DeFi取引で利益が出た場合、原則として雑所得に区分され、確定申告が必要となる。
- 理由① 税法にDeFi固有の特別規定は存在しない。スワップ・流動性提供・ステーキング・レンディング等のすべてのDeFi取引は、経済的利得が生じた時点で既存の所得税法に基づき課税される。
- 理由② DeFi取引の課税タイミングは「トークンを手放した時点」と「報酬を受け取った時点」の2種類に分かれる。スワップやLP引出は前者、ステーキング報酬やエアドロップは後者に該当する。
所得税法第36条第1項 / 国税庁FAQ 1-7
この記事でわかること
- DeFi取引の種類ごとの課税タイミング(スワップ・流動性提供・ステーキング・レンディング)
- 流動性供給が「課税イベントである」vs「課税イベントでない」の2つの考え方と計算例
- ステーキング報酬・レンディング利息の所得計上タイミング
- DEXで取引される暗号資産の法人税における市場該当性
- DeFi特有の損益計算の実務上の困難さ
DeFi取引の種類と課税タイミング
【結論】DeFi取引の課税タイミングは、暗号資産を「手放した」時点と「受け取った」時点の2種類に大別される。スワップや流動性供給解除は手放した時点、ステーキング報酬やエアドロップは受け取った時点で課税される(所得税法第36条第1項)。
DeFiにはさまざまなプロトコルが存在するが、課税上は以下のように整理できる。
| DeFi取引 | 課税タイミング | 所得計算の基本 |
|---|---|---|
| DEXでのスワップ | 交換時 | 取得した暗号資産の時価 − 手放した暗号資産の取得原価 |
| 流動性提供(預入) | 後述の2つの考え方による | 考え方により異なる |
| 流動性提供(引出) | 引出時 | 引出時の時価 − 預入時の取得原価(考え方による) |
| ステーキング報酬 | 報酬取得時 | 取得した暗号資産の取得時時価 − 0円 |
| レンディング利息 | 利息受取時 | 受け取った暗号資産の取得時時価 − 0円 |
| ファーミング報酬 | 報酬取得時 | 取得した暗号資産の取得時時価 − 0円 |
| エアドロップ | 受取時 | 取得した暗号資産の取得時時価 − 0円 |
DEXでのスワップは、暗号資産同士の交換として処理する。これは中央集権型取引所(CEX)での取引と同様に、交換時に課税関係が発生する(国税庁FAQ 1-3)。
ステーキング報酬やレンディング利息は、何かを譲渡して得た対価ではないため、譲渡原価は0円となる。取得した暗号資産の取得時時価がそのまま所得金額として計上される(国税庁FAQ 1-7)。
流動性提供の課税関係|2つの考え方
【結論】DEXへの流動性供給については、実務上「①課税イベントではない」とする考え方と「②課税イベントである」とする考え方の2つが存在する。いずれを採用するかにより、課税タイミングと計算方法が異なる。現時点で国税庁の公式見解は示されていない。
流動性提供(Liquidity Providing)とは、DEXの流動性プールに2種類(またはそれ以上)の暗号資産を預け入れ、代わりにLPトークンを取得する行為である。この預入行為が課税イベントに該当するかどうかは、DeFi税務で最も議論がある論点の一つである。
①流動性供給は課税イベントではないとする考え方
この考え方では、流動性供給の開始時点では課税関係が発生しない。
根拠は、DEXでは流動性供給したトークンの処分権が移転する相手方(借り手)が存在しないため、処分権の移転がなく、トークンの含み損益に係る課税イベントとはならないという点にある。これは一種の自己取引にすぎないとする見解である。
国内の損益計算ソフトの多くはこの考え方を採用しており、流動性供給解除時にまとめて課税関係を認識する処理を行っている。
ただし、流動性供給の解除時には、預け入れた暗号資産の数量が変動している(インパーマネントロス等)ため、解除時点で課税関係が発生するケースが多い。解除時の具体的な課税関係と計算方法は「流動性提供(LP)の税金|預入・引出の課税と計算例」で詳しく解説している。
②流動性供給は課税イベントであるとする考え方
この考え方では、流動性供給した暗号資産をLPトークンと交換したものとして、預入時点で課税関係が発生する。
計算例を示す。1BNB(取得原価2万円、時価4万円)と20CAKE(取得原価2万円、時価1CAKE=2,000円)をDEXに流動性供給し、4 Cake-LPを取得した場合:
BNBの利益:
(4万円 × 1BNB) − (2万円 ÷ 1BNB) × 1BNB = 2万円
CAKEの利益:
(2,000円 × 20CAKE) − (2万円 ÷ 20CAKE) × 20CAKE = 2万円
流動性供給時の所得金額: 合計4万円
この場合、取得したLPトークンの取得価額は、預け入れた2種類の暗号資産の時価の合計額となる。
LPトークンの取得価額:
(4万円 × 1BNB) + (2,000円 × 20CAKE) = 8万円
なお、どちらの考え方を採用した場合でも、流動性供給の開始から解除までの全期間を通じた最終的な損益の合計額は一致する。異なるのは、損益が計上されるタイミングである。
LPトークンの法的性質
LPトークンは「単なる預かり証」と評価されることがあるが、これには慎重な検討が必要である。LPトークンは割合的持分を表すにすぎないものの、他者に譲渡可能であり、ファーミングに利用して報酬を稼得することも可能である。資金決済法上の暗号資産や金融商品取引法上の集団投資スキーム持分に該当するケースも考えられる。
流動性供給解除時(LPトークン返却時)にはインパーマネントロスにより当初の預入数量から増減して手元に戻るのが通常であり、税務処理が複雑化する。いずれの考え方を採用するにしても、損益計算ソフトなしでは正確な計算が困難な領域である。
ステーキング報酬・レンディング利息の課税
【結論】ステーキング報酬やレンディング利息は、取得した暗号資産の取得時時価が所得金額となる。所得税の課税対象であり、実務上は客観的に受取りが証明できるタイミング(Claim時等)で所得計上する(国税庁FAQ 1-7、所得税法第36条第1項)。
ステーキング報酬の所得計上
ステーキング報酬は、Claim(報酬を実際に受け取る操作)のタイミングで所得計上する。Claim前に実際の入金があるケースもあるが、データが取れないケースが殆どであるため、損益計算ソフトでの把握はClaim時のトランザクションに基づくのが実務上の標準的な対応である。
計算例として、LPトークンをステーキングして5CAKE(時価1CAKE=800円)をステーキング報酬として取得した場合:
所得金額:
5CAKE × 800円 − 0円 = 4,000円
何かを譲渡して対価を得ているわけではないため、譲渡原価は0円である。収入金額がそのまま所得金額として計上される(所得税法第36条)。
なお、LPトークンのステーキング開始および終了は課税イベントではなく、損益計算は不要である。
レンディング利息の所得計上
レンディング(暗号資産の貸付け)で受け取る利息も、受取時の時価を所得として計上する。計算の考え方はステーキング報酬と同様である。
ステーキング中のロックアップと法人税
法人がステーキングのためにロックアップした暗号資産については、ロックアップ中でもブロックチェーン上での移転自体は技術的に制限されない場合、法人税における「移転についての制限」には該当しない。したがって、特定譲渡制限付暗号資産にも該当せず、期末時価評価の対象となる(国税庁FAQ 3-1-6、法人税法第61条第2項)。
一方、暗号資産交換業者がJVCEA規則に基づく移転制限を付している暗号資産については、特定譲渡制限付暗号資産に該当しうる。この場合、当該交換業者がステーキングを行い報酬を付与していたとしても、移転制限の該当性の判定には影響しない(国税庁FAQ 3-1-11、法人税法施行令第118条の7第2項)。
DeFi取引の実務上の注意点
【結論】DeFiの損益計算は、取引データの取得困難・課税処理の未確定・法人の期末時価評価問題が重なり、暗号資産の中でも最も複雑な領域である。損益計算ソフトの活用と、税理士への相談が実務上不可欠である。
損益計算の困難さ
DeFi取引の損益計算が困難な理由は主に3点である。
第一に、取引データの取得が困難である。DeFiのトランザクションはオンチェーンに記録されるが、流動性提供の預入・引出や報酬受取の内訳を正確に把握するには、複数のブロックチェーンにまたがるデータの解析が必要となる。
第二に、流動性供給の税務処理が確定していない。前述のとおり「課税イベントか否か」の2つの考え方が併存しており、さらにそれぞれの中でも複数の会計処理パターンが存在する。
第三の要因として、トークンの時価取得が極めて困難なケースが多いことが挙げられる。例えばLPトークンは、流動性供給の条件ごとに内容が個別化されるため、市場における継続的な価格の公表がほぼ存在しない。加えて、ブロックチェーンゲーム(BCG)やNFTアートなどのNFTに関しても同様に、客観的かつ合理的な時価を算定しにくいのが現状である。
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DEXで取引される暗号資産の法人税上の取扱い
DEXは自動マーケットメイカー(AMM)によって暗号資産の交換比率が公表され、随時交換取引が行われている。国税庁は、こうしたDEXは法人税における「市場」の範囲に含まれるとしている(国税庁FAQ 3-1-5)。
したがって、DEXにおいて継続的に取引が成立し、公表される交換比率が他の取引所と著しく異ならない場合、DEXで取引される暗号資産は活発な市場が存在するものとして法人の期末時価評価の対象となり得る。この場合の時価は、DEXにおける事業年度終了時の交換比率に、その交換先の暗号資産の最終売買価格を乗じて計算した金額となる。
よくある質問(FAQ)
Q1. DeFi取引でも確定申告は必要ですか?
必要である。税法にDeFi固有の規定はないが、経済的利得が生じた時点で所得税の課税関係が発生する(所得税法第36条第1項、国税庁FAQ 1-7)。流動性提供、ステーキング報酬、レンディング利息、ファーミング報酬のすべてが対象となる。
Q2. 流動性提供の預入時に税金はかかりますか?
「かかる」と「かからない」の2つの考え方がある。国税庁の公式見解は現時点で示されていない。課税イベントとする場合は預入時の時価と取得原価の差額が課税され、課税イベントとしない場合は解除時にまとめて課税される。いずれの場合も最終的な損益合計額は一致する。
Q3. ステーキング報酬はいつ所得に計上しますか?
Claim(受取操作)時に所得計上する。取得した暗号資産のClaim時の時価が収入金額となり、譲渡原価は0円である(国税庁FAQ 1-7)。年内にすべての報酬をClaimすることが、計算を複雑にしないための実務上の推奨事項である。
Q4. インパーマネントロスは税金の計算に影響しますか?
影響する。インパーマネントロスは流動性供給解除時に払い戻される暗号資産の数量に影響を与える。通常は解除時の税務処理にその結果が反映されるため、インパーマネントロスの存在を特別に意識して損益計算を行うことはない。
Q5. DeFiの損益計算は自分でできますか?
極めて困難である。流動性提供の処理には複数の会計パターンが存在し、LPトークンの時価取得も難しい。複数チェーンのトランザクション解析も必要となるため、DeFi対応の損益計算ソフトの利用が事実上必須である。
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関係法令
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- 所得税法第36条第1項(収入金額の定義=経済的利得が収入となる考え方の根拠)
- 所得税法第27条(事業所得)
- 所得税法第35条(雑所得)
- 所得税法第37条第1項(必要経費)
- 法人税法第22条(各事業年度の所得の金額の計算)
- 法人税法第61条第2項(暗号資産の期末時価評価)
- 法人税法第61条第2項(暗号資産の期末時価評価)
