NFTの税金ガイド|一次流通・二次流通の課税の違い

結論

NFTの課税は「一次流通」と「二次流通」で所得区分が異なる。同じNFTの売却でも、クリエイターか転売者かで税務処理がまったく変わる。

  • 理由① クリエイターが自作NFTを販売する一次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」に該当し、雑所得(又は事業所得)に区分される。特別控除や長期保有の軽減措置は適用されず、受け取った暗号資産の時価が収入金額となる。
  • 理由② 購入したNFTを転売する二次流通は「権利の譲渡」として原則・譲渡所得に区分される。年間50万円の特別控除と5年超保有の2分の1課税が適用されるため、同額の利益でも一次流通より税負担が軽くなる構造。
  • 条件 営利目的で継続的にNFTの転売を行っている場合は、二次流通でも譲渡所得ではなく事業所得または雑所得に区分される。また、暗号資産(FT)の売買益は原則として雑所得であり、NFTとは所得区分が異なる。NFTと暗号資産を混同した申告は修正申告の原因となる。

国税庁NFT FAQ 問1・問4

この記事でわかること

  • NFTの一次流通と二次流通で所得区分が異なる理由と根拠条文
  • 一次流通(クリエイター販売)の所得計算と必要経費の範囲
  • 二次流通(転売)の所得計算と譲渡所得の特別控除
  • NFTの取得価額の算定方法(暗号資産購入・フリーミント・交換)
  • ロイヤリティ収入の課税と消費税の取扱い
目次

一次流通と二次流通の所得区分

【結論】一次流通は「デジタルアートの閲覧に関する権利の設定」であるため譲渡所得にならず、雑所得(又は事業所得)に区分される。二次流通は「権利の譲渡」であるため原則として譲渡所得に区分される(NFT FAQ問1・問4、所得税法第27条・第33条・第35条)。

NFTの所得区分を分ける核心は「権利の設定」と「権利の譲渡」の違いにある。

一次流通=権利の設定 → 雑所得(又は事業所得)

NFTクリエイターが自分のデジタルアートをNFT化して第三者に販売する行為は、国税庁NFT FAQによれば「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定に係る取引に該当する。「設定」であって「譲渡」ではないため、譲渡所得の対象とならない。

アーティスト・クリエイター・NFT販売業者が行う一次流通の所得は、雑所得又は事業所得に該当する。二次流通で入るロイヤリティ収入も同様である。

二次流通=権利の譲渡 → 譲渡所得(原則)

購入したNFTを第三者に転売する二次流通は、「閲覧に関する権利」の譲渡に該当し、原則として譲渡所得に区分される。ただし、営利を目的として継続的にNFTの売買を行っている場合は、雑所得又は事業所得に該当する。

所得区分の比較表

区分取引内容所得区分根拠特別控除
一次流通クリエイターが自作NFTを販売雑所得(又は事業所得)NFT FAQ問1なし
二次流通購入NFTを第三者に転売譲渡所得(原則)NFT FAQ問4最大50万円
二次流通(継続的売買)営利目的で継続的に転売雑所得(又は事業所得)NFT FAQ問4なし
ロイヤリティ二次流通時にクリエイターが受取雑所得(又は事業所得)NFT FAQ問1なし

暗号資産の譲渡所得該当性をめぐる議論

暗号資産の譲渡による所得について、国税庁は「雑所得」と位置づけている。平成31年3月20日の参議院財政金融委員会で並木稔国税庁次長は、暗号資産は資金決済法上の「支払手段に類するもの」であり、譲渡所得の本質である「資産の値上がりによる増加益」とは性質を異にすると答弁した。

一方、令和4年4月15日付けの暗号資産MONA(モナコイン)に関する質問主意書に対する政府答弁では、「支払手段としての性質や資産の価値の増加益が生ずる性質を複合的に有する資産」が譲渡所得の基因となる資産に該当するか否かは「個別具体的な資産の性質により判断される」と述べられている。ファントークン(FCRコイン等)についても同様の論点が提起されたが、政府は現時点では暗号資産を譲渡所得の基因となる資産に該当しないとする立場を維持している。

NFTについては、何らかの権利に紐付いたNFTの二次流通は譲渡所得に該当し得るとNFT FAQが明示している点で、暗号資産一般とは異なる取扱いがなされている。

一次流通の所得計算

【結論】一次流通の所得金額は「NFTの譲渡収入+ロイヤリティ収入−必要経費」で算出する。売上原価にはNFTの組成費用のみが算入され、デジタルアートの制作費(外注費等)は含まれない(NFT FAQ問1)。

計算例:NFTクリエイターの事業所得

以下は共著書籍『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務』の事例34に基づく計算例である。

前提条件:

  • 個人事業主・甲がNFTコレクション1,000個をミントし、1個あたり0.5ETH(時価:1ETH=220,000円)で700個を販売
  • 100個は他のトークンと1対1のレートで交換(0.5ETH相当)
  • 50個は知人に贈与、150個は未販売で保有
  • ロイヤリティ報酬:550万円(二次流通発生時の時価で換算済み)
  • NFT事業の支出合計:4,500万円(旅費交通費140万円、広告宣伝費800万円、外注費2,980万円 等)
  • デジタルアートの制作はイラストレーターに2,980万円で依頼
  • NFTを組成するために要した費用は存在しない

所得金額の計算:

①NFTの譲渡収入:22万円 × 0.5ETH × (700個+100個)= 8,800万円

②ロイヤリティ報酬:550万円

③必要経費:4,500万円 − 2,980万円(デジタルアート制作費)= 1,520万円
④所得金額:8,800万円 + 550万円 − 1,520万円 = 7,830万円

必要経費の注意点

NFT FAQは、NFTクリエイターの売上原価について「NFTを組成するために要した費用の額」のみとし、デジタルアートの制作費は含まないとしている。上記の事例では外注費2,980万円がNFTの必要経費に算入できない。

また、付き合いで購入した他のNFTクリエイターの作品(事例では100万円分)は、購入時に即時経費にはできない。資産計上し、そのNFTを売却した際に初めて取得価額相当額を必要経費として計上する。

二次流通の所得計算

【結論】二次流通でNFTを売却した場合の所得金額は「収入金額−取得価額−譲渡費用−特別控除額(最大50万円)」で算出する。5年超保有のNFTは長期譲渡所得となり、課税対象額が2分の1に軽減される(所得税法第33条第3項〜第5項)。

計算例①:短期譲渡所得

共著書籍の事例39に基づく。NFTが何らかの権利に紐付いており、譲渡所得(総合課税)に該当するものとする。

前提条件:

  • 2022年10月に2つのNFTをそれぞれ1,000MATIC(時価:1MATIC=110円)で購入
  • 2023年2月に1つ目を1ETH(時価:1ETH=210,000円)で売却
  • 2023年3月に2つ目を2ETH(時価:1ETH=220,000円)で売却
  • 売却時の手数料:各1万円(計2万円)

所得金額の計算:

①収入金額:21万円 + 44万円 = 65万円
②取得価額:110円 × 1,000MATIC × 2 = 22万円

③譲渡費用:2万円

④特別控除額:41万円(譲渡益65万円−22万円−2万円=41万円 < 50万円のため全額控除)

⑤所得金額:0円

計算例②:短期+長期が混在する場合

共著書籍の事例40に基づく。

前提条件:

  • 2028年2月1日にNFTを1ETH(時価:1ETH=210,000円)で売却(2027年2月購入 → 所有期間5年以内 → 短期)
  • 2028年2月2日にNFTを3ETH(時価:1ETH=210,000円)で売却(2022年2月購入 → 所有期間5年超 → 長期)
  • 各NFTの取得価額:1,000MATIC(時価:1MATIC=110円)= 11万円
  • 売却時手数料:各1万円

短期譲渡所得:

21万円 − 11万円 − 1万円 − 9万円(特別控除)= 0円

長期譲渡所得:

63万円 − 11万円 − 1万円 −(50万円 − 9万円)= 10万円

課税対象金額:

短期0円 + 長期10万円 × 1/2 = 5万円

特別控除額は、まず短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残額があれば長期譲渡所得の譲渡益から控除する(所得税法第33条第5項)。長期譲渡所得は課税対象が2分の1に軽減される。

NFTの取得価額の算定方法

【結論】NFTの取得価額は、購入方法によって算定方法が異なる。日本円購入=支払額、暗号資産購入=手放した暗号資産の時価+ガス代、フリーミント=支払ったガス代のみとなる。NFTの取得原価は個別法で管理する(原稿V4事例3・事例10)。

取得方法取得価額の算定損益発生
日本円で購入支払った日本円の額なし
暗号資産で購入手放した暗号資産の時価 + ガス代手放した暗号資産側で発生
フリーミント支払ったガス代なし
複数NFTとの交換(10連ガチャ等)渡したNFTの取得原価 ÷ 受取NFT数渡したNFT側で発生

暗号資産でNFTを購入した場合は、暗号資産を手放す行為となるため、手放した暗号資産の側で損益が発生する。NFTの取得原価は「手放した暗号資産の時価+購入時のガス代」となる。

「mint(ミント)」という用語は、NFTクリエイターが使う場合(自作品をブロックチェーンに書き込みNFT化する行為)と、NFTコレクターが使う場合(購入時にNFTが新規発行される行為)で意味が異なる。納税者から「このNFTはmintしたものです」という説明があった場合、どちらの意味かの確認が重要となる。

実務上の注意点

【結論】NFT税務の実務で最も間違いやすいのは、①一次流通の売上原価にデジタルアート制作費を含めてしまう、②暗号資産でNFTを購入した際に暗号資産側の損益を計上しない、③付き合い購入のNFTを即時経費にしてしまう、の3点である。

①デジタルアート制作費は売上原価にならない

NFT FAQは明確に、NFTの売上原価は「NFTを組成するために要した費用の額」であり、デジタルアートの制作費は含まれないとしている。イラストレーターへの外注費やグラフィックツール代がNFTの組成費用に該当しない場合、販管費等の費用として必要経費に算入することも通常は認められない。

②暗号資産でNFTを購入すると暗号資産側で損益が発生する

ETHでNFTを購入した場合、ETHの取得価額と購入時の時価との差額が暗号資産の損益として認識される。NFTの取得にばかり注目して暗号資産側の損益計上を忘れるケースが多い。

③付き合いで購入したNFTは即時経費にできない

他のNFTクリエイターの作品を付き合いで購入した場合、その支出は購入時に必要経費として計上できない。まず資産計上し、売却した際に初めて取得価額相当額を必要経費として計上する。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. NFTを購入しただけで税金はかかりますか?

かからない。日本円でNFTを購入した時点では損益は発生せず、取得価額のみが計上される(所得税法第36条第1項)。ただし、暗号資産でNFTを購入した場合は、手放した暗号資産の側で損益が発生する。

Q2. NFTの二次流通で得た利益に特別控除はありますか?

ある。譲渡所得(総合課税)に該当する場合、年間最大50万円の特別控除が適用できる(所得税法第33条第3項・第4項)。さらに、取得から5年超保有のNFTは長期譲渡所得として課税対象額が2分の1に軽減される。

Q3. フリーミント(無料配布)で取得したNFTの取得価額はいくらですか?

支払ったガス代のみが取得価額となる。フリーミントはガス代を支払うことでNFTを取得する行為であり、NFTの取得価額はそのガス代の額となる(原稿V4事例10)。

Q4. NFTクリエイターが受け取るロイヤリティ収入は課税されますか?

課税される。二次流通の際にクリエイターに暗号資産で支払われるロイヤリティは、支払われた暗号資産の取得時点の時価が全額利益として計上される。所得区分は一次流通と同様に雑所得(又は事業所得)となる(NFT FAQ問1)。

Q5. NFTの一次流通に消費税はかかりますか?

かかる。NFTクリエイターが自作のデジタルアートを紐付けたNFTをマーケットプレイスで販売する行為は、電気通信利用役務の提供として消費税の課税取引に該当する(NFT FAQ問11、消費税法第2条第1項第8号の3)。二次流通によるロイヤリティも原則として消費税の課税対象取引となる。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「NFTの税務を専門の税理士に依頼する」をご覧ください。

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関係法令

  • 所得税法第27条(事業所得)
  • 所得税法第33条第1項〜第5項(譲渡所得)
  • 所得税法第35条(雑所得)
  • 所得税法第36条第1項(収入金額)
  • 所得税法第37条第1項(必要経費)
  • 所得税法第38条(譲渡所得の取得費)
  • 消費税法第2条第1項第8号の3(電気通信利用役務の提供)
  • 国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問1・問4・問11
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