暗号資産は海外取引所に預けていても「国外財産」に該当しない。国外財産調書への記載は不要であり、財産債務調書のみに記載する。
- 理由① 暗号資産・NFTの所在は「保有者の住所(又は居所)」で判定される。物理的な保管場所(取引所のサーバー所在地やブロックチェーンのノード分布)ではなく、保有者が日本居住者であれば日本国内の財産として扱われる。
- 理由② 財産債務調書は所得2,000万円超かつ財産3億円以上等の要件を満たす居住者が提出する。12月31日時点の暗号資産の時価を種類ごとに記載する必要があり、DeFi上の未実現ポジション(LP・ステーキング等)も含まれる。
- 条件 所得税の申告漏れを指摘された場合に財産債務調書に正確な記載がない又は未提出の場合、過少申告加算税が5%加重される。逆に適正に記載していれば5%軽減される。記載の有無で加算税に最大10%の差が生じるため、提出義務がある場合は丁寧な記載が望ましい。
国外送金等調書法第5条 / 同施行令第10条第7項 / 同施行規則第12条第3項第6号 / 国税庁FAQ 7-3
この記事でわかること
- 財産債務調書と国外財産調書の違いと提出要件
- 暗号資産・NFTが財産債務調書に記載が必要となる条件
- 海外取引所の暗号資産が「国外財産」に該当しない理由
- 財産債務調書における暗号資産・NFTの価額の記載方法
- NFTを大量に保有している場合の実務的な記載方法
財産債務調書の提出要件と暗号資産
【結論】 12月31日時点で暗号資産を保有しており、かつ以下のいずれかの要件を満たす居住者は、財産債務調書に暗号資産を記載して提出する必要がある(国外送金等調書法第6条の2第1項・第3項、国税庁FAQ 7-1)。
提出が必要となる要件
| 要件区分 | 内容 |
|---|---|
| 要件A | 確定申告書の提出義務者で、総所得金額+山林所得金額の合計が2,000万円超(※退職所得金額は含まれない)、かつ、12月31日時点の財産の価額合計が3億円以上 |
| 要件B | 確定申告書の提出義務者で、総所得金額+山林所得金額の合計が2,000万円超(※退職所得金額は含まれない)、かつ、国外転出特例対象財産の価額合計が1億円以上 |
| 要件C(令和5年分以後) | 12月31日時点の財産の価額合計が10億円以上の居住者 |
要件Cは令和4年度税制改正で追加されたもので、所得要件を問わず財産が10億円以上であれば提出義務が生じる。提出期限は翌年6月30日まで。提出先は所得税の納税地の所轄税務署長である。
暗号資産の記載方法
財産債務調書への暗号資産の記載は、以下のルールに従う。
| 項目 | 記載方法 |
|---|---|
| 種類 | 暗号資産の種類別(ビットコイン、イーサリアム等の銘柄別)に記載 |
| 用途 | 一般用と事業用の別に記載 |
| 所在 | 保有者の住所(又は居所)で判定 → 所在別の記載は不要 |
| 取引所の国内外 | 暗号資産を預けている交換業者の所在が国内か国外かは記載の要否に影響しない |
暗号資産の価額の記載方法
【結論】 暗号資産の価額は、12月31日における「時価」又は「見積価額」で記載する。活発な市場が存在する暗号資産は暗号資産交換業者が公表する12月31日の取引価格で評価し、活発な市場が存在しない暗号資産は見積価額で記載する(国外送金等調書法第6条の2第6項、国税庁FAQ 7-2)。
活発な市場が存在する暗号資産
暗号資産交換業者が公表する12月31日の取引価格(時価)で記載する。残高証明書に記載された取引価格を用いることもできる。販売所での取引の場合は売却価格(買取価格)で評価して差し支えない。複数の暗号資産交換業者で取引している場合は、納税義務者が選択した業者の取引価格で評価できる。
時価算定が困難な暗号資産(見積価額)
以下の優先順位で見積価額を算定する。
| 優先順位 | 算定方法 |
|---|---|
| 第1順位 | 12月31日の売買実例価額(同日の実例がない場合は、同日前の同日に最も近い日の売買実例価額) |
| 第2順位 | 翌年1月1日から提出期限までの譲渡価額 |
| 第3順位 | 取得価額 |
NFTの財産債務調書への記載方法
【結論】 12月31日時点で保有するNFTが暗号資産等の財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、財産債務調書への記載が必要となる(NFT FAQ 問13〜15)。NFTの所在も暗号資産と同様に保有者の住所で判定され、マーケットプレイスの所在は関係しない。
NFTの記載ルール
| 項目 | 記載方法 |
|---|---|
| 種類 | NFTの種類別(アート、音楽、スポーツ、ゲーム等)に記載 |
| 用途 | 一般用と事業用の別に記載 |
| 所在 | 保有者の住所(又は居所)で判定 → 所在別の記載不要 |
| 調書合計表 | 「その他の財産(上記以外)」欄に記載 |
| マーケットプレイスの所在 | 国内外を問わず記載が必要 |
大量のNFTを保有している場合
NFTを大量に保有している場合は、別紙で対応することが認められる。種類を厳密に分けられない場合は、合計数・合計額で記載するなど柔軟な対応も許容されると考えられる。(※ただし、この点について国税庁から明確な取扱いが公表されているわけではないため、実際の記載に当たっては所轄税務署や税理士への事前確認が推奨される)
NFTの価額の記載方法
NFTの価額も「時価」又は「見積価額」で記載する。
| 優先順位 | 算定方法 |
|---|---|
| 時価 | 12月31日における市場取引価格(不特定多数の当事者間で通常成立する価額) |
| 見積① | 12月31日の売買実例価額(同日の実例がない場合は、同日前の同日に最も近い日におけるその年中の売買実例価額) |
| 見積② | 翌年1月1日から提出期限までの譲渡価額 |
| 見積③ | 取得価額 |
国外財産調書と暗号資産
【結論】 暗号資産やNFTは「国外財産」に該当しないため、国外財産調書への記載は不要である。暗号資産・NFTの所在は保有者の住所で判定されるため、日本の居住者が海外取引所や海外マーケットプレイスに預けていても「国外にある財産」とはならない(国外送金等調書法第5条、国税庁FAQ 7-3、NFT FAQ 問15)。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「海外法人・暗号資産の国際税務を相談する」をご覧ください。
国外財産調書制度は、12月31日において価額の合計額が5,000万円を超える「国外財産」を有する居住者(非永住者を除く)に提出義務が課されるものである。
「国外にある」かどうかは、財産の種類ごとに12月31日の現況で判定する。暗号資産は「財産を有する者の住所(住所を有しない者にあっては、居所)」の所在により判定する財産に該当する。したがって以下の結論となる。
| 状況 | 国外財産調書への記載 |
|---|---|
| 日本居住者が国内取引所に暗号資産を保有 | 不要(国内財産) |
| 日本居住者が海外取引所に暗号資産を保有 | 不要(保有者の住所=日本 → 国内財産) |
| 日本居住者が海外マーケットプレイスでNFTを保有 | 不要(保有者の住所=日本 → 国内財産) |
いずれの場合も、財産債務調書への記載は要件を満たせば必要となる。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「海外法人・暗号資産の国際税務を相談する」をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外取引所にある暗号資産は国外財産調書に書く必要がありますか?
不要である。暗号資産の所在は取引所の所在地ではなく保有者の住所で判定されるため、海外取引所に預けていても「国外財産」に該当しない(国税庁FAQ 7-3、国外送金等調書法第5条、同施行令第10条第7項、同施行規則第12条第3項第6号)。財産債務調書の提出要件を満たす場合は、財産債務調書に記載する。
Q2. 財産債務調書にはすべての暗号資産を記載するのですか?
そのとおりである。12月31日時点で保有するすべての暗号資産を種類別(銘柄別)・用途別に記載する(国税庁FAQ 7-1)。財産債務調書の提出要件(所得2,000万円超かつ3億円以上の財産、又は10億円以上の財産等)に該当する場合に記載が必要となる。
Q3. 価値がほぼゼロのNFTも財産債務調書に記載しますか?
12月31日時点で財産的価値を有する資産と交換可能なNFTであれば記載対象となる。ただし、時価や見積価額の算定が困難な場合は取得価額で記載して差し支えない(NFT FAQ 問14)。価額がゼロに近いNFTについても、取得価額が分かれば記載し、大量に保有する場合は合計数・合計額で別紙対応することが現実的である。
Q4. 暗号資産の価額はどの取引所の価格で記載すればよいですか?
複数の取引所で取引している場合、納税義務者が選択した業者の12月31日の取引価格で記載してよい(国税庁FAQ 7-2)。販売所の場合は売却価格(買取価格)で評価できる。残高証明書の取引価格を利用することも認められている。
損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「海外法人・暗号資産の国際税務を相談する」をご覧ください。
関連記事・サービスページ
関連記事
専門の税理士に依頼する場合
暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。
関係法令
- 国外送金等調書法第5条(国外財産調書)
- 国外送金等調書法第6条の2第1項・第3項・第6項(財産債務調書)
- 国外送金等調書令第10条第7項
- 国外送金等調書令第12条の2第2項・第8項
- 国外送金等調書規則第12条第3項第6号・第5項
- 国外送金等調書規則第15条第1項・第2項・第4項
- 国外送金等調書通達6の2-2
