 | 判定基準 |
|---|---|
| ペーパーカンパニー | 実体基準(本店所在地国に事務所等を有すること)または管理支配基準(本店所在地国で事業の管理・支配・運営を自ら行っていること)のいずれも満たさない |
| 事実上のキャッシュボックス | 受動的所得の総資産に対する割合が30%超、かつ有価証券・貸付金・無形固定資産等の合計が総資産の50%超 |
| ブラックリスト国所在 | 租税情報交換等に非協力的として財務大臣が指定する国・地域に本店を有する |
経済活動基準(4要件)
特定外国関係会社に該当せず、租税負担割合が20%未満の外国関係会社は、以下の4要件をすべて満たすか否かで判定する。1つでも満たさなければ全額合算課税の対象となる。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 事業基準 | 主たる事業が株式の保有、著作権の提供、船舶・航空機の貸付け等でないこと |
| 実体基準 | 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること |
| 管理支配基準 | 本店所在地国において事業の管理、支配および運営を自ら行っていること |
| 所在地国基準 or 非関連者基準 | 事業の種類に応じていずれかを充足すること |
4要件をすべて満たす場合でも、受動的所得については部分合算課税の対象となる。
暗号資産を海外法人で運用する場合のCFC税制の注意点
【結論】暗号資産を海外法人で運用する場合、CFC税制上の最大のリスクはペーパーカンパニー該当性である。実体や管理支配の要件を満たさない場合、所得の内容にかかわらず全額合算課税となる。 一方、暗号資産の現物保有や現物売買益それ自体は、現行法上、キャッシュボックス判定の特定資産や部分合算課税の特定所得には明示的に含まれていない。ただし、デリバティブ取引やレンディング収入を行う場合には、部分合算課税の対象となる可能性がある。
暗号資産を海外法人で運用するスキームにおいてCFC税制上特に問題となるのは以下の3点である。
①ペーパーカンパニー判定
暗号資産運用は物理的設備や従業員を要しないため、海外法人が実体基準・管理支配基準を充足しないケースが多い。
- 本店所在地国に実在する事務所があるか
- 重要な意思決定が当該国で行われているか
- 独立した事業遂行体制があるか
②事実上のキャッシュボックス判定
事実上のキャッシュボックス判定では、総資産に占める「特定資産の割合が基準となる。 特定資産は法令上、概ね以下の資産に限定列挙されている。
- 有価証券
- 貸付金
- 貸付用固定資産
- 無形資産等
現行法上、暗号資産は有価証券には該当せず特許権等の無形資産にも該当しないと解されている。 したがって、暗号資産を保有しているという事実のみで、特定資産割合が上昇しキャッシュボックス判定に直結するわけではない。 もっとも、暗号資産関連事業と称しつつ、その実態が資金運用中心である場合貸付金や有価証券を併せて保有している場合 には、全体構造としてキャッシュボックス該当性が問題となる可能性はある。
③受動的所得としての部分合算課税
部分合算課税の対象となる特定所得は、法令上厳格に列挙されている。代表例は以下である。
- 配当等
- 利子等
- 有価証券の貸付対価
- 株式等の譲渡益
- デリバティブ取引の損益
- 外国為替差損益
- 無形資産の使用料・譲渡益
現行法上、暗号資産の現物売買益はこれらに明示的に含まれていないため、「暗号資産の現物売買益は受動的所得に該当する可能性が高い」とは言い切れないが、以下の場合は注意が必要である。
- 配当等
- 利子等
- 有価証券の貸付対価
- 株式等の譲渡益
- デリバティブ取引の損益
- 外国為替差損益
- 無形資産の使用料・譲渡益
① デリバティブ取引暗号資産の証拠金取引や先物取引は「デリバティブ取引」に該当する可能性があり、その損益は特定所得となり得る。
② レンディング報酬 暗号資産の貸付けによる報酬が「利子等」に該当すると評価される場合、特定所得となる可能性がある。
ここは実務上の論点であり、スキーム次第で評価が変わる。
CFC税制最大のリスク
【結論】 CFC税制の最大のリスクは、海外法人で利益が出た場合は日本の親会社に合算して課税される一方で、損失が出ても日本側の利益と相殺できない点にある。さらに海外法人ごとの個別計算であるため、法人間の損益通算もできない。結果として、利益だけが日本で課税され、損失は活用できないという納税者に不利な結果が生じる。
CFC税制では、一定の要件を満たす海外法人の所得は「適用対象金額」として日本の親会社の所得に合算される。これは実際に配当がなくても課税される仕組みである。一方で、その海外法人に欠損が生じた場合でも、日本の親会社の黒字と通算することはできない。また、複数の海外法人を保有していても、課税対象金額は法人ごとに個別計算されるため、ある法人の損失を他の法人の利益と相殺することも認められていない。
注意:欠損金は当該海外法人に限り翌年以降の利益と相殺することは可能であり、原則7年間の繰越控除が認められている。ただし日本側とは通算できないため、初期損失が先行する投資では税負担が先に生じる点に留意が必要である。
非居住者・外国法人の暗号資産取引の課税関係
【結論】非居住者が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を譲渡した場合、日本での申告は不要である。暗号資産の譲渡は国内源泉所得の対象となる資産の譲渡に該当しない(所得税法第161条、国税庁FAQ 1-8)。ただし、CFC税制の適用とは別の論点である。
CFC税制の検討に先立ち、「そもそも非居住者や外国法人が暗号資産取引を行った場合に日本で課税されるのか」を確認しておく必要がある。
注意:ただし、その非居住者や外国法人が日本国内に支店等の恒久的施設(PE)を有しており、暗号資産の譲渡所得がその恒久的施設に帰属する場合は、日本での申告・課税の対象となる。
非居住者の暗号資産譲渡
国税庁FAQ 1-8によれば、非居住者が日本の暗号資産交換業者に暗号資産を売却することにより生ずる所得は、日本の所得税の課税対象とならない。国内源泉所得の対象となる資産の譲渡に係る所得は以下のものに限定されており、暗号資産の譲渡はこれに含まれないためである。
| 国内源泉所得の対象となる資産の譲渡 |
|---|
| ①国内にある不動産の譲渡 |
| ②国内にある不動産の上に存する権利等の譲渡 |
| ③国内にある山林の伐採または譲渡 |
| ④内国法人の発行する株式等の譲渡で一定のもの |
| ⑤不動産関連法人の株式等の譲渡 |
| ⑥非居住者が国内に滞在する間に行う国内にある資産の譲渡 |
外国法人についても同様に日本での申告は不要であり、源泉徴収の対象ともされていない。
非居住者のNFT譲渡
NFT FAQ 問3によれば、非居住者がデジタルアートを紐づけたNFTを日本のマーケットプレイスで有償譲渡した場合も、原則として国内源泉所得に該当せず、日本の所得税の課税対象とならない。ただし、この回答はデジタルアートの閲覧に関する権利の設定に係る取引に限定したものであり、NFTに紐付けられた資産や権利の内容によっては個別の検討が必要となる。
非居住者の課税関係とCFC税制の違い
注意すべきは、非居住者・外国法人に対する課税の問題と、CFC税制の問題は別の論点だという点である。
| 項目 | 非居住者の課税関係 | CFC税制 |
|---|---|---|
| 問題の所在 | 海外にいる人が日本で課税されるか | 海外法人の所得が日本の株主に合算されるか |
| 対象者 | 非居住者・外国法人 | 日本の居住者・内国法人(海外法人の株主) |
| 根拠法令 | 所得税法第161条、法人税法第138条 | 租税特別措置法第66条の6(法人)、第40条の4(個人) |
日本人が海外に移住して非居住者となった場合、暗号資産の譲渡所得自体は日本の課税対象外となる。しかし、移住先で海外法人を設立して暗号資産を運用し、日本に残る家族等が株主であれば、CFC税制により日本の株主に合算課税が生じうる。
実務上の注意点
【結論】海外法人を使った暗号資産運用スキームの検討には、CFC税制の判定だけでなく、移転価格税制、国外転出時課税、租税条約の適用関係など複数の制度の検討が必要であり、国際税務に精通した税理士への相談が不可欠である(租税特別措置法第66条の6、第66条の4等)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「海外法人の暗号資産税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
海外法人スキーム検討時のチェックポイント
海外法人で暗号資産を運用するスキームを検討する際には、最低限以下の論点を確認する必要がある。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| ①外国関係会社該当性 | 日本の居住者・内国法人が株式の50%超を直接・間接に保有していないか |
| ②租税負担割合 | 海外法人の所在地国の実効税率は何%か。27%未満ならペーパーカンパニー判定が必要 |
| ③ペーパーカンパニー判定 | 現地に事務所があるか。現地で事業の意思決定を行っているか |
| ④経済活動基準 | 事業基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準をすべて満たすか |
| ⑤受動的所得の有無 | 暗号資産の売買益が受動的所得に該当するリスクの検討 |
| ⑥移転価格税制 | 日本の関連会社との取引が独立企業間価格で行われているか |
| ⑦国外転出時課税 | 海外移住時に含み益に対する課税が生じないか※現行法上、暗号資産の『現物』は対象外ですが、未決済の証拠金取引等のデリバティブ取引は対象となり得ます |
| ⑧租税条約 | 海外法人の所在地国と日本の間に租税条約があるか |
令和8年度税制改正(分離課税化)との関係
令和8年度税制改正大綱では、金商法改正を前提に「特定暗号資産」の取引に係る所得を分離課税(20%)とする方針が示されている。この改正が実現すれば、日本国内での暗号資産の税負担が大幅に軽減されるため、海外法人を経由するスキームのメリット自体が縮小する。分離課税化の動向を見極めたうえで、海外法人スキームの必要性を再検討すべきである。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「海外法人の暗号資産税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 法人税がゼロの国に会社を作って暗号資産を運用すれば税金はかかりませんか?
かかる可能性が極めて高い。法人税がゼロの国に設立した法人は租税負担割合が0%であり、CFC税制の適用対象となる。ペーパーカンパニーに該当すれば所得の全額が、経済活動基準を満たしても受動的所得が日本の株主に合算課税される(租税特別措置法第66条の6)。
Q2. 海外に移住すればCFC税制は適用されませんか?
本人が非居住者となっても、日本に居住する家族等が株主であればCFC税制は適用される。CFC税制の対象となるのは海外法人の日本居住者・内国法人の株主である(租税特別措置法第66条の6、第40条の4)。株主構成全体で50%超の判定を行うため、日本在住者が株式を保有していれば適用される。
Q3. 非居住者が海外取引所で暗号資産を売却した場合、日本で課税されますか?
原則課税されない。非居住者が暗号資産を譲渡した場合、日本の国内源泉所得に該当しないため、日本での申告は不要である(所得税法第161条、国税庁FAQ 1-8)。ただし、日本国内に支店等の恒久的施設(PE)を有し、そこに帰属する場合は例外的に日本で課税されるほか、所在地国の税法に基づく納税義務は別途検討が必要である。
Q4. CFC税制は個人にも適用されますか?
適用される。CFC税制は法人の株主(租税特別措置法第66条の6)だけでなく、個人の株主(租税特別措置法第40条の4)にも適用される。日本居住の個人が軽課税国の海外法人の株式を10%以上保有している場合等に、合算課税の対象となる。
Q5. 暗号資産の売買益は「受動的所得」に該当しますか?
取引手法によっては該当する可能性がある。現行税法上、暗号資産の「現物売買益」は受動的所得に明示されていない。しかし、暗号資産の証拠金取引等の「デリバティブ取引」による損益や、レンディングによる報酬が「利子等」に該当すると評価される場合には、受動的所得として部分合算課税の対象となり得るため、個別の検討が必要である。
Q6. 海外法人で暗号資産の運用損(損失)が出た場合、日本の親会社の利益や他の海外法人の利益と相殺(損益通算)できますか?
できません。CFC税制は、海外法人で「利益」が出た場合に日本の親会社に合算して課税する制度ですが、「損失」が出た場合には日本の親会社の利益と相殺することは認められていません。また、複数の海外法人を保有している場合でも、海外法人間での損益通算も禁止されています。したがって、損失が出てもグループ全体の税負担を減らす効果はなく、実質的に切り捨てられる厳しい仕組みとなっている点に注意が必要です。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「海外法人の暗号資産税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。
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暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 租税特別措置法第66条の6(法人のCFC税制)
- 租税特別措置法施行令第39条の15(法人の適用対象金額の計算)
- 租税特別措置法第40条の4(個人のCFC税制)
- 租税特別措置法第66条の4(移転価格税制)
- 租税特別措置法施行令第25条の20(個人の適用対象金額の計算)
- 租税特別措置法関係通達66の6-3等(外国関係会社間の損益不通算)
- 租税特別措置法第66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)
- 所得税法第161条(国内源泉所得)
- 所得税法第212条(源泉徴収)
- 所得税法施行令第281条
- 法人税法第138条
- 法人税法施行令第178条
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-8
- 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問3
