Cryptorchの損益計算ロジック|ブリッジ・LP・借入の処理方針

結論

Cryptorchは、法令に明確な規定がないDeFi取引について、税法の趣旨を踏まえた独自の処理方針を設計し、パターン間で最終損益額が一致することを検証済みである。

  • 理由① DeFiの借入・流動性供給・ブリッジ等は国税庁FAQでも明確な取扱いが示されていない。Cryptorchは実務対応報告第38号や所得税法第36条第1項の趣旨に基づき、取引ごとに処理パターンを定めている。
  • 理由② 具体的には、借入は時価計上(パターンA)、流動性供給は貸付+借入の分解処理(パターンB)、ブリッジは預入引出処理を採用している。いずれも異なる処理パターンを適用しても最終損益額が一致する設計としている。
  • 条件 これらの処理方針はCryptorch独自の実務設計であり、国税庁が公式に認めたものではない。ただし法令の趣旨に即しており、税務調査時に計算根拠として説明可能な論理構成となっている。

所得税法第36条第1項 / 実務対応報告第38号

この記事でわかること

  • Cryptorchの処理方針の全体像と各取引類型の処理ロジック
  • ブリッジ・クロスチェーンスワップの処理方法と連番管理の仕組み
  • 借入でパターンA(時価計上)を採用する理由と他パターンとの比較
  • 流動性供給・債権トークン・Pendle(PT/YT)の処理ロジック
  • 端数処理・報酬計上タイミング・勘定科目設計の方針
目次

Cryptorchの処理方針の全体像

【結論】Cryptorchは法人ベースで設計された損益計算ロジックを基盤としており、貸付・借入は個別法で管理し、総平均法・移動平均法の計算に混ぜない(所得税法施行令第119条の2、法人税法施行令第118条の6)。処理パターンが複数存在する取引については、最終損益額の一致を検証した上で最も実務的に合理的なパターンを採用している。

暗号資産の損益計算において、法令で処理方法が明確に規定されている取引は売却・交換・決済などの基本取引に限られる。DeFiの流動性供給、暗号資産の貸借、ブリッジなど、法令に直接の規定がない取引については、損益計算ソフトごとに処理方針が異なる。

Cryptorchは以下の設計思想に基づいて処理方針を構築している。

設計方針内容
法人ベース法人税法に基づく処理を基本とし、個人の場合は適宜読み替え
個別法管理貸付・借入は平均法に混ぜず個別法で処理。取得単価の異常変動と債権トークン処理の複雑化を防止
パターン検証処理方法が複数考えられる取引は全パターンの最終損益額を検証。一致を確認の上、最適パターンを採用
ユーザー設定前提勘定科目はユーザー側で設定。過度な自動分類はシステム複雑化によるバグリスクを増加させるため不採用

Cryptorchの処理方針一覧

取引類型Cryptorchの処理方針
ブリッジ交換ではなく預入引出として処理
クロスチェーンスワップブリッジと同様に連番管理。可能な限りTX追跡
借入パターンA(借入時の時価で帳簿計上)
貸付パターンA(時価主義)/B(取得原価主義)選択式
預入仕訳なし(保管場所変更のみ)。期末時価評価あり
流動性供給パターンB(貸付時価+借入時価)
債権トークン流動性供給と同じパターン対応
PT/YT(Pendle)時価入力必須+数量按分機能搭載
ステーキング報酬claim時に利益計上
ICO等の時間差取引受取時にエアドロップ処理
端数四捨五入。備忘価額1円は不採用
時価不明トークン交換片側時価不明→もう片方の時価参照。両方判明→購入側の時価基準

ブリッジ・借入の処理ロジック

【結論】Cryptorchではブリッジを「交換」ではなく「預入引出」として処理する。片側のデータが欠損した場合でも損益の乖離が手数料程度に収まるためである。借入は時価計上(パターンA)を採用し、帳簿上に借入暗号資産の存在を表現する(実務対応報告第38号「2(1)預託者から預かった暗号資産に係る資産及び負債の認識」参照)。

ブリッジの処理

ブリッジとは、あるブロックチェーン上の暗号資産を別のブロックチェーンに移転する操作である。税務上の処理方法は「交換」と「預入引出」の2通りが考えられる。

処理方法仕組み片側データ欠損時の影響
交換処理送金トークンの売却+受取トークンの購入として処理片側のTXが取得できない場合、全額が利益または損失に計上され大幅な乖離が発生
預入引出処理(Cryptorch採用)送金を「預入」、受取を「引出」として処理片側のTXが欠損しても、乖離はブリッジ手数料程度に収まる

ブリッジやクロスチェーンスワップは、送金と受取の2つのトランザクションで構成される。Cryptorchではこの2つをセットで管理するため、メモ欄に連番を記載する。

連番管理の記載ルール:

  • ブリッジ:「2025ブリッジ001」「2025ブリッジ002」…
  • クロスチェーンスワップ:「2025スワップ001」「2025スワップ002」…
  • 年度を跨ぐ未完了取引:「2024ブリッジ001未完了」

年度を連番の先頭に入れるのは、年を重ねるごとに連番の管理が困難になるためである。検索で引っかかる書き方であれば別のフォーマットでも問題ない。

借入の処理

借入した暗号資産の帳簿価額をいくらに設定するかは、法令に直接の規定がない。Cryptorchでは2つのパターンを検証した上で、パターンAのみを採用している。

パターン帳簿価額特徴
パターンA(Cryptorch採用)借入時点の時価帳簿上に借入暗号資産の存在を表現可能。期末時価評価の損益額が穏やかに推移。実務対応報告第38号の処理に近い
パターンB取得原価0円帳簿上に借入の存在を表現できない。早期に利益が多めに計上される傾向がある

パターンAを採用する根拠は3点ある。第一に、いずれのパターンでも最終的な損益額は一致するが、パターンBは早期に利益が過大計上される。第二に、パターンBでは帳簿上に借入暗号資産が存在しないため、管理上のリスクがある。第三に、実務対応報告第38号において、暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産の資産・負債認識に類似の処理が採用されている。

期末時価評価については、借方(資産側)・貸方(負債側)ともに時価評価を行う。国税庁FAQ 3-1-8は、借入暗号資産は期末時価評価の対象になりうるが評価損益の益金・損金算入は不要としている。

流動性供給・債権トークン・Pendleの処理ロジック

【結論】Cryptorchは流動性供給を「預けたトークン=貸付、取得したLPトークン=借入」と分解するパターンBを採用する。債権トークン(stETH等)もNFT規格のものを含め同様に処理する。Pendle(PT/YT)は時価取得が困難なため、Cryptorchでは時価入力を必須化し数量按分機能を搭載している。

流動性供給(LP)の4パターン

流動性供給の税務処理は法令に規定がなく、複数の処理方法が存在する。Cryptorchでは全パターンの最終損益額を検証した上でパターンBを採用している。

パターン処理方法採用元最終損益
ALPトークンを預けたトークンで「購入」(売買処理)海外損益計算ソフト一致
B(Cryptorch採用)預入=貸付(時価)、LPトークン取得=借入(時価)Cryptorch一致
C預入=貸付(取得原価)、LPトークン取得=借入(時価)選択肢一致
D預入=預入処理、LPトークン取得=借入(時価)選択肢時価変動分が反映されず異なる場合あり

パターンA/B/Cは最終損益が一致する。パターンDのみ、流動性供給時点の時価変動が反映されないため、結果が異なるケースがある。

LPトークンには暗号資産型(例:UNI-V2)とNFT型(例:UNI-V3)が存在し、流動性供給ごとに取得したLPトークンの価値は異なるため、その時価が取れることは稀である。

債権トークンの処理

債権トークン(cDAI、stETH、eETH等)は、dappsに暗号資産を供給して対価として受け取るトークンである。概念的には流動性供給とほぼ同じ構造であり、コントラクト上で明確に区別できない。

Cryptorchでは、NFT規格のLPトークンや債権トークンについても、実質的な経済的価値を考慮し、暗号資産の貸付・借入処理と同様に扱う暫定的なスタンスをとっている。暗号資産・NFTの貸借については不明確な部分が多いため、処理方針を用意した上で計算処理を行い、指針が判明し次第適宜対応する方針である。

Pendle(PT/YT)の処理

Pendleでは、債権トークンをSYトークンにラップした後、プリンシパルトークン(PT:元本相当)とイールドトークン(YT:金利相当)に分離する。

トークン特性時価取得
SYトークン元の債権トークンと同等として扱う可能
PT(プリンシパルトークン)満期に近づくほど元の債権トークン価格に収束CoinGecko等で取得不可
YT(イールドトークン)時間経過とともに価値減少(受取可能利息が減少)CoinGecko等で取得不可

PT/YTともに通常の価格情報サイトでは時価が取得できない。配分根拠が確立していないため0円計算になりがちだが、Cryptorchでは時価入力を必須化し、数量按分機能を搭載することで適切な損益計算を実現している。PT売却時など、時価が取れない場合は「担保とした債権トークンと等しい」ものとして擬制して処理を行う。

端数処理・報酬計上タイミング・その他の設計判断

【結論】Cryptorchは端数を四捨五入で処理し、備忘価額1円は採用しない。ステーキング報酬等はclaim(請求)時に利益計上する(所得税法第36条第1項)。預入と貸付の区分はシステム自動判定が困難なため、ユーザー側での個別入力に委ねている。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

端数処理

暗号資産の損益額は通常、小数点以下の端数が発生する。Cryptorchでは端数を四捨五入で処理している。

備忘価額1円については、借入暗号資産や貸付暗号資産で計上額が0になる場合に入れるべきかという議論があるが、以下の理由から採用していない。

  • 仕訳が複雑になりやすく、端数調整に混ざってしまうリスクがある
  • 備忘価額として機能するかが疑わしい
  • システム上、返済の適切な判定などで処理が過度に複雑になる

報酬の計上タイミング

ステーキング報酬・マイニング報酬・レンディング報酬等について、Cryptorchでは報酬付与時ではなくclaim(請求・受取処理)時に利益を計上する。

法律上、所得税法第36条第1項の「収入すべき金額」の解釈としては、報酬が付与された時点が課税タイミングとなりうる。しかし実務上は、DeFiプロトコルで報酬が蓄積されるタイミングをすべて把握して都度計上することは極めて困難であり、claim時計上が実務上の運用基準となる。

ICOやNFTオークション等、トークンの送付と受取に時間差がある取引も同様に、受取処理を行ったタイミングで利益計上する。送付日と受取日が異なる年度にまたがる場合は、片側に「2024ブリッジ001未完了」等のフラグを入れて管理する。

預入と貸付の区分

DeFiへの預入取引の多くは、預け入れたものを借りる相手方が発生しないケースが多く、貸付には該当しないと考えられる。流動性提供は、誰かに貸したという行為とは明確に意味が異なり、債権トークンが発行されるかどうかもプロトコルの仕様にすぎない。

Cryptorchでは「これは貸付、これは預入」とシステム側が自動判定することは困難であるため、ユーザー側で個別に入力する仕組みとしている。

よくある質問(FAQ)

Q1. 借入のパターンAとパターンBで最終損益額は変わりますか?

変わらない。いずれのパターンでも最終的な損益額は一致する。ただしパターンBは早期に利益が過大計上される傾向があるため、CryptorchではパターンA(借入時の時価計上)のみを採用している。

Q2. 流動性供給の処理で海外ソフトとCryptorchの違いは何ですか?

LPトークンの取得を「売買」として処理するか「借入」として処理するかの違いである。海外ソフトの多くはパターンA(売買処理)を採用するが、Cryptorchは預入を貸付、LPトークン取得を借入として分解処理するパターンBを採用している。最終損益額はいずれも一致する。

Q3. ステーキング報酬は発生時ではなくclaim時の計上で問題ないですか?

実務上はclaim時計上が運用基準となる。所得税法第36条第1項の解釈上は報酬付与時が課税タイミングとなりうるが、DeFiプロトコルで蓄積される報酬を都度把握して計上することは実務上困難であり、claim時計上が合理的な処理である。

Q4. PendleのPT/YTの時価はどのように算定しますか?

通常の価格情報サイトでは時価を取得できないため、Cryptorchではユーザーによる時価入力を必須としている。PT売却時など時価が不明な場合は、担保とした債権トークンの時価と等しいものとして擬制する。配分根拠が確立していない現状では、0円計算を避けるための実務的な対応策である。

損益計算や申告を専門家に依頼したい場合は「暗号資産・DeFiの損益計算を依頼する(Cryptorch)」をご覧ください。

関連記事・サービスページ

関連記事

専門の税理士に依頼する場合

暗号資産の確定申告の全体像・最新情報は「暗号資産の確定申告ガイド【2027年版】」をご覧ください。

関係法令

  • 所得税法第36条第1項(収入すべき金額)
  • 所得税法施行令第119条の2(暗号資産の評価方法等に関する規定)
  • 法人税法第61条第2項(市場暗号資産の期末時価評価)
  • 法人税法施行令第118条の6(暗号資産の評価方法等に関する規定)
  • 法人税法施行令第118条の7(市場暗号資産等の評価)
  • 暗号資産交換業者に関する会計処理:企業会計基準委員会 実務対応報告第38号(暗号資産に関する会計処理)
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」3-1-8(借入暗号資産の期末時価評価に関する取扱い)
必要に応じてご共有ください
  • URLをコピーしました!
目次